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少年はただ幸せになりたい  作者: ファルコン
三度目の人生
38/69

第25話 ゴブリン討伐クエスト

 ゴブリン

 Fランクのモンスターであり

 僕達訓練生が挑むことを許されてるモンスターで1番危険な存在


 昼間

 そのゴブリンの巣の側の岩陰に僕達は居た


「さて、じゃあ作戦通りに頼む」


 スルトが言う


「わかった」

「………(コク」


 レイスとルークがそれぞれ右と左に分かれて進む


 二人の先には見張りのゴブリンがいる


 尖った耳と尖った鼻

 ポコっと膨らんだお腹

 うん……物語で聞かされた通りの姿だ


 ヒュン!


 そんな音が聞こえてすぐに二匹のゴブリンが倒れた


 レイスとルークが上手くやったんだね


 同じ要領で二人は残りの見張りを同時に斬ってきた


「お疲れレイス」

「気付かれなくてよかったよ」


 レイスとルークに布を渡す

 二人は身体や剣に付いた血を拭う


「よし、あとは巣の中に煙玉を投げ入れて爆発させるだけだ」


 スルトが煙玉を取り出す


「…………俺だとここからじゃ届きそうにないな……おっさん投げるか?」


 スルトはラルスさんに聞く


「んっ?投げていいのなら投げるが?」


 ラルスさんが受け取る


「……………」


 ?……さっきからガルネクは何を考えてるんだろ?


「よし、いくぞ!」


 ラルスさんが煙玉を投げ

「ラルス少し待て!」

 れなかった


「ガルネク?どうしたの?」


 僕はラルスさんを止めたガルネクに聞く


「いや、さっきから気になってたんだが……あの中に人質とかいないよな?」


 ガルネクが巣を指差す


 人質?………捕まってる人とか?


「いない筈だが?昨日確認した時はゴブリンしか居なかったぞ?」


 スルトが答える


「なら、いいか」


 ガルネクは納得する


「では気を取り直していくぞ!」


 ランクさんが煙玉を投げようとする


 その時


「誰か助けてぇぇぇぇ!!いやぁぁぁぁ!離してぇぇぇ!」


 ゴブリンの巣から女の人が出て来て

 追いかけてきたゴブリンに捕まって引きずられていった


『………………』


 全員の視線がスルトに集まる


「…………煙玉作戦中止、ゴブリンの討伐に追加で民間人の救出だな」


 スルトはそう言うとラルスさんから煙玉を受け取る


 まあ世の中上手くはいかないよね



 ーーースルト視点ーーー


 あぁ、失敗したな……まさか民間人が捕まってるとは

 昨日からルークと交代で見張っておくべきだったな

 いつも何か失敗するな俺


「それで隊列はどうする?」


 レイスが俺に聞く


「そうだな……ルークとガルネクが先頭、その後ろにレイスと俺、んでエルフィーユとマーティ、最後尾におっさんだ」


 ルークは実力があるから迎撃は出来るだろう

 ガルネクは罠を見つけるのが上手そうだ

 レイスは何かあったときにすぐに援護できる場所がいい

 俺も指示を出せるからレイスの側だ

 エルフィーユはマーティに守らせて援護してもらおう

 おっさんは頑丈だから後ろからの不意討ちとかくらっても平気だろ?

