表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/52

青龍の鱗

 夏の長い日がようやく傾き始めた。食堂を出た一行は、ラセルの店に寄ってお茶をご馳走になった後、ラセルと一緒にのんびりと市場見学をしながら、ラセルのうちを目指して歩いていた。ラセルは古くから賢者たちが懇意にしている大商人で、海産物、果物などの食物、衣類、木材からラクレス鉱石など幅広く扱っていた。


 「ハリマ、本当に申し訳ございません。お役に立てずに」先頭を歩いている恰幅のいい中年のサモ人がハリマに言った。色艶のいい顔がテカテカしている。この暑い中、金の刺繍を施した青い上着を着込んでいるが、汗ひとつかいていない。


 「ラセル、気にしないでください。それは商売上のこと。注文が入れば応えるのは当然です」

 「いや、商人たるもの、いつでもお客様のご要望に応えられるようでなければ、商人とは言えません」

 「直前に注文が入ってしまったのでは仕方がありません」

 「このようなことは初めてなのですが…つい先日ジンガから急に大量の注文がありまして…」

 「大量の注文とは?」

 「それが、200頭です。とてもうちでは捌ききれないものですから、あるだけ買って行きました」

 「ジンガから?戦でも始めるつもりですか」エンユウが言った。

 「もしかしたら、その足でラジルまで馬を求めて出かけていったかもしれません」


 「そうなると10日待っても、ラジル馬が手に入らんかも知れんな」エンユウは眉根を寄せた。

 「いや、ジンガの連中はキエト山の東を通るルートで行くはずです。こちらは連中が知らない西を通りますから、連中が8日かかるところを5日で行くことができます。連中よりは早く到着するはずです」ラセルは笑みを浮かべて自信たっぷりに言った。浅黒い顔を綻ばせると真っ白な歯が覗いた。


 「急いでもらえるのはありがたいが、そのルートは危険ではないのか」ラセルの背後からエンユウが言った。

 「なんの、我々は山道はなれておりますので、心配は無用です」

 「ならばよいが…無理をさせてけがでもしたら申し訳ないからな…人も、馬もな」


 「そう言えば」エンユウが続けた。「なんと言ったか、あのいかにも胡散臭い男は」

 「は?誰でございましょう」

 「なんと言ったかのうゴシマ、先ほどお主が連れてまいった男は」エンユウはすぐ後ろを歩いているゴシマのほうを振り向いて言った。

 「な、何でもナーガという男であったかと…」ゴシマは額から流れる汗をぬぐいながら言った。

 「そうそう、ナーガとか言ったな、なんでもその男はほんの数時間でラジル馬を少なくとも5頭集めてみせると言っておったぞ」

 「ラジル馬をでございますか」ラセルは鼻で笑った。

 「いかにも、自信たっぷりに言っておった」


 「それはそれは飛んだ災難でございました。その男はインチキ武具屋でございましてな、しょっちゅう、揉め事を起こしている有様で」ラセルの話を聞いてゴシマは身のすくむ思いだった。武器がインチキだったことはわかっていた。なのになんだってあんなインチキ商人を連れてきてしまったのか、いまさら後悔してもどうしようもなかった。すがるような視線をトシに投げたが、トシも口を尖らせ、心底困ったような顔をしている。


