第20話 恋のキューピッド大作戦・完了!!……完了?
翌日
ハリエルさんにガルネクの好物がアップルパイっ
てことを伝えた
「こんなことしか手伝えないけど……」
「ううん、充分よ!ありがとうマーティ君!」
も、燃えてる………
そんなハリエルさんを後にして僕はレイスとエルフィと合流してクエストに向かった
・・・・・・・・・
ーーーガルネク視点ーーー
「………くそ」
俺は木剣を振る
「くそ!」
イライラする気分を発散するために木剣を振る
「くそぉ!!」
ダメだ…イライラが収まらない
これも全部マーティのせいだ!
いや、わかってる、アイツが悪くないのは……だがアイツの事を考えるとイライラする
ガキの頃から俺に立ち向かってきて
訓練生になって暫くしたらトロールを倒しただって?
へっ!大活躍だな!
「それに比べて俺は……」
俺は……何してんだよ……
村長の息子だからって威張って……
成長してそれが恥ずかしいことだと知って
そんな自分を変えたくて……騎士になろうとここまできたのに……
俺はなにやってんだ?
クエストだって俺は足手まといだ
訓練だって上手くいかない
座学だってマトモに理解できてるか怪しい
トロールが現れた時、俺は震えてるだけだった!
ラルスの奴が戦っていたのに俺は震えてるだけだった!
「くっそぉぉぉ!!」
ガッ!
俺は木剣を地面に叩きつける
「はぁ、はぁ……」
本当……俺何してんだよ……
ガキの頃から何も変わってない……
俺は……
「ガルネク」
「………なんだよ」
いつから見てたのかラルスが近付く
「何をそんなに苛立っているんだい?」
「てめぇには関係ねえだろ」
「私は君のパートナーだ、関係あるさ」
「ほっとけよ、足手まといの事なんてな」
「何を言ってるんだ?」
「うるせえ!ほっとけって言ってんだよ!!」
俺はラルスから離れる
完全に八つ当たりだよな……だせぇ…
・・・・・・
外壁
「うぉぉぉぉぉぉぉ!」
俺は外壁の側を走る
ここは見張りの騎士しかいないし距離もあるから走り込みにはちょうどいい場所だ
「はぁ…はぁ……あと、1周……んっ?」
「よっ、ガルネク」
「…………」
スルトとルークが話し掛けてきた
「なんだ、クエスト帰りか?」
「まあな、お前は鍛練か?」
「あぁ………」
「……………」
「なんだ、なに見てんだ?」
ルークは俺の顔を見ている
いや実際は何処を見てるかは仮面でわからないが……少なくとも俺の方に顔は向いている
「……………」
「……ちっ」
答えようとしないルークに俺は舌打ちして走るのを再開した
「無理するなよ!!」
スルトが俺に言うが俺は答えずに走る
………無理をするな?
馬鹿いえ、無理をしないとお前達に追い付けないんだよ
・・・・・・
もう夕方か……寮に戻るか
俺は帰路につく
「あっ!ガルネク様!」
……………様?
「ガルネク様!やっと会えました!」
「………げっ…」
昨日の女か………ハリエルだったか?
「な、何のようだ?」
人を様付けで呼ぶ奴とか危ないだろ
「あ、あの!これを受け取ってください!!」
そう言ってハリエルはバスケットを差し出す
「なんだそれ?」
「アップルパイです!!」
アップルパイ……
「それをどうしろと?」
「受け取ってください!」
「受けとる理由がないが?」
「た、助けて貰ったお礼です!」
「…………」
アップルパイか……好物だが…
「なんでアップルパイ?」
「貴方の好物だと聞きましたから!」
「………マーティか」
昨日のアイツの言い方だと結構親しそうだったから……てかマーティがなんで俺の好物を知っているんだ?
「め、迷惑でしたか?」
「………………………………」
正直言ったら迷惑だ、だがお礼だと言われたらな………それにアップルパイ………あーどうするのが正しい?
「…………あー貰っとく」
ここで断ってもなんかしつこくこられそうだ
「どうぞ!!」
俺はバスケットを受けとる
おいおいホールかよ、食いきれるか?
「どうも」
俺は歩き出す、用はもう済んだろ?
「あ、ガルネク様!」
「その様付けやめろ!」
恥ずかしいだろ!
