情報収集2
部屋から出た場所は二つに分かれた廊下だった。
右を向くと、複数の扉がいくつも存在する廊下が先に広がり。
左を向くと、奥の行き止まりに扉が一つだけある廊下があった。
微妙な空気と沈黙の中、左の廊下を歩いていく。
みんな顔には出さないが、どこか張りつめてる感じが伝わってくる。意味のわからない状況での情報収集に緊張しているのだ。
そんな中、沈黙を破った強者がいた。
「今、気づいたんだけどさ」
横から聴こえて来た声に振り向くと、このメンバーの中で一番の年上である『長男』さんが・・なんか「俺、ヤバイことに気づいちゃったよ!」的な、深刻そうな目で俺たちを見ていた。
燃えるような赤い髪とどこか、ワイルドと言うか、強そうなと言うか、面倒見のいいお兄さんのような感じのイケメンの『長男』さん。
俺たちはその顔を携帯の画面でしか見た事しかない。(もちろんその時の顔は今のように表情なんて作り出すことは出来ない。)
ゲームの中で接する『長男』さんを半端であっても理解していた俺たちは、明るく冗談好きの『長男』さんの見せることの無さそうな顔になにか、あったのかと心配になり『長男』さんを見つめる。
「・・俺たちさ、こんな状況になっても家族設定続けてるんだぜ。・・・すごくね」
たが、俺たちの心配をよそに『長男』さんの口からでた言葉に脱力する。・・・正直、この状況で言うことなのかと思う様な内容だった。
「ちょっと、それ今言いますか?」
「まったくです『長男』さんは・・」
一緒にいた『十一男』さんと『次女』さんも感じたらしい。何処か呆れた顔で『長男』を見ている。
でも、二人の表情は先ほどのものより比べ、緊張のようなものがなくなり、やわらかくなっている。
もしかしたら『長男』さんは、みんなの緊張が少しでも解けるように、狙ってこの空気を造ったのかもしれない。
冗談を言ったり、ふざけることしか普段はしないのに、メンバーがゲームでミスしたときはフォローしたり励ましてくれる。意外と面倒見のいい人なのだ『長男』さんは。
「確かに、みなさん家族設定守ってますよね。」
俺も『長男』さんの話にのってみる。
「『十五男』くんまで・・・」
「なにをしているのですか・・・」
そんな俺の行動に二人は呆れた顔をしていたが。やがて会話に入ってきた。
先ほどよりも穏やかな空気が俺たちに流れていた。
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廊下を歩き終え。行き止まりにあったドアを開ける。
その先にあったのは広い・・バー?のような場所だった。
「なんだ、ここ?レストランか?」
『長男』さんがの内装を見て呟く。
そこには、さまざまなボトルが棚に置いてあるカウンターがあり。その前のスペースには数人が、囲みながら座れそうなテーブルがいくつも置いてある。まさにレストランか飲食店のような内装の場所だった。
「なんでしようか?お店?それとも、店とプライベートスペースが分かれている建物なのでしようか?」
『次女』さんが入って来た、カウンターの奥にある扉を見ながら言う。
「確かに、それっぽく見えますねー」
『十一男』さんもカウンターの棚に入っているボトルなどを見ながら、『次女』さんの言葉に同意した。
俺はそんな二人を見ながらカウンターから出て、部屋中を見渡した。
広さは、俺たちがいた部屋よりも大きい。
しばらく部屋中を見回していると、カウンターやテーブルだけではなく部屋の端の壁に掲示板らしき物がかけてあるのにきがついた。
掲示板らしきものに近づく。
そこには数枚の紙が貼ってある。
紙には見たことも無い文様が、さまざまな大きさで書かれてある。これは文字だろうか。
しばらく見ていると、数枚の紙のなかに一枚だけ他の紙とは異なったものがあるのに気がつく。
人の顔が描かれてある紙。その横にほかの紙と同じ様な文様が書かれてある。明らかに他の紙と違う。これは何なのだろうか。
「(とりあえず、後でみんなに見せよう。)」
よくわからない紙だが情報にはなるだろう。
そう考え、掲示板らしきものから顔の描かれているものと、そうではないものを外した。
掲示板らしきものからはなれ、再び辺りを見渡す。
『十一男』さんはカウンターの棚の中やその周りを調べていた。
『次女』さんはカウンターの横にある別の部屋の入口を今開けようとしていた。
『長男』さんは・・・
「あれ?『長男』さんは?」
そこで『長男』さんがいないことに気づく。部屋中を見渡すが、やはりいない。
「あれ?さっきまでいたのに」
『十一男』さんもそれに気付き辺りを見回すが、部屋には『十一男』さんと『次女』さん、俺しかいない。
「『十一男』くん、『十五男』くん、」
声が聞こえ、二人で振り返ると『次女』さんが部屋にある玄関のような大きな扉を指さしていた。