第24話 二年生になりました
春
暖かい風が吹き
新しい出会いがある季節だ
僕は11歳になった
僕達は問題なく二年生になれた
「んっ?」
僕が寮を出ると寮の前でゴルバ教官が数十人の人に説明をしていた
あぁ、そうか、今年入隊した訓練生達に説明してるんだ
「………一年間」
訓練生になって一年
山賊の襲撃まであと四年
「………頑張らないと」
僕は新人の訓練生達を見る
「何人残るのかな?」
僕はそう呟いた
いや悪意はないよ?
ただ、僕の同期も結構減ったからね
53人居た同期も今は37人だ
ポイントが貯まらなかった人
クエスト先で死んだ人
思ったのと違うと言って辞めた人
「結構減るんだよね……何人が卒業出来るのか……」
出来ればもう減らないでほしいな
結構仲がいい人もいるし
「マーティ?」
「あ、レイス」
レイスが後ろから話し掛けてくる
「どうしたんだい?」
「新人を見てたんだ」
「そうか、そんな時期だね……僕たちも先輩になるんだね」
「そうだね」
先輩か……もし一緒にクエストに行くことになったら何があっても新人を守ろう
僕達が助けて貰ったように
………犠牲になるつもりはないけどね
全員が助かるようにするんだ!
「そろそろ行かないかい?エルフィも待ってると思うよ?」
「うん」
僕達は街に出る
今日はクエストでも座学でもない
買い物に行くんだ
というのも1週間後に五国同盟の親善祭が開催される
その間、お店は閉まるんだ
店の人も祭りを見たいからね
だから必要な物とかを今のうちに買うことになったんだ
「さあ行こう!」
レイスに手を引かれて僕達は歩く
・・・・・・・・
エルフィと合流して3人で歩く
エルフィ、僕、レイスの並びだ
………両手に花ってやつかな?
周りからの視線が気になる
なんか見られてる
「………私達、見られていませんか?」
「なんでだろうね?」
2人が首を傾げる
いや僕は何故かわかる
レイスだ
レイスが原因だ
本人は気付いてないけど、成長してレイスの爽やかスマイルの威力は上がっているんだ
レイスが微笑めば女性は顔を赤くして恥ずかしがる
そして1部の男性もときめくのだ
ほら、レイスは男装してるけど女性だし
中性的な魅力って言うのかな?それが溢れてるんだよね
だからすれ違う女性はレイスを目で追うし
僕を見て「なんでこんな子供が?」って目で見てくるし
エルフィを「こんな女が!!」って殺気もこもった目で見てくるのは仕方ないことなんだよね
あれ?なんか虚しくなってきたぞ?
いいもん!僕にはネルがいるからね!
「マーティさっきから黙ってるけどどうしたんだい?」
「えっ!?いや別に!?」
「?……何か困ってるなら相談してよ?」
微笑みながら言うレイス
原因は君なんだけどね
そう言うとこだぞ!レイス・カールル!!
「結構買いましたね、少し休みませんか?」
エルフィの提案で僕達は喫茶店でお茶を飲むことになった
・・・・・・・
「親善祭か…」
レイスが紅茶を飲みながら呟く
優雅に飲むね……僕も真似してみる……
あ、駄目だ、どうしても優雅っていうより大人ぶる子供にしか見えないや
「楽しみですね」
エルフィがケーキを一口食べる
僕も自分のケーキを食べる
うん美味しい
「武道大会、どうなるんだろうね?」
僕も言う
「恐らく零騎士の誰かが出ると思う、他の国も似たような者を出すだろうね」
「十二聖将が出るかもしれませんね」
「えっ?出るの?ナイラスさんとか?」
てかナイラスさん以外の十二聖将が来るの!?
「九位から上は何処にいるかはわからないけど
十位の悪鬼と十一位の神槍は各々国に所属してる筈だよ?」
見たことはないけどね
レイスはそう付け加える
「確か悪鬼はパニアルに、神槍はカッシュルンに居るんでしたよね?」
……パニアルって確か強い人が長だったよね?
「悪鬼がパニアルの長なの?」
「いや違うよ?」
「えっ?でも強い人が長だったよね?」
「十二聖将は強すぎるからね、バトル・ロワイアルには出場出来ないんだよ?」
「あー」
そっか、バトル・ロワイアルの意味がないもんね
「それに悪鬼は仕えるっていうよりは滞在してるって感じだと聞きましたよ?」
「なら来るとしたら神槍なのかな?」
どっちにしてもナイラスさん以外の十二聖将か
……ナイラスさん見たいにお酒に溺れたりしてないよね?
やめてよ?僕の中で十二聖将のイメージを更に悪くするの
因みに僕の中のナイラスさんのイメージは飲んべえである
だって街で会うときは殆んど酒を片手に持ってるんだよ?
正直大丈夫か不安になるよ
「取り敢えず、誰が出るかは当日までわからないから、楽しみにしておこう」
レイスはそう言ってケーキを食べる
「じゃあクエストをどうするか話しませんか?」
エルフィの提案
そうだね、二年生は3000ポイント貯めないといけないからね
一年の時の2000ポイントと合わせて5000ポイントにしないと
「二年生になったから少し難しいクエストに挑めるようになったからね」
まあ討伐するモンスターの数が増えただけだけど
スライムを10体倒せとかが30体倒せになっただけ
でも報酬やポイントは増えてるから頑張ろう!