「ではガルネクさん!」
「なんだよ?」
「あ、あの……す、好きです!昨日助けてもらって……その、一目惚れしました!」
「………はっ?」
これって告白か?
あー……人に好かれたのは初めてだが
「そうか、じゃあな」
「あ………」
悪いが今は色恋とかに関わってる余裕は無いんだよ
「……………」
ハリエルは追ってこない、それでいい、俺のことなんか忘れろ
「やめてください!」
んっ?なんだ?
俺は振り返る
「姉ちゃん振られたんだろ?俺が構ってやるよ」
「いい身体してるじゃないか」
「さ、触らないで!」
二人の男に絡まれていた
またか……よく絡まれるな
「……………」
ここで助けたらまた面倒な事になるな
無視して帰ったらあの女も俺に幻滅するだろ
「離して!いや!」
バチン!
「いて!この!調子に乗るな!」
バキィ!
「ぐぅ!?」
……………………………………
「てめえら何見てんだ!見せもんじゃねえぞ!」
………ここで見捨てたら……俺もただの屑野郎だな
「はぁ…」
「あ?なんだてめえ?この女をさっき振った奴だよな?」
「あぁ、そうだが?」
俺はバスケットを近くの箱の上に置く
「お前には関係ないよな?」
「そうだな、関係ないな」
俺は男達に近付く
「それじゃ何のようだよ?まさか交ざりたいのか?」
「んな訳ねえだろ」
俺は男達の前に立つ
「それじゃ何のようだ?俺達とやろうってのか?」
「そのつもりだ」
「はぁ?この女と関係無いんだよな?」
「関係ないな、だがな………」
あーイライラする
「お前ら見てるとムカつくんだよ」
ガキの頃の馬鹿な俺を思い出してな
バキィ!
「ごわぁ!?」
グィ!
「きゃあ!?」
ハリエルを捕まえてた男を殴る
ハリエルから手が離れたのを確認して俺はハリエルを引き寄せた
「てめぇ!」
もう1人がナイフを出す
「それは脅しのつもりか?」
「なんだと?刺すぞこら!!」
ナイフを俺に向けてくる
「刺してみろよ……」
「何!?」
「刺してみろよ!ビビってんのか!!」
「こ、このやろう!」
男がナイフを向けて突進してくる
「うぜぇ!」
ドスッ!
「なっ!」
俺は左手を出しナイフを掌に刺させる
根元までナイフが刺さって俺の左手を貫通した
俺はその左手を握り男のナイフごと男の右手を握る
「うぜぇ!!うぜえんだよ!!」
ゴキィ!
俺は右手を握り、男の顔面を殴った
ドサッ!
気絶する男
もう1人は腰が抜けたのか座り込んでいる
「ちっ!弱いくせに好き勝手してんじゃねえよ!」
「ひぃ!?」
「とっととこいつ連れて失せろ!!」
男は這いながら逃げていった
気絶した奴は放置かよ……面倒だが端に動かしとくか
俺はナイフを引き抜いてから男を道端に運んだ
「あ、あのガルネクさん」
「なんだよ」
「助けてくれてありがとうございます!」
「……お前の為じゃねえよ」
「でも……」
「…………はぁ」
俺は左手に治癒魔法をかけてから言う
「俺はただ屑野郎になりたくなかっただけだ」
「?」
ハリエルの顔に治癒魔法をかける
………周りの野次馬がウザいな
「お前の家は?」
「えっ?」
「また絡まれたら面倒だから送るって言ってるんだ、お前の家は?」
「こ、こっちです!」
寮とは反対方向だな
・・・・・・
俺とハリエルは歩く
「あの、ガルネクさん……さっきのはどういう意味ですか?」
「そのまんまの意味だ、あそこでお前を見捨てたら俺はただの屑野郎だ、それが嫌だから助けただけだ」
「でもそれって」
「お前の為じゃない、俺の為だ……」
「…………」
「俺はな、情けない男なんだよ…」
「情けない?」
なんでこんな話をしようと思ったのか…その理由はわからない
「俺もガキの頃はあんな風に好き勝手暴れてたんだ」
「えっ?」
「村長の息子だからって威張って……村のガキどもを殴って暴れて好き勝手だ」
「…………」
「そんな事してた奴が騎士になろうとしてるんだ、笑えてくるだろ?お前はなんのつもりなんだってな」
俺は幻滅してほしくて話しているのか?