 いざというときは退路を拡げて貰おう


 そう説明すると全員が納得して隊列を組んだ

 この1年で俺の指示は信用できると判断してくれたんだろうな

 まあ、俺はこれくらいしか取り柄ないみたいだしな……


 思えばこの1年で色々考えたな……

 パートナーのルークは実力が高いがなかなか打ち解けられないし

 ガルネクの奴にはいつの間にか追い越されていた

 マーティなんて子供なのにかなり経験積んでるしな……俺、この子供より弱いとか……


「はぁ」

「どうしたんだい?」


 レイスが溜め息を吐いた俺を見る

 ……こいつ男の癖に妙に色気があるんだよな

 なに考えてんだ俺は


「いや、自分が情けなくてな、煙玉作戦は失敗だし」


 結構高かったんだぞ?この煙玉


「失敗なんて誰でもするさ、僕だってやらかすし」

「お前がか?失敗とは程遠い気がするが?」

「いやいや、結構多いよ、この前なんか火の中級魔法出そうとして爆発したし」


 後ろからマーティの「あれは驚いたね」って同意する声が聞こえる


「なにやってんだ……」

「ははは……」


 レイスが視線をそらす、コイツもこんな表情するんだな


「あ、話は変わるけど、ルークの素顔ってどうなってんの?」


 マーティが聞いてくる

 その声を聞いて一瞬ルークの肩がピクッと動いたのを俺は見逃さなかった


「さあな、俺も見たことねえよ」

「えっ?同じ部屋だよね?」

「アイツ仮面を外したときは包帯とかで顔を隠してんだよ」


 明るい時はいいが夜中だとかなり不気味だ


「お前そんなに素顔見られたくないのか?」

「…………」


 ガルネクがルークに言うがルークは前を見て無視している


「ルークってやっぱり恥ずかしがり屋なんだね!」


 とマーティは言うが

 あれは無愛想なだけだと思うぞ?


「顔にコンプレックスがあるとかではないですか?」


 エルフィーユが言う


「ふむ、火傷や傷痕を隠してるって考えも出来るな」


 おっさんが言う


「まあ、本人が嫌がるなら無理して見ようとはしない方がいいってことだね」


 レイスがそう言って話を終わらせた


 そうこうしてる間に広い場所に出た

 目の前には数匹のゴブリン

 どうやらここが巣の奥みたいだな

 さっきの民間人も居た

 ……………あれ生きてるのか?棍棒で殴られまくったみたいだが

 取り敢えず助けないとな



「ルーク!」

「………………」

 俺の合図でルークが走ってゴブリンを三匹斬り捨てた


「ギギィ!」


 民間人の側に居たゴブリンが驚く


「…………」


 ルークは斬り捨てたゴブリンの持っていた棍棒を拾い

 そのゴブリンに投げた


 ゴシャ!


 ゴブリンの頭を棍棒が潰す


 他のゴブリンがルークに向かう


「おらぁ!」

「はぁ!」


 そのゴブリン達をガルネクとレイスが殺す


「確保!撤退!」


 マーティが民間人を抱える……


「傷が酷いですね……『ヒーリング』!」


 エルフィーユが治療する


「ぬぉぉぉ!!」


 おっさんが背後から来ていたゴブリンどもをぶっ飛ばしていた

 挟み撃ちされそうになっていたか


 んっ?もうゴブリン全滅してないか?

 俺、ルークに合図しただけだが?

 ……………取り敢えず他に捕まってる奴はいないか確認しておくか



 ・・・・・・・・・


 ーーーマーティ視点ーーー


 ゴブリンの討伐を終えて

 女の人をラルスさんが抱えて僕達は巣を出た


「さて、これ使っとくか……」


 スルトが煙玉を巣に投げ込む

 僕達は巣から離れる


 少し経ってから巣から爆発音がして火や煙が昇った


「はぁ」


 帰り道、僕とスルトを最後尾にして皆で歩いていたら

 スルトが溜め息を吐く


「どうしたの?」

「んっ?いや、俺なにもしてねえなって思ってな」

「えっ?」


 なにもしてない?そんな風には思わないけど?