 「そんなことだろうと思っとったわ」

 「しかし、賢者様たちにまでご迷惑をかけるとあっては…。これは一度厳しく注意しなければなりませんな」

 「それではあの男がラジル馬を連れてくることはありえんのだな」念を押すようにエンユウが言った。

 「万に一つもございません。ラジル馬はおろか、ストラ馬やラビス馬すら用意できますまい。断言いたします」2人の話を聞けば聞くほど、ゴシマは小さくなっていった。


 「しかしどうしてウカルのことまで知っておったんじゃろうな」横からクシマが割って入った。

 「父親から聞いたと言っていました」ハリマが言った。

 「父親はなんでそんなことを知っておったのか」クシマは首をかしげた。

 「口からでまかせに決まっとる」エンユウが言った。

 「ウカルなんて知らなきゃ出ないじゃろう」クシマが言った。後ろでハリマが大きくうなずいている。


 「クシマ、あの男の言うことなどお気に止めても無駄にございます。札付きのトラブルメーカーでございます」ラセルが言った。

 「そもそもお主はウゴ族のことを気にしすぎなんじゃ」エンユウが言った。2人をよそにクシマはまだ一人考え事をしている。


 ようやく人どおりも落ち着き、いくつかの店は早々に店じまいを終えていたが、まだ多くの店が開いている。めったに市場に来ることのないバラキたちはまだもの珍しそうにあちこちの店を物色しながら歩いている。ラセルの家で数日を過ごすことになるであろう一行にとって、急ぐ理由は何もない。ゆるゆると思い思いの店に立ち寄りながら、少しずつ歩を進めた。そんな中でもゴシマとトシは人外の気配を確認しながら慎重に歩を進めていた。


 「いや、お待たせして申し訳ない」一行に後ろから声をかけて来たのは、クリスだった。これでもかというほどの大きな青い羽根飾りの付いたまぶしいほどの白い帽子を斜にかぶって満足げな笑みを浮かべている。「いいでしょう。探してたんですよ、こういうの。ほら、鍔の部分がこう沿って、端かクルンと丸まってるのが、今はやりのストラ風って奴で、加えてこの羽根はルリコン。ここまで大きいのは初めてですよ」


 一行はその帽子のあまりの派手さ、大きさに言葉を失っている。派手な帽子をかぶったクリスは宮廷画家の描いた肖像画のようだ。クリスは脱いだ帽子をシゲシゲと眺めながら「さすがはシュノン。こんなにアッサリ見つかるなんて」と言ってひとり悦にいっている。


 「まさか、その帽子をかぶっていくつもりじゃあないでしょうね」ハリマが言った。

 「えっ」

 「そんな帽子をかぶってごらんなさい。奴らの格好の目印になってしまいます」ハリマに言われてクリスはしばし黙り込んだ。そしてなんとも悲しげな表情を浮かべながらも「わかりました、返してきます」と言って、トボトボと元の道を戻って行った。


 「少し気の毒なようですが」後ろ姿を見ながらエレナが言った。

 「エレナ殿、そんなことを言ってはいけません。目立つようなことは極力避けなければ。あの帽子をかぶって行こうという方がどうかしています」ハリマが厳しい口調で言った。


 しばらく行くとテントが並んだゴチャゴチャとしたエリアを抜けて比較的大きな石造りの店舗が並んだエリアに出た。道幅も広くなり、人混みもこれまでに比べ落ち着いている。


 「ふう、一段落じゃな」エンユウが言った。

 「しかしすごい人ですのね」フードの中からエレナが言った。

 「まだ、過去形で語るには早いかもしれん」クシマが言った。

 「なぜじゃ」エンユウが言うとクシマはニコリと笑って前方をチョンチョンと指差した。


 一際大きな店舗の前に黒山の人だかりが見えた。なにやら珍しい物でも見えるのか、後ろに並んだ者はなんとかして見ようと背伸びをしている。


 「ちょっと、見てくらあ」バラキは小走りに走って行った。そして同じように人だかりの後ろに並んだ。しかし思ったよりも人が多い。くわえて、よりにもよって一番後ろで見ている男がカインのような大男で、その壁のような背中が邪魔をして、背伸びをしてもピョンピョン飛び跳ねてもまったく見えない。


 「わりいな、ちょっとどいてくれ」大男の背中をグイと押したが、巨大な体はビクともしない。逆に、男が少し体をかがめたので、象のような尻にバインとはじかれてしまった。


 「ちょっとどいてくれよ」バラキはむっとして、強引に前に進もうと、背中を思い切り押した。すると大男が「おい、押すなよ」と丸太のような腕でバラキを突き飛ばした。押されたバラキは勢いあまって尻餅をついた。「こんの~」顔を真っ赤にして腕をまくりながら、後ろの大男に飛びかって行こうとした。


