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少年はただ幸せになりたい  作者: ファルコン
三度目の人生
30/69

第21話 レイス・カールル

 幼い頃


「あら?シャルル、眠れないのですか?」

「お母様、本を読んで下さい」

「仕方ないですね、ではシャルルの好きな本にしましょうね?」

「はい!」


 寝付けなかった私に母はよく本を読み聞かせてくれた



「騎士レイスはドラゴンを倒し、捕らわれていたお姫様を助けることが出来ました」

「すごいすごい!」

「シャルルはこの話が大好きですね」

「騎士が格好いいんだもん!」


 幼い頃から私は騎士に憧れた

 大きくなったら騎士になるんだと決めた


 ・・・・


 私は上流貴族のフランベール家に産まれた

 兄が2人、姉が1人

 私は末っ子だ

 名前はシャルル・リィ・フランベール


「シャルル!シャルルはどこだ!」

「御嬢様なら先ほど出掛けられましたが?」

「またか!あの娘は!」


 ………………



「えい!やぁ!」

「シャルル嬢!また旦那様に怒られますよ!」

 メイドのクーリが言う

「大丈夫です!」

 私は剣を振る

「はぁ…はぁ…」

「シャルル嬢にはこっちの方が向いてるのでは?」

 執事のセルスが私のレイピアを渡す

「そうですかね?」

 私は必死に剣を振る



 ・・・・・・


 私が13歳になったとき


「許さんぞ!お前は嫁に出て普通に生きるんだ!」

 父であるアーラス・リィ・フランベールが言う

「何故ですか!トュイン兄様も騎士になりました!」

 私は長男であるトュイン・リィ・フランベールの名を出す

 一等騎士にまでなった尊敬する兄の名を


「トュインはフランベール家の威光を示す為に騎士になったのだ!」

「でしたら私も!」

「お前は女だろうが!」

「女であろうが騎士にはなれます!!」

「騎士はそこまであまくはない!!」


 私と父の口論は続く


「貴方、許してあげたらいいのでは?」

「お母様!」

「リィン!?」

 そこに母であるリィン・リィ・フランベールが言った


「シャルルは頑固な子ですよ?一度決めたらもう止まりません……それに騎士になるために剣の技術を磨いていました、家の屋敷でこの子に勝てる人はいないくらいよ?」

「だ、だがな!」

「ねっ、貴方…許してあげましょう」

「ぐぐ……」


 そして私は騎士になることを許された


 しかし条件を出された


 男として騎士学校に入って無事に騎士になることが条件



 ・・・・・・・


「……よし」


 私は部屋で自分の髪を切る

 腰まで伸びていた髪を短くし

 男物の服を着る


 包帯を胸に巻いて締め付ける

 少し息苦しいけどこれで胸は隠せる


 口調も変えて

 一人称も"私"から"僕"に変えた



 こうして

 シャルル・リィ・フランベールは



 レイス・カールルになったのだ……



 ・・・・・・・・・



 ーーーマーティ視点ーーー


「レイス………」


 僕はレイスから理由を聞いた

 どうして騎士を目指したのか

 何故わざわざ男装したのか


「……………」


 レイスは俯いている


「あー、うん、まあ……ビックリしたかな」


「黙っててごめん……」


「まあ仕方ないよ、言えるわけないし……うん」


 ………………


 き、気まずい……

 す、少し話題を変えよう


「レイスの本名って何?」

「シャルル・リィ・フランベールだよ……」

「………レイス・カールルって名前はどこからきたの?」


 全然かすってないよ?


「レイスは好きな本に出てくる主人公の騎士からで…カールルはその本の作者だよ」


 そう言ってレイスはベッドから本を取り出した


「へぇ……」


 僕は本の表紙を見る


『騎士レイス、ドラゴンとの死闘』

『カールル・バイク著』


「成る程ね……」


「…………」


「それでどうするの?」


 僕に女の子ってバレちゃったけど


「バレてしまったからには……僕はここには居られないだろうね……退学かな…皆を騙してた訳だし」


 レイスは俯く


「……………これって僕が黙ってたらそれで終わる話だよね?」

「えっ?」

 僕はレイスが頑張ってる事を知っている

 男装してまで騎士になりたいんだからその夢を終わらせたくはない

 この半年でもかなり助けられてるし

 だから


「僕は黙っとくよ、誰にも言わない」

「………いいのかい?僕は君も騙してたんだよ?」

「別に気にしないよ、レイスはレイスだし……今まで色々と助けてもらってるんだからさ、今度は僕が助けるよ」

「僕だってマーティ達には助けてもらってるんだけどね……」


 レイスは照れくさそうに頬をかく


「取り敢えず僕はレイスの秘密を守るよ、頑張って騎士になろう!」


「……ありがとう、マーティ」



 僕とレイスは握手する


 ………あ、でも


「エルフィには話した方がいいと思うよ?」


 パートナーなんだし

 それに女性同士でしか解決出来ないこととか有るだろうし


「そ、そうだね………エルフィ、怒るかな……」

「それはわからないよ、取り敢えず今日は遅いし休もう」



 僕はベッドに潜る


「そうだね」


 レイスもベッドに入って眠る


 ………あぁ、でもレイスが女の人だったなんてね

 全然気付かなかった……僕ってそういうの鈍いのかな?