「ゴブリンと戦うときも俺が動く前に終わっちまったし、煙玉作戦も結局失敗だし、ガルネクが止めなかったら民間人を殺していたしな」


 あーちくしょう

 そう悔しそうに呟くスルト


「うーん、でも僕はスルトのお蔭で上手くいったと思うけど?」

「はぁ?」

 

 スルトが何言ってんだ?って表情をする


「だってスルトが僕達を誘ったんだよ?だから僕達はここに居るわけだし、ガルネクが居なかったら民間人を殺してたかもしれないけど、そのガルネクを誘ったのはスルトだよ?ゴブリンを嘗めずに戦力を集めたから、戦闘もあっという間だったけど、その戦力を集めたのもスルトだよ?」


 昨日から下準備して上手くいくって確信していたスルトだから

 結果的にゴブリン討伐も民間人救出も上手くいったんだ


「スルトが何もしてないなんて僕は思わないよ」


「あ、あぁ、そうか………そうか……」


 スルトは少し照れてるみたいだ


「これからも頑張ろうよ!」

「ああ、そうだな」


 元気になったみたいで良かった良かった!



 ・・・・・・・・・


 女の人を病院に運んで事情を医者に話す


 どうやら女の人は昨日から行方不明だった貴族の令嬢らしい

 なんでにゴブリン捕まったのかはわからないけど

 なんか僕達の評判は上がったみたいだ

 ゴルバ教官にも誉められたしね


 その後皆で食堂で夕食を終える

 ガルネクやラルスさんがスルトをからかったり煽てたりして楽しい時間だった

 ……………ルークはずっと黙っていたけどね

 照れ屋さんめ!


 部屋に戻って僕は浴場

 レイスは部屋でお風呂を済ませて休む

 今日も生き残れたね




 ・・・・・・・・


「くっ!」


 僕は飛び起きる

 周りは真っ暗

 まだ夜だね


「…………はぁ」


 僕が飛び起きたのはまた悪夢を見たからだ

 山賊に襲撃されたあの日の夢


「……最近多いな」


 前まではたまに見るくらいだった

 今は3日に1回は見てる

 そのうち毎日とかないよね?


「…………………」


 不安感が押し寄せる

 大丈夫……絶対に勝てる

 僕だって強くなってるし……皆だって………

 …………いるよね?

 あ、駄目だ、かなり不安になってる

 誰も一緒に戦ってくれなかったらどうしよう?

 僕1人で山賊を倒せる?

 ……………


「マーティ?」


 ベッドの上からレイスが顔を出した


「レイス?どうしたの?」

「いや、君がうなされてたみたいだからね」

「起こしちゃった?」

「まだ寝てなかったから気にしないでいいよ?何か悩みでもあるの?」

「…………いや、別に…」

「嘘だね」

 断言された


「マーティ、流石に1年も一緒にいればわかるよ、何か悩みがあるんだろ?」


 レイスがベッドから降りる


「………うん」

「僕に相談できないこと?…………あっ」


 そう言ってレイスは赤くなる……何か勘違いされてる?


「そ、その、男性としての悩みだったら僕に相談は難しいかもしれないけど…そ、その時はラルスさんとかなら解決してくれると思うよ?ほら大人だし」


 うんそんな悩みじゃないからね?


「違うよ、その……悪夢が酷くてね?」

「悪夢?」


 ………流石に前回の出来事をそのまま言うのもな……


「その、山賊達を僕1人でなんとかしないといけないんだけど…上手くいかなくて死んじゃう夢」

「……キツいね」

「うん、だからビックリして起きちゃうんだ」

「そうか……悪夢か……」


 ギュウ

 レイスが僕の右手を握った


「レイス?」

「そんな時はこうしたらよく眠れるからさ……僕も子供の頃は母によくしてもらったし」

「へぇ……」

「それにこうしてたら、その山賊達と戦う悪夢を見ても……僕が隣に居るだろ?」

「一緒に戦ってくれるんだ?」

「当たり前だろ?僕は君のパートナーだからね」


 そう言って微笑むレイス

 もう、そんな事されたら惚れちゃうよ?

 いや僕は大丈夫だけど


「ありがとうレイス……」

「どういたしまして、寝るまでこうしておくからお休みマーティ」


 僕はレイスに手を握られながら再び眠った

 もう不安感は無かった

 起きたらレイスにまたお礼を言っておこう








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