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電子世界のフォルトゥーナ  作者: 有永 ナギサ
4章 第4部 それぞれの想い

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183話 上層部の思惑

  咲を追ってばかでかい木々が立ち並ぶ、森林地帯を進んで行く。空がどんより曇っているのもあるが、木々によって光がさえぎら周囲はかなり薄暗い。そのためなにかがひそんでいそうな不気味さがあり、結月がいたらきっと怖がっていたに違いなかった。

 そんな森林地帯を歩いていると、徐々に建物の姿が。そして。

「森林に浸食(しんしょく)された街並み……。聞いてはいたけど、クリフォトエリアの地形ってすごいんだね。こんなの現実のどこを探してもなさそうだよ?」

 カノンは現実離れした周りの景色に、思わず息を飲む。

 森林地帯を進みたどり着いたのは、廃墟と化した市街地。ここですごいのは街中のいたるところに樹木(じゅもく)()(しげ)り、(つた)が建物を浸食していること。まるで森の中にぽつりとある、ち果てた遺跡状態。もはや人類が滅び、それから何百年たったあとといってもいい光景であった。

「ははは、ほかにも砂漠(さばく)や湖、さらには地盤沈下した所にある都市だってあるぞ。地形がランダム配置の分、変わったところなんて探せばいくらでもだ」

このような場所はクリフォトエリアではめずらしくなく、バリエーションは様々。森林、砂漠、湖、地中、氷雪といった様々な地形はもちろん、そこに街や別の地形が重複していることもあるのだ。なので本来ではありえない光景が多々あるといっていい。

「クス、ここでは非現実的風景を観光するといった、楽しみ方もあるそうですよ」

「わぁー、冒険心がくすぐられるってやつだね!」

 カノンはまるで子供のように目を輝かせながら、物珍しげに周囲を見渡す。

「クリフォトエリアの地形はかなりいい加減。きちんと区切らず重複するようにしてるから、こんなまざった場所が出来上がる。しかもゲームを参考にしたのか、たまにダンジョンみたいなのが設置されてることもあるし」

 複雑な構造をした遺跡や神殿(しんでん)みたいな、明らかにダンジョンといっていい代物もあるのだ。しかも中には巨大な工場施設や科学プラント、軍事基地といったものまでダンジョンふうにし、配置しているのであった。

「わぁー、それゲーム好きの結月が喜びそうなんだよ。レージくん、今度みんなで行ってみようよ!」

 カノンはレイジの手をとって、にっこり笑いかけてくる。

 結月はゲーム好きなそうなので、確かに喜びそうだ。情報屋のファントムあたりに聞けば、いい場所を教えてくれるだろう。

「ははは、そうだな。ところでリネット。ゆきのように割り込んで、向こうがなにをやってるか調べられないのか?」

「やってもいいけどばれる可能性大。逃げられてもいいならやるけど?」

 リネットはオオカミ型のガーディアンごしに、忠告してくる。

「――う……、それは困るな……」

「向こうが格下ならバレずに(さぐ)れるけど、同レベル。しかもただでさえ警戒してるとなれば、いくらあたしでもね。だからここはステルス状態で近づくのが得策。勘付かれないように、ほかの改ざんのサポートは止めて」

 今ここら一帯は、敵の改ざん網で支配されている。なので下手に手を出せば、すぐに察知されてしまうのだ。もちろんウデ次第では、相手に気づかれないまま干渉することができるだろう。しかし今回ばかりは相手が悪い。リネットいわくSSランクの電子の(みちび)き手ゆえ、付け入る(すき)がないというわけだ。

「難しそうですが、調べるに関しては相手を強制ログアウト。または調査データを書き込んでいるメモリースフィアを奪うのが、よさそうですね」

 美月はアゴに手をやりながら、思考をめぐらせる。

 改ざんで裏から調べられないなら、正面から行くしかない。強制ログアウトもそうだが、今回向こうは改ざんでなにかを調べているらしいのだ。となればもう一つ手段が。というのもクリフォトエリア内では、アーカイブスフィアにつながれない。よって新しくデータを追加するには、メモリースフィアに入れて自分たちのアーカイブスフィアに持っていく必要があるのであった。なのでそのメモリースフィアを奪えれば、相手がなにを調べていたのか一目両全という。

「クス、リネットはゆきさんほど、相手を出し()くのが得意じゃないですから」

「はぁ? その言い方すごくむかつく。あいつは手癖(てぐせ)がわるいだけ。真っ向からの改ざんのサポートなら、あたしに少し()がある」

 美月のいじわるそうな主張に、リネットは不服そうに抗議を。

「おや、そうでしたっけ。これはすみません」

「なにそのふくみのある言い方。そこは素直に認めるところ。ほんと美月は相変わらず性格がわるい」

「クス、これも性分(しょうぶん)なので」

 美月は優雅にほほえみ、リネットの文句を軽く流した。

「それよりリネット。この場所になにか思うところがあるんじゃないですか?」

「そうなのか?」

「まあね。ここら一帯はクリフォトエリアで(まれ)に見られる希薄(きはく)な地帯。ようはアビスエリアみたいなあいまいな場所」

 アビスエリアは空間やオブジェクトなどが不安定らしく、改ざんの干渉などしやすいとのこと。そのためアーカイブポイントなども、かなり無茶ができるとか。

「いったいやつらはなにをしてるんだ?」

「はっ、そんなの知るわけない。上層部しか知りえない、なにかがあるんじゃない。こういった場所はよく普通のエデン財団当たりも調べてるはずだし」

 そういえばゆきにもこういった場所への調査に、何度かつき合わされたのを思い出す。その調査結果は、結局なにもわからずじまい。ゆき自身今だ興味が尽きないため、ひまなときにでも調べているらしい。

「いづれにせよ、上層部側のデータを奪えればわかるでしょう。さあ、向こうの用件がおわる前に、先へ進みましょう」

 美月の言う通り、敵のデータを奪えばなにを調べていたかわかるはず。なのでレイジたちはどんどん森林地帯の奥へと、足を進めるのであった。


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