 「このばかもん」エンユウが後ろから杖でバラキの頭を叩いた。「痛えな、爺さん、何すんだ」頭を抑えながらバラキが言った。

 「おとなしく順番を待っとれ」エンユウが言うと、バラキはぶつぶつ言いながらも、後ろに並んだ。圧迫感のある背中をイライラと見つめながら、人がいなくなるのを大人しく待った。ようやく大男がいなくなると目の前に現れたのは青い大きな楕円形の物だった。直径は3メートルというところか。


 「なんだ、こりゃ」バラキは首をかしげた。よく見るといくつもの筋が中心から年輪のように広がっている。厚さもあり見るからに固そうだ。縁の部分は黒ずんでいるが、少し内側は目の覚めるような濃い青をしている。内側に行くにしたがってだんだんと青が薄くなり、代わりにうっすらと緑を帯びて真ん中は鮮やかなエメラルドグリーンになっている。あまりの美しさにバラキは思わず手を伸ばした。


 「おい、そいつに触ると金をとられるぜ」バラキのすぐ後ろの男が言った。男は親指で横に貼られている注意書きを指差した。そこには「貴重品につき絶対に触るな。触ったら10ヒコサの罰金を払うこと」と大きく書いてあった。

 「なんだよ、触っただけで10ヒコサとは随分と法外じゃねえか」

 「まあ、そんじょそこらじゃお目にかかれない代物だ。しかたねえやな」後ろの男が言った。


 「ずいぶんな人ですね。あれは何を見てるんですか」ハリマがラセルに言った。

 「青龍の鱗です。つい最近、ラジルの北東部で見つかりましてな」

 「青龍の鱗、それはまた珍しいものですね」

 「そうですね、私も初めて見ました」

 「初めて?あなたの家には、確か黄龍の鱗が飾ってあったのではなかったですか」

 「ですが、青いほうは初めてです」ラセルはいたずらっ子のような笑みを浮かべた。

 「なるほど」ハリマは答えるように口角を上げた。「めったに見られない代物です。私たちも見てきますか」と言うと、カインを除く一行は人だかりの後ろに並んだ。


 「で、一体コイツはなんなんだ」バラキが後ろの男に聞いた。男は答える代わりにまた注意書きを指差して見せた。するとさっきの注意書きの前に、「青龍の鱗、採取場所 ラジル北東部」と小さく書いてあった。よほど触られるのが嫌なのか、注意書きの字の方がずっと大きい。


 「青龍の鱗…」バラキはエンユウがついさっき話してくれた話を思い出していた。そしてこの大きな鱗を無数につけ、稲光をはらんだ黒々とした雲に潜んだ怪物を思った。バラキは思わず唾を飲み込んだ。

 皆、その大きさに圧倒され、口々に驚きの声を上げながら、騒がしく見物をしている中、バラキのすぐ横に立っている緑色のシャツを着た色黒の男は瞬きもせずに鱗を見ている。茫然として口は開きっぱなし、顔色は悪く、何かを思い出しているのか、時折ブルブルッと震えている。皆が面白半分に見ているのに対して、明らかに様子が違う。


 「どうしたい、兄ちゃん。あまりの大きさに声も出ないってか」バラキが茶化すように言った。

 「…俺、見たよ」男は誰に言うでもなくぼそりとつぶやいた。

 「見たって、何を」右手の小指で耳をほじりながらバラキが言った。

 「青龍」

 「へえ~」バラキは話半分に聞きながら、まだ耳をほじっている。


 「どこで見たんだ」いきなりバラキのすぐ後ろで聞いていた男が2人に割り込むようにして大声で聞いた。バラキは驚いて迷惑そうにその男をにらんだ。

 「どこで見たんだ、青龍」バラキのことなど構わず、男は同じ質問をした。周りの人たちもこのやり取りに気づき、ざわめき始めた。

 「え、青龍を見たのか。どこで」バラキはようやく気付き、食い入るように横の男を見た。


 「……ラジル」しばらくして消え入るような声で男が言った。

 「あ、どこだって」バラキが耳に手を添えながら聞いた。

 「ラジルだよ」面倒くさそうに男が答えた。

 「で、どうだった」

 「…どうだったって?」男は少し考え込むような仕草をした。周りの人たちは聞き耳を立てて、どんどん近づいてきている。「はっきりとは覚えてないんだ」時間をおいて男が答えた。


