3話 大賢者の実力
ヴェロムおじいさんの家に行く間、何を聞こうかと思っていると、ヴェロムおじいさんが………めんどくさいな。確かバルト=ヴェロムって名前だったよな。ならバル爺でいいや。で、そのバル爺が、
「フレイア様の恩恵じゃからか。農業スキルばかりなのは。なるほどの〜。」
と、独り言を言っていた。フレイア様だからってどういう意味だ?分からないから純粋に聞いてみた。
「どういうこと?」
「ん?ああ、フレイア様は生命の神じゃ。フレイア様は生命、つまり植物や、動物などを司っておる。
だから、お主も農業スキルなんじゃろ。それに、フレイア様は転生がおこなえる数少ない神の一人じゃ。他にも英雄神や神王、邪神も行えるぞ。」
英雄神って絶対呼び出すのってアレじゃん。
「英雄神が呼び出すのって勇者?」
「なんじゃ、お主知っとったんか?」
ですよね〜。勇者ってやっぱいるのか。
「勇者か〜。会ってみたいな〜。」
「……………そうじゃの。会えるといいの。」
何かあるのか?勇者がいないとかか?
「勇者いないの?」
「ああ。数百年に一度、邪神が魔王を誕生させる時に召喚されるんじゃ。もうすぐ魔王が誕生する時期じゃからたぶん召喚されるがな。だがな………まぁ、お主は会えんよ。」
「なんで?」
「それは………。友だちでもないのに近づかせるわけにはいかんじゃろ。な?」
「う、確かに。」
勇者ともなれば、重要人物だ。暗殺の可能性もあるから、簡単にはいかないだろう。なんとか話しだけでも出来ないかな……。
「まあそれだけじゃ無いんじゃがな………。(ボソッ)」
「ん?なんか言った?」
「いや、何も言っておらんよ。」
「そう?」
なんか聞こえた気がしたんだけどな……?まあいいや。そろそろ魔法のことについて知りたい!この世界にはリアルで魔法が使えるらしい。スキルに、〜魔法とかがなんこかあったから使ってみようとしたが、ぜんぜんダメだった。何か手順があるのだろう。
「ねえねえ、魔法ってさどうやって『待てやゴラァ!』……え?」
後ろから不意に声がした。振り返ってみると、
「金目のものを置いていけ。そしたら命だけは助けてやる。」
といかつい顔をした男たちが、ナイフを取り出しながら言ってきた。ヤベェ。初めてリアルで盗賊に出会った。まあ、こんなこと考えてる暇なんて無いんだけど。こんなに俺が余裕なのは、隣にいるバル爺のお陰なんだろうな。余裕の笑みを浮かべて相手をみている。
「魔法と言ったな。見せてやるわい。」
「えっ? ちょっとま………。」
「数多の氷雪よ我の言葉に呼応し、敵を穿て!〈砕刃凍風〉!」
「「「「なっ!」」」」
尖った氷のかけらがい大量に作られ、猛スピードで盗賊達に向かっていく。何人かは躱したが、残りの盗賊達は、かけらでめったざしにされている。初めて人の死体を見た。吐きそうだ。だがここで吐いたら、バル爺の邪魔になるため、我慢した。あの魔法を避けられたのは、結局二人だけだった。その二人も息絶え絶えだったが。
「もう少し粘ると思ったのにの〜」
とバル爺は言った。かなりバル爺の中では弱い魔法らしい。バル爺ってどんだけ強いんだ?盗賊達がバタバタ倒れていく。
「小僧!今のが範囲魔法じゃ!次は強力なのをいくぞ!」
「なっ!撤退しろぉ!!」
「お、おう……。」
あかん。バル爺、ハイテンションモードになっちった。どうしよ。鑑定でもしてみるか。鑑定すると、力が抜けていく感覚と同時に、情報が、浮かび上がってきた。リーダー格の盗賊Aが、
サム 35歳
レベル39
幹部っぽい盗賊Bが、
ダスト 33歳
レベル36
だった。鑑定がレベル1なので、名前、年齢、レベルしか分からないが、格上ということが分かる。それを簡単にあしらうなんて……。数分後、俺とバル爺以外生き残っている人はいなかった。
「………これはやりすぎじゃない?」
「お主の世界ではどうか知らんが、命を狙うのだから殺されても仕方あるまい。こいつらも、それを覚悟しているからな。」
理屈では納得できても感情が納得しなかった。
「まあ、そう怒るな。慣れていけばいい。それよりついたぞ。」
目の前には、こじんまりとした、しかし穏やかで綺麗な家があった。
なんとか大賢者の家についたようだった。