そう話していたら
「よ、3人とも休憩か?」
「スルト君」
エルフィが男の名前を呼ぶ
スルト・オックス
僕達の同期だ
たまに一緒にクエストを受けたりすることもある
スルトは状況を判断するのが上手いから彼の指示にはかなり助けられている
「君もかい?」
レイスが言う
「あぁ、クエストを終わらせてな」
スルトが隣の席に座る
「……………」
スルトの向かいにスルトのパートナーであるルークが座った
ルーク・ホリゾン
僕が見る限り同期で1番強いのは彼だ
レイスやラルスさんも強いけど、ルークは二人よりも強い
半年前に10回模擬戦をしたことがあったけど
レイスとルークなら
3対7でルーク
ラルスさんとルークなら
4対6でルーク
レイスとラルスさんなら
4対6でラルスさんが勝っていた
僕?
全員に1回しか勝てなかったよ………
いいさ!これから追い付いて見せるから!!さ、最近はレイスともいい戦い出来てるし!!
今なら二回はルークに勝てる!!と思いたい
「…………」
そんな彼はメニューを見ている
……見てるんだよね?仮面でわかんないけど
てかあの仮面で食べれるの?外すのかな?
ルークの素顔……気になる
「マーティ聞いてんのか?」
「えっ?ごめんなんて?」
スルトの言葉に我にかえる
「だから明日俺達と一緒にゴブリン狩らないか?最近増えてるらしくてな」
「ゴブリンか……」
確か知恵をつけたゴブリンは要注意だったよね?
「大丈夫なんですか?」
「作戦なら考えている、てかもう下準備はしてるんだなこれが、あ、俺レモンティーでお願いします」
スルトは店員さんに注文する
「…………これを」
ルークはメニューに指を指す
「下準備?何をしたんだい?」
レイスが聞く
「先ずゴブリンの巣を調べてきた
んで、ゴブリンの数と罠の数と場所を把握した
作戦はこうだ」
スルトがレイスとルークを指差す
「先ず二人に見張りのゴブリンを殺ってもらう
4匹居るが距離があるから2匹ずつ同時に殺ればバレない」
トントントントン
スルトは僕のカップの周りに指で4ヶ所叩く
カップをゴブリンの巣に見立ててるのかな?
なら今叩いた所が見張りの場所かな?
「んで次に巣にこれを投げ込む」
スルトは玉を取り出した
「なにそれ?」
「煙玉、誘爆性のあるやつ」
危ないもの持ち運ばないでよ!?
「これを投げ込んで煙が充満したらエルフィーユの火の魔法でドカンだ」
………うーん
「周りに被害とか出ない?」
僕が聞く
「安心しろ、ゴブリンの巣の周りは何もない、岩とか木が数本あるくらいだ、火事とか民間人に被害は出ない」
なら……いいのかな?
「爆発の規模は?僕達も巻き込まれないかい?」
レイスが問う
「この煙玉を何回か自分で試した
範囲はそこまで広くない
巣の中がぐちゃぐちゃになるくらいだ」
ぐちゃぐちゃって………
「魔法は中級ですか?上級ですか?」
エルフィの問い
「下級でいいよ、ちょっとした火で爆発するから、もしかしたら巣の中に松明とかあったら投げ込むだけで終わりだ」
………僕達が一緒に行く意味あるのそれ?
「成功するの?」
「多分な、俺とコイツだけなら少し危ないが、お前たちも居るなら成功率はかなり高いと思う……それにラルスやガルネクも誘うつもりだ」
「なんのために?」
「煙玉が失敗した時の保険だ、ガルネクも最近はいい感じに強くなってるし、ラルスのおっさんはかなり強いからな、総力戦になった時の為にな」
うーん………それなら
「僕は……受けてもいいかな?」
僕は言う……不安が無い訳じゃないけど、スルトは毎回ちゃんと考えて行動してる
今回も上手くいくって自信があるから僕達を誘ってるんだろうね
「そうだね……7人で挑めるなら僕もいいかな……でもラルスさんやガルネクが無理だったら僕達も拒否するからね?他の人にしてくれよ?」
「あぁ、そん時は俺達も諦めるさ、これはお前達とあの2人がいるから出来ると判断したからな」
無謀だと思うことはしない……ってことだね
「それでしたら私も反対はしません」
エルフィも受ける
「……ルークは同意したの?」
僕はちらりとルークを見る
「………………?」
ルークは外を見ていたが僕達の視線に気付いて振り返る
「ルークは同意したの?」
僕はルークを見る
「………(コク」
ルークは頭を縦に振る
ならいいか
「じゃあ決定だな!」
スルトは店員さんが持ってきたレモンティーを飲む
ルークもアイスティーを飲む
あれ?いつの間に仮面を変えたの?
今のルークはいつもの顔を全部隠す仮面から口元だけ露出した仮面に変えていた
・・・・・・
夜、浴場に行ったらスルトに会った
「ガルネクもラルスのおっさんも行くってさ!」
そう言って出ていった
・・・・・・
ガチャ
部屋に戻る
部屋は僕が出てる間は鍵を閉めている
というのも
「お帰りマーティ」
「ただいま」
レイスは服を着ているが頭から湯気を昇らせている
風呂上がりだね
彼女は基本僕が居ないときにシャワー済ませる
まあ女性だからね
それに部屋にいる間は包帯を外している
本人が言うにはかなり息苦しくて休めないらしいからね
部屋にいる時くらいはリラックスしてほしいからね
でも
プルルン♪
「レイス、僕も男だから少しは警戒してよ」
ブラとか付けてよ、せめて揺らさないで!
「マーティはそんな事しないって信じてるからね」
まあそうだけど……僕はネルに操を立ててるからね!!
でも少しムラっときてしまう……いや落ち着け僕!
「あ、スルトからラルスさんとガルネクも参加するってさ」
「そうか、なら明日はゴブリン狩りだね」
「スルトの作戦……上手くいくといいけど」
「そうだね、もう休もう」
僕達はベッド入って就寝した
明日はゴブリン狩りだ!




