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少年はただ幸せになりたい  作者: ファルコン
三度目の人生
10/69

第6話 約束

 3年

 騎士になりたいと両親に伝えてから3年経った


 そして今、僕は………


「とったぞぉぉぉぉぉ!!」

「ぶるるる!?」


 猪を狩っていた

 いや落とし穴に誘導して落としただけなんだけどね


 ・・・・・・


「はいおじさん!」


 僕はダックスおじさんに猪を渡す


「本当に取ってきたか………本当に5Gでいいのか?」

「うん!」

 ダックスおじさんから5Gを受け取る


「これで目標に届いたからね♪」


 そう、このダックスおじさんの依頼が1000件目の依頼だった

 この報酬を貰って目標金額の5000Gに到達した


 僕は急いで家に帰る


 ・・・・・


「5000G達成!!」

 僕はロックの前で5000枚ある1G硬貨を出す

 いっぱいだぁ!!


「本当に集めたんだな………」

 ロックは驚く


「これで認めてくれるんだよね?」

「あぁ、どれだけ本気か見せてくれたしな、いつ出発するんだい?」

「確か明日馬車があったよね?それで王都に行くよ」

 この世界では決まった日にちに王都から馬車がやってくる

 王都から人や物を運んだりするためだ

 そしてその馬車が王都に戻るときにお金を払えば村の人を王都に運んでくれるのだ


「明日か………なら今日は母さんに頼んでご馳走にしてもらうか!」

「やったぁ!」

「じゃあ母さんに話しておくからマーティは村の皆に挨拶してきなさい………暫く会えないんだからね」

「うん!」


 僕は家を出た



 ・・・・・


 僕は近所の人達から挨拶していく


「そうか、寂しくなるなぁ」

「いつでも帰って来ていいんだからね?」

「また肩を揉んでほしいのぉ」

「ほら、餞別のリンゴだ、持ってけ」

「王都から戻ってくるときにお土産よろしくねぇ!」

「図書館って場所があるらしいぞ?行ってみたら?」

「有名な人に会ったらサイン貰ってね!」


 皆が僕を元気付けてくれる

 いや後半なんか違ったけど



「カーツ!」

「お、マーティ!」


 僕は店の手伝いをしているカーツに声をかける


「客のおっさんから聞いたぞ、明日出発するんだってな?」

「うん!」

「そうか………」


 カーツは寂しそうだ


「あー………母さん!ちょっと出掛けていいか?」

「仕方ないね、行っといで!」

「ああ!マーティ来い」

「んっ?」


 僕はカーツについていく


 ・・・・・・


 ーーー秘密基地ーーー


 やってきたのは秘密基地

 前回の人生でネルと雨宿りしたり大人の階段登ったあそこだ


「ここに来るのも久し振りだな」

「そうだね、3年前までは毎日の様に来てたのに」


 僕がお手伝い屋さんを始めてからここに来る頻度はかなり減った


「……………」


 カーツは敷いていたシーツに座る

 僕も隣に座る


「…………マーティ、俺さ……ずっと変わらないと思ってたんだ」

 カーツが後ろに倒れこみ仰向けに寝そべる

「変わらないって?」

 僕も同じようにする

「俺とお前とネルと、大人になっても一緒に村で過ごしててさ、んでいつか俺が結婚して、お前もネルも結婚してそれぞれ子供が出来たらその子供達が俺達みたいに遊んでてさ」

「………………うん」

 前回の人生では僕もそう思ってた

 ネルと結婚して………産まれた子供を見て笑ってたらカーツが僕達をからかいに来て

 そしてカーツもお嫁さんを貰って子供を連れてきて

 そんな風に村で楽しく暮らして………


「でも変わるんだよな………お前が騎士を目指すって知ってビックリしたぞ?」

「ごめん」

「いや責めてる訳じゃないから謝るなよ………」

「………………」


 …………………無言の僕達


「あー違うな、何て言うか言いたいことが上手く言えないな」

 カーツが頭を抱える

「いつも見たいに思ったことを言えばいいと思うよ?」

「………そうだな」


 カーツが起き上がる

 僕も起き上がる


「頑張れよマーティ、俺は村に居続けるけど、お前は気にせずガンガン前に進め!んで立派な騎士になって俺に自慢させろよ?『あのマーティって騎士は俺の幼なじみの弟分なんだぜ?』ってな!」

「うん!」


 ガッ!