 「なんだ、それ。思い出せよ」バラキが言った。

 「あんな怪物、桁が違いすぎて…気付いた時はふっとばされてちまった」

 「なんでもいい、教えてくれよ」せかすようにバラキが言った。


 「…ほんの2カ月前のことだ」長い時間をおいて男はようやく話し出した。「俺は馬車でラバス街道をラジルからザビアに向かっていたんだ。マガタの市場で買った果物を満載してな。ポカポカと暖かい日だった。だまっていてもうっすらと汗をかくような。手綱を握りながら俺はザビアでの商売のことを考えてたんだ。マガタの果物は有名だからな。絶対にうまくいく。商売のことを考えるとつい顔がにやけちまったよ。


 そんな時よ、ふと遠くの切り立った崖の上で何かが動いたような気がしたんだ。なんだろうと思って目を凝らして見ると、そいつはコウモリのような羽をした怪物だった。一瞬そいつと目があった。まだかなりの距離があったが、確かに奴はその瞬間動きを止めてこっちを見ていたんだ。すぐさまこっちに向かって飛んでくるじゃねえか。後にも先にも走っているのは俺の馬車だけだ。終わったと思ったよ。怪物はどんどん近づいて来る。近づいて来るにつれてそのあまりの大きさにビックリした。これじゃ、馬車ごと飲み込まれちまう。本気でそう思うほどでかかったよ。


 真っ赤な口を大きく開けてあと数百メートルというところまで迫ってきた。動こうと思っても動けねえ。その時よ、突然巨大なハンマーで叩かれたような衝撃を受けたのは…」男はそのまま、固まったようにおし黙ってしまった。身を乗り出すように聞いていた周りの男たちはじっと答えを待ったが、答える様子はない。


 「続きはどうした」いつの間にか、バラキの前に陣取ったゾラが言った。羊皮紙を手に何かを書き加えている。まだ目は充血しているが、すっかり元のゾラに戻っている。

 「おっ、おっさんも来たのか」バラキのことは無視してゾラはじっと男の返事を待った。

 男はグビリと唾を飲み込み「……奴は悪魔だ」と言った。しかし、なかなか次の言葉が口をついて出てこない。いつの間にか男の背中は汗でびっしょり濡れていた。短くはない沈黙の後、再び訥々と話し始めた。「俺は馬車ごとふっ飛ばされた。そして体をしこたま地面に叩きつけられた。…馬車を襲ってきたコウモリのような怪物はいなくなってた。その代りうっすらとした意識の中で空に浮かんだ怪物を見た。大きすぎて初めはなんだかわからなかった。ただ、いつまでも轟音が鳴りやまなかった。かなり遠くへ行ってから、ようやくそれが龍だと気付いた。青黒い体をうねらせ、空を引き裂きながら天に向かって登って行く姿はまさに悪魔だった」何かに取りつかれたように話した男は額の汗を右手で拭った。そしてゆっくりと続けた。「結局、俺は助けられたのかもしれねえ。多分最初襲ってきた怪物は、青龍に食われちまったんだろう。でもそれ以来、あの道は通れなくなっちまった。また奴が現れるかもしれないと思うとな」


