6話 レベル上げをしよう
朝。綺麗な朝日が昇っている。異世界でも東から昇るのかな、としょうもないことを考えていると、
「ふぁ〜。お主、起きるのが早すぎやせんか。」
朝は強い方だし、日本では、この時間帯にいつも起きていたから、体が覚えていた。そんなことないですよ、と言いながら朝飯を作り始める。バル爺はまだ眠いようだ。
「今日は魔法を昼から教えるぞ。それまで自由だが、危険じゃから、外には行くなよ?」
「分かった。」
魔物でもいるんだろうか。まあ、魔法を教えてもらえるんだからいいや。でも、暇なので、魔力を循環させることを練習し続けた。
「まずは、第一階位魔法からじゃ。〈ファイヤーボール、ウォーターボール、ロックボール、ウインドボール〉」
直後、バル爺の手からそれぞれの属性の塊が飛んで行った。
「これくらいはできなければな。今日からこれを練習するといい。」
「分かったよ。バル爺。」
「修行中は師匠と呼ばんか。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから二週間たった。
「でき………た……。」
ようやく四つ同時に出せるようになった。土と水は楽だったが、火と風がきつかった。なんども練習したから最大魔力量もふえている。
「同時にできるとは……面白くなってきたわい。よし、今日は魔物を狩りに行くぞ。」
「え、でも……いいの?」
「ファイヤーボールはできるんじゃろ?なら大丈夫じゃ。実践するのが一番いいからの。」
返事も聞かず勝手にバル爺はスタスタと歩き出した。置いていかれるのも嫌なので、慌ててついて行く。
「ここらあたりがちょうどいいかの。」
森を少し入ったところで、止まった。ここは、弱い魔物しか出ないらしい。ゴブリンやスライムなどだ。
この世界にいる冒険者達にとっては雑魚なのだが、日本で生きていたユウトにとってキツイものがあった。
生きているものを殺すということに、どうしても嫌悪感を抱いてしまうのだ。だから、
「来たの。」
「ゴブリン………」
「はようせんかい。」
「分かった……」
だが、なかなか心が決まらない。そうしているうちにゴブリンが近寄って来た。
「グギャァ!」
「く、くそ!ファイヤーボール!」
すると炎の塊が飛んでいき、ゴブリンにぶち当たった。ゴブリンはしばらく苦しんでいたが、すぐに小さな石を残して死んで行った。その光景を俺は呆然と眺めることしかできなかった。
「ほれ、いつまでほうけとんじゃ。次行くぞ。」
と言われて背中を軽く叩かれた。彼なりの労りだったのだろうか。
「………分かった。」
そしてレベリングは続いて行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『レベルアップしました!』
何度目かの声を聞きながら、俺は汗を拭った。もう夕方だった。
「もうそろそろ終わろうかの」
バル爺はそう言って立ち上がった。最初はバル爺も手伝っていたが、次第に見るだけになっていった。
最初と比べかなりレベルアップした。ステータスはこんな感じだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ユウト=ゴジョー 10歳
レベル 11
HP 102
MP 98
TR 65
DEX 67
AGI 70
INT 69
HIS 64
LUK 66
【スキル】
《農業士》
・鑑定(レベル2)
・大地魔法(レベル2)
・水流魔法(レベル2)
・作物成長補正
・農作業効率化
【称号】
《 転生した農業士》
・フレイアの加護により、スキル【農業士】の効果が1.2倍
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
バル爺が、成長補正の魔法をかけてくれたので、かなりレベルが上がった。もうここら辺の魔物は相手にならないだろう。
「そうだね。もう終わろーー『お迎えに上がりました………。ユウト様………。』………誰?」
振り返るとそこには文字通り、「悪夢」が立っていた……。