 僕とカーツは拳をぶつけ合った



 ーーーフルーヤ村ーーー


 カーツと別れてから僕はネルの家に向かった


 宿屋の方に顔を出したらネルの母親がいた


「ローズおばさん!」

「やぁマーティ、明日出発するんだって?」


 もう村中に伝わってるね


「うん!だから挨拶に来たんだけど………ネルは?」

 周りを見渡すがおばさん以外の気配はない

「酒場の方じゃないのかい?」

「わかった!」

 僕はおばさんと少し話して挨拶を終わらせてから酒場に行く


 ーーー酒場ーーー

 宿屋の2つ隣の建物が酒場だ

 宿屋と酒場に挟まれてる建物はネル達の家だ、明かりは点いてないから誰もいないみたい


「ダックスおじさん!」

「よぉマーティ」

 おじさんがお酒をグラスに注ぎながら返事をする


「明日出発だってな?さっきからどいつもこいつもその話題だぞ?」

「そうなの?」


 僕は酒場を見渡すと


『マーティの門出にカンパーイ!!』


 さっき挨拶した近所のおじさん達が乾杯してた


「盛り上がってるね……」

「旅人にまで絡むくらいだからな」


 言われてみると見たことない人達がお酒を飲まされていた……だ、大丈夫なの?


「まあ村から騎士になるって言う奴は珍しいからな、お前とガルネクの坊主くらいだろ」

「あ、そう言えばガルネクも騎士になるんだっけ?」

 そう言えば前回のガルネクが王都に向かった日付は明日くらいだったような………

「俺としてはあの坊主が騎士になれるとは思えないんだがな………」

「最近のガルネクは昔ほど威張ってないよ?」

 確か2年くらい前から大分落ち着いたような………いや子供なのは変わらないけど………何て言うのかな、ガキ大将やっていたのが黒歴史みたいな


「マーティ、人間ってのは本質は変わらねえんだ……ガルネクの坊主は甘えたガキだ………何かしらの切っ掛けでもない限りは騎士になんてなれねえよ」


『お前と違ってな』そういうとダックスおじさんは料理を運んでいった


「…………あれ?そういえばネルは?」


 酒場を見渡すがネルの姿はない

 カウンターの裏にもいないし………


「どうした?」

 カウンターを覗く僕にダックスおじさんが声をかける


「おじさん、ネルは?」

「?……宿にいねえのか?」


 おじさんも知らない?


「ちょっと探してくる!」


 僕は酒場を飛び出した

 頭の中で嫌な想像をしてしまう

 まだ見かけてないけど山賊とかは村の付近にいるはずだし……捕まってるのかもしれない


「どこ?どこにいるの!?」


 村中を探したけど見つからない

 秘密基地にも行ったけどいない


「…………まさかまさかまさか!?」


 本当に捕まってるとかないよね!?



 僕は必死に探す


 ・・・・・・・・

 夕方、空が赤くなった時



「ネル………」


 やっと見つけた

 ネルは森の奥にある湖にいた


「マーティ………」


 湖に足を浸していたネルは僕の声を聞いて振り返らずに僕の名前を呼んだ


「心配したよ」

「ごめん……」

「どうしたの?」

「別に何もないよ………」


 僕はネルに近付く

 ネルの左側に座ったらネルは僕から顔をそむけた


「ネル?」

「………なに?」

「どうして僕から顔をそむけるの?」

「……………マーティの顔を見たくないから…」

「………僕、何かしちゃった?」

「なにもしてないよ?でも………今は見たくないの」


 ………あれ?僕、嫌われちゃった?


「マーティ……明日出発するんでしょ?」

「うん………」

「そっか…………」

 ネルは黙る


「ネル………」

「なに?」

「こっち見てよ……」

「やだ」

「君と顔を合わせて挨拶したいんだ…」

「……………やだ」


 ……………


「僕、嫌われちゃった?」


 不安になりながら僕は聞く


「そんなことないよ………」

「じゃあなんで僕を避けるの?」

「………………」

「ネル……」

「…………って」

「んっ?」

「だって………顔見たら我慢できないもん!!」

「我慢?」

「……………」


 何を我慢するの?僕への不満?