 いや、レイスの男装が凄いんだ!………そういうことにしよう



 ・・・・・・・・



 翌日


「えっと?二人ともなんでこんなところに?」


 僕とレイスとエルフィは人気のない森の奥に居た


「その、エルフィに大事な話があるんだ……人に聞かせられなくて……」


 レイスは言いにくそうだ


「僕は周りを見てくるから、レイス……ちゃんと話すんだよ?」

「うん」

「?」


 僕はレイスとエルフィから離れた


 ・・・・・


 ーーーエルフィ視点ーーー


 どうしてこんな所に連れてこられたのかがわかりません


 マーティ君は私達から離れました

 レイス君はどう話を切り出すか考えてるみたいです


「あ、あのさ、エルフィ……」


「どうしました?」


 レイス君は頬を赤くしています


 ………まさか、愛の告白ですか!?

 …………………………いやそれは流石にないですね

 私みたいな子供体型に興味を持つ男性なんていませんし


「その、実は僕、エルフィに隠し事をしていたんだ」

「隠し事ですか?」


 いったいなんでしょう?


「じ、実は………」


「?」


 私は首を傾げる


「ぼ、僕は………」


「レイスは?」


 ………………………


「女……なんだ……」


「………はい?」


 えっ?今何て言いました?


「すいません、よく聞こえなかったみたいなんでもう一回言ってもらっても構いませんか?」


「だから、僕は女なんだ!」


「………」


 えっ?今度はちゃんと聞こえた筈ですが………

 レイス君が女性?

 えっ?そう言いましたよね?


「えっと、私をからかっているのですか?」


 渾身のボケでしょうかね?

 私はツッコミをするべきですか?


「そんなつもりじゃないんだ!その………」

「しかし、いきなりそう言われても……」


 信じられないと言いますか……突拍子もないですし


「う、うん、いきなり言われても信じられないよね……だから、証拠を見せるよ……」


「証拠?」


 そう言うとレイス君は服を脱ぎ始めました

 上着を脱いで、上半身が服を着てない状態になりました

 胸元に包帯を巻いていますね、怪我をしてるようには見えませんが



 シュルシュル


 レイス君は包帯をほどいていきます


 パサッ

 プルン♪


 包帯がほどけるとそこからはとても柔らかそうなものが出てきました


「………………えっ!?」


 私は目を擦ってもう一回レイス君を見ます


「………………」

「………っ」


 レイス君は恥ずかしそうに赤面になりながら顔を背けます


「こ、これ……本物ですか?」

「う、うん……」

「ちょ、ちょっと触りますね?」


 私はそう言ってレイス君の胸に触れる


 フニ


「………………」


 こ、この感触………や、柔らかくて………ほ、本物?

 えっ?私は夢を見ているわけではないですよね?

 レイス君のこれは………どう考えても女性の胸です


「えっ?ええ!?」


 フニフニ


「ちょ!エル…フィ、っ!」

「あ、すみません、ちょっと気が動転してました………」


 これは……認めるしかないですね


「えっと……レイス…君?それともレイスちゃんと呼んだ方が?」

「いつも通りでお願いします…」

「ではレイス君……本当に女性だったんですね」

「うん……」


 レイス君が包帯を胸に巻いていく


「マーティ君は知ってるのですか」

「うん、昨日、バレて…」

「それで私にも話そうと?」

「………うん」

「………………男装している理由を聞いても?」


 レイス君は服を着てから私に理由を話してくれました


 ・・・・・


「成る程、だいたいわかりました」

「今まで騙しててごめん!」


 レイス君が頭を下げます


「……………駄目です、許しません」

「っ!」


 理由はともかくレイス君が私達を騙していたのは事実です

 だから謝ったからはい終わり、なんて事はしてはいけません

 だから


「お詫びとして私の訓練に付き合ってください」

「えっ?」

「私は魔法しか取り柄がないですからね、近接での戦闘が苦手です、その訓練の相手をしてください、それで私もレイス君の事は黙っています」

「エルフィ、うん、付き合うよ!何でもする!!」


 人が聞いたら誤解されますよ?


「それと、何か困ったことがあったら相談してください、マーティ君には話せないことでも……同性の私になら話せますよね?」

「うん、ありがとう……本当に……ありがとう」

「泣かないでください、ほら」


 私はハンカチをレイス君に渡しました



 ・・・・・・・



 ーーーマーティ視点ーーー


「おっ、空に向けてのファイアーだ」


 あれはレイスからの合図だ

 話が終わったんだね


 僕は二人の所に戻る



 ………………


「なんでレイス泣いてるの?」

「その、安心したら…止まらなくて」

「さっきからこの調子なんですよ……落ち着くまでここにいましょう」

「そうだね」


 そう言えば


「エルフィも黙っててくれるんだね?」

「えぇ、私も協力します」

「それはよかった」


 エルフィも協力してくれるなら安心だ


 僕達はレイスが落ち着くまで待った

 凄く泣いているレイス


 後から聞いたけどレイスは僕達を騙しているのを凄く気にしてたんだって

 僕達は気にしないのに……


 どれくらい時間が経ったからわからないけど

 レイスはやっと落ち着いた



「落ち着いた?」

「うん……」

「もう大丈夫ですね」

「うん、大丈夫……」

「なら戻ろう!」


 あ、その前に………


 僕はレイスの前に手を出す


「マーティ?」

「レイス、改めてよろしくね!」

「あ、あぁ!よろしく!」

「私も」

「あぁ!よろしくエルフィ!」



 こうして僕達は本当の意味でパートナーになれたのだった



















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