「でもそれは子供の頃の」
「今も変わんねえよ…同期の連中の活躍を聞いて嫉妬してイラついて八つ当たりして……情けないクソガキのままだ」
人間の本質は変わらない……
「それでも……ガルネクさんは私を助けてくれました!」
「……自分の為だ」
「それでも助けてくれたのは事実です!!」
「結果はな………」
「だから……私はガルネクさんの事…好きなんです……」
「……………なんでだよ」
他にいい奴いるだろ?
「確かにガルネクさんは昔は悪い子だったんでしょうね、でも今は必死に変わろうとしてる様に見えますよ?」
「昨日今日で俺の事がわかるのかよ……」
「少なくとも……ガルネクさんが優しい人なのはわかります……私を2回も助けてくれましたし……治癒魔法もかけてくれました」
「…………」
「ガルネクさん!私は貴方に振られました!でも、諦めません!何回もアタックします!」
「お前な……」
「しつこいって思われてもアタックしますからね!だって……好きなんですから!!」
真剣に、顔を赤くしながら言われる……
「……勝手にしろ」
「勝手にします♪」
・・・・・・・・
ハリエルを家まで送って俺は寮に戻る
「はぁ………」
「戻ってそうそうため息か?」
部屋でラルスが入浴道具を持っていた
「疲れたんだよ………」
「そうか」
「…………」
「ガルネク」
「なんだ?」
「私は君を足手まといだと思ったことは1度も無い、それだけは言っておくぞ?」
「………………」
………ラルスは大人だな……
「ラルス」
「なんだ?」
「浴場行くんだろ?戻ってきたらアップルパイ少しやるよ」
「ほぉ、買ってきたのか?」
「貰い物だ、1人じゃ食いきれん」
「そうか、楽しみにさせてもらおう」
「………それと……今朝は八つ当たりして悪かった」
「気にしてないさ、君はまだ子供だ、そんな君の悩みも苛立ちも受け止めるのが大人でありパートナーである私の役目だ」
「……………」
「これからもいくらでもぶつかってくれて構わんぞ?」
「そうかい、なら苛ついたらまた八つ当たりさせてもらうか」
「この筋肉で受け止めよう!」
「はっ!」
………久しぶりに笑えたな
…………変わろうとしてるか
………いつか、謝れるだろうか………マーティに、ネルに、カーツに………村の連中に……
いや謝らないといけないな………許されないだろうが……先ず謝る事から始めないとな
それで……やっとスタート地点だ
ラルスが部屋を出る
………アップルパイ、切っとくかな
あっ、ハリエルにアップルパイの礼を言ってなかったな…………バスケットを返すときでいいか……
・・・・・・・・
ーーーマーティ視点ーーー
「ガルネクとハリエルさんどうなったのかな………」
「気になるのかい?」
クエストを終えて部屋で休んでいた僕とレイス
「まあ少し……」
ガルネクにはハリエルさんとくっついてもらってラルスさんを襲わないようにしてもらわないと
「男女関係はなるようになるさ」
レイスが言う
「レイスはモテるから言葉の重みが違うね!」
経験豊富なんだろうね!
「そ、そうでもないんだけどね……」
気まずそうなレイス
「まあ明日ハリエルさんに聞いてみるよ……取り敢えず僕は浴場に行くけどレイスは?」
「僕は部屋のシャワーでいいよ」
「………レイスって浴場使ったことある?」
「えっ?ど、どうだったかな……」
………まあ肌を人に見せるのは嫌だって人はいるからね
レイスもそうなんだろうね
「じゃあ行ってくるね」
「うん、ごゆっくり」
僕は部屋を出る
・・・・・・
浴場に着いた
僕は結構ここが好きだ
広いし!湯船に浸かるとシャワーとは違って疲れがジワーと溶けていく感じがしていいんだよね!
僕は身体を洗う
湯船に入る前に洗うのはマナーだよね!
「おや?マーティもか?」
「へっ?」
湯船から声がした
湯気が濃くてよく見えない………誰?
僕は泡を流してから湯船見る
「クエストを終えたのか?」
見えた………湯船にはラルスさんがいた
「あぁ、ラルスさん…うんクエストあがりだよ、楽勝だったよ!」
「そうか!それは良かった!」
…………うん?ラルスさん?