「我慢しなくていいよ?何か僕に不満があるならガンガン言ってよ!」

 ネルを見る


「………………マーティ」

「お願いネル、こんな状態で別れるなんてやだよ?」

「…………………っ!」


 クルッとネルが僕を見た

 僕もネルの顔を見る…………泣いてたの?眼が真っ赤だ


「…………マーティ………………うっ!うう!」


 ネルは僕の顔を見ると泣き出した


「ネル?」

「やだよぉ!マーティと離れたくないよぉ!!」

「………ネル」


 ネルが僕に抱きついた


「マーティの事、ひっく、応援、したいけど!でも、寂しいんだよぉ!マーティが明日から、いないんだって!うっく!やだよぉ!うわぁぁぁぁぁぁん!!」


 ネルが泣く

 ここまで言われて僕は気付いた

 ネルがずっと我慢してたことに

 僕はネル達を山賊から守るために騎士になるけど、ネル達はそんなこと知らないんだ

 ネルからしたら僕は村から出ていくだけにしか見えないんだ


「ネル……」

「うっ、ひっぐ、こうなるから、我慢してたのに………ひっく」

「………………」


 僕は考える、ネルを泣かしてまで騎士になるべきなのか?

 今からでも騎士になるのなんてやめて村で暮らしてたらいいんじゃないか?

 山賊がいつ襲撃するかだいたいわかってるし

 その時が近付いたら傭兵を雇うとかして防げばいいんじゃないか?


 …………………


 僕の脳裏に浮かぶ映像

 焼ける村

 殺された家族や友人

 目の前で凌辱されるネル

 動けない自分

 …………その時の僕の心を満たす憎しみの気持ち


 …………………違う、傭兵を雇って防ぐとかじゃない、僕が守りたいんだ

 村の皆を、僕の家族を

 そして…………

 愛する人を

 僕の手で………


 僕は騎士にならなきゃ駄目だ

 だから僕は明日出発するんだ

 でもこのまま泣いてるネルをほっといて出発なんてできない………………………



「…………ネル」

「ぐすっ、うぅ、ひっく」

「ネル聞いて」

「………マーティ?」


 僕は泣いてるネルを離して眼を合わせる

 ネルの眼を見ながら僕は言う


「ネル、僕は明日出発するよ、騎士になりたいから」

「うん………ひっく」

「それでね、立派な騎士になってね………君を守りたいんだ」

「私を?」

 ネルがキョトンとする

「うん、君を守りたいんだ、その為に僕は騎士になって強くなりたいんだ……」

「でも………最低でも3年は離ればなれでしょ?騎士になったら村に戻るなんて………」

「うん、騎士になったら多分王都で暮らすと思う………」

「だったら」

「だからさ、迎えに行くよ」

「………えっ?」

「君を迎えに行く、立派な騎士になったらネルを迎えに行くから一緒に王都で暮らそう」

「えっ?そ、それって………その………」

「うん、プロポーズ♪」

「っ!!?」

 ネルの顔が真っ赤になる


「僕はネルが好きだからね!この思いは消えないよ!あ、でもネルが僕の事好きかどうかわからないから一方的過ぎるかな?」

「そ、そんなことないよ!!わ、私もマーティの事………好きだから………」

 赤い顔で僕の眼を見て答えるネル


「じゃあ約束だね♪」

「う、うん!」

 うーん………何か渡したいな……婚約指輪みたいな………

 あ、そうだ!


「ネル、これあげる♪」

「これって………木の指輪?」


 9歳の時にお手伝い屋さんの仕事をした時に作ったやつだ

 魔除けとしてずっと持ってたやつ


「ほら、結婚の約束をするときに指輪を渡すでしょ?本物と比べたら凄くショボいけど」

「ううん!凄く嬉しいよ!」

 ネルは指輪を見る

「マ、マーティ………付けてもらっていい?」

「うん♪」

 僕は指輪をネルの左手の薬指にはめた

「……………♪」


 ネルは指輪を嬉しそうに見ている


「これでもう大丈夫だよね?寂しくないよね?」

「寂しいよ……でも、うん、私………待ってる……」

 ネルが僕に抱き付く

「約束だからね?」

「うん約束………」



 僕とネルは抱き締めあう………

 僕とネルが村に戻ったのはすっかり夜になって村の皆が僕達を探しに行こうとしていた時だった

 凄く怒られた………






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