 「大きさは?」ゾラが青い顔をして立っている男に言った。焦点の合わない目で鱗を見ている男はゾラの存在に気付いていない。

 「大きさはどうかと聞いておる」声を強めてゾラが言った。

 「あ、ああ、大きさね…」男は額の汗を再び拭うとたどたどしくゾラの質問に答えた。ゾラは男の様子に構うことなく、次々に質問をぶつけていた。


 いつの間にかバラキの周りにはハリマたちが集まっていた。カインだけはつまらなそうに一行の見物が終わるのを人だかりの後ろで待っている。


 「ところでこの店は、この鱗をどうするんでしょう」帽子を返してきたクリスがクシマに聞いた。

 「クリス、いつ戻って来たんじゃ」

 「いや、ついさっきです。すぐそこの店でしたから」その頭には小ぶりの白い帽子が載っている。帽子には小さな青い羽根飾りが付いている。

 「…お前は…、どうしても羽根飾りがついていなければ気がすみませんか」ため息混じりにハリマが言った。

 「えっ、これでもダメですか」

 「まあ、かなり目立たなくはなりましたが…」ハリマは半ばあきれている。

 「よかった」

 「決してよくはありません。好ましくはないけれど、ギリギリ許せる範囲だと言っているのですよ」


 ハリマの剣幕にクリスは助けを求めるような視線をクシマに投げた。クシマはニンマリと笑いながら言った。「この鱗はな、売るんじゃよ。何しろ高価なものだから、そうそう売れんがな」

 「高価というといかほど…」ハリマの刺すような視線を気にしながらクリスが言った。

 「そうだな、この大きさでも三千ヒコサは下るまい。なにせ、三龍の鱗は一万年に一枚しか剥がれないと言われておる」

 「さ、三千?一万?」クリスが驚きの声を上げた。

 「さすがにクシマですな。店主に聞いたら三千三百で売ると言っておりました」ラセルが言った。

 「買う者がいるんですか」

 「なにせ、シュノンは世界中から商人が集まるからな。商売で手にした莫大な富を持て余している者もおる」


 「それにしちゃ、不用心じゃねえか。こんなところにかざっておくなんて」バラキが口をはさんだ。

 「そうでもない。周りを見ればわかる」クシマに言われて周りを見渡すとところどころに屈強な男たちが立っていた。時折鋭い視線を鱗に向けているのがわかる。

 「ヒュー」クリスが口笛を鳴らした。


 「そんなことより、コイツを買ってどうするんだ」バラキが言った。

 「多くは飾るためだが、中には実用として買う場合もある。三龍の鱗は何よりも固く、丈夫だからな。シュロムの三角城を知っておるか」

 「あの難攻不落の三角城ですな。なんでも城門が有名と聞いたことがあります」ゴシマが言った。とても知っているとは思えないバラキだったが、ウンウンと適当に相槌をうっている。


 「そうじゃ。またの名を赤龍門と呼ばれ、文字通り赤龍の鱗でできておる」ラセルを含め、一同は驚きの声を上げた。

 「あの大手門は確か、高さが10メートルは下らなかったと思いますが…」ゴシマが言った。

 「さよう、確か12メートル程じゃったか。あれは1枚の赤龍の鱗じゃ」

 「そんな大きな鱗もあるのですか」ゴシマが驚きの声を上げた。

 「ある。この鱗などはかわいいほうじゃろう。赤龍門はどんな破城槌をもってしても傷一つつけることすらできんといううわさじゃ。それほど堅牢にできておる」

 「それほど堅牢ならば…」ハリマが口をはさんだ。「もしかすると…人外に対する武器としても有効なのではないですか」

 「もちろんそうじゃろうが…、三龍の鱗は堅牢なゆえに細工に非常に時間がかかるのじゃ。だから赤龍門は城が出来上がってから、300年たってから取り付けられたそうじゃ」

 「さ、300年?」

 「さよう。三龍の鱗を何かに加工することは極めて難しい」

 「光の民の武器以上に…」いいかけてハリマはハッと口を押えた。ゾラはまだ緑のシャツの男を質問攻めにしている。ハリマは続けた。「ウゴ族手組の武器以上に幻と言うわけですね」

 「そうじゃ。わし自身、手組の武器はこれまでいくつも見ておるからな」クシマは遠い昔に思いをはせながら静かに空を仰いだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