「えっ?ラルスさん!?なんでここに!?」
「何を驚いているんだい?私だって浴槽に来るぞ?」
いや、でもラルスさんは女性で!?
「ここはいいな、私のこの筋肉でもゆっくりと浸かれる」
「そ、そうですか……」
ヤバイヤバイ…見ちゃダメだ!女性の裸を見るなんて!
「どうしたんだマーティ?………もしかしてどこか怪我をしているのかい?」
「い、いえそんなことは!」
「隠してはいけない!少しの怪我でも死に繋がる!」
「大丈夫です!無傷です!」
「ならいいが……しかし………よし!では友好を深める為に私が背中を流してやろう!」
「ふぇ!?」
何言ってんの!?
「遠慮するな!これでも背中を流すのは慣れているのだ!」
ザバァ!
ラルスさんが立ち上がる
「うわぁぁぁぁ!?」
立ち上がるラルスさん
ラルスさんの裸………見てしまった……
パオーン!!
「……………」
「むっ?どうした?」
「いえ、その………立派な象さんですね」
・・・・・・・・
ラルスさんは男性だった……いやあんな象さんを見て、女性だと思うわけがない
僕は部屋に戻るために廊下を歩く
「ラルスさんは男性だった……じゃあ誰なんだ?」
前回のガルネクが襲った男装した女の人って……
「もしかしてそんな人は存在しないとか?」
思えばガルネクから直接聞いた訳じゃないし
ガルネクは同年代から嫌われていたし……悪意のある噂を流されていた?
「もしそうだったらガルネクには悪いことしたかなぁ……」
別に危害を加えた訳じゃないけど軽蔑しちゃってたし……
うん、お詫びも兼ねて今度何か奢ろう
僕は部屋の前についた
ガチャガチャ
「あれ?鍵がかかってる?」
レイス出掛けてるのかな?
ガチャン!
僕は鍵を開けて扉を開ける
…………………
プルン♪
「……………へ?」
僕の視界に写るのは何かな?
丸くて……白くて…揺れて………
あ、これってひょっとしておっぱ
バタン!
「えっ?えっ?」
えっ?部屋に女性が居た?
思いっきり見ちゃったよ?
あれ?僕ひょっとして寮を間違えた?
いやいや番号は間違えてないし、僕とレイスの名前を書いた札も貼ってあるし!
てか僕の鍵で開いたんだから僕とレイスの部屋で間違えてないし!!
あ、レイス……
そっかレイスが女の人を連れ込んだのか!
レイスだって男だしね!
まだ13歳だけど、15歳が成人だから別に速くないよね?
だから部屋の鍵を閉めてたんだね!悪いことしたな………
レイスの逢い引きが終わるまでどっか行ってようかな!二時間くらい!
ガチャ
そう考えていたら扉が開いた
「あ、その……マーティ……………見た?」
「うん、見た……でも仕方ないよね!うん仕方ない!」
「う、うん……その、入っていいから……」
えっ?なに?逢い引きを見てろと?そんな趣味なの?
「ほら早く!」
「うわ!」
レイスに引っ張られて部屋に入る
ガチャリ
鍵閉めた!?
「ちょ!レイス!」
レイスに引っ張られて部屋の奥に行く
逢い引きの邪魔をしちゃったから怒ってるの?
「座って」
レイスに机に座らされる………そして僕は部屋を見る
あれ?女の人は?レイス以外いない?
トイレ?シャワールーム?
僕がそう考えていたら
「今まで黙っててごめん!」
レイスに頭を下げられた
「えっ?ちょ?レイス?」
「わかってる!僕は許されないことをしている!でも騎士になるには仕方なくて!」
「ちょ!ちょっと待って!話が見えない!」
落ち着いてよ
「話が見えないって……見たんだろ?」
見たって……それって
「女の人の裸を?」
「だから……僕の身体を……」
……………えっ?
あれ?えっ?どういう意味?
僕が見たのは女性の裸だった……いやパンツは履いてたかな?
えっ?それでレイスは自分の身体を見られたと言う?
そして部屋には僕とレイスだけ
つまり………えっ?
レイス=
「レイスって………女の子だったの?」
「………ごめん」
レイスは気まずそうに頬をかいた




