情報収集
部屋にある鏡の前に立つ。
俺の現実での姿は、日本人特有の黒目・黒髪だ。顔だって年相応で、年上の人からは可愛いと言われていたが、特に目立つような容姿ではない。
しかし今俺の目の前に映っているのは、見慣れた黒目・黒髪の平凡な容姿をもつ少年ではなく、白髪と青い瞳をもった儚い系の美少年だった。
もちろん現実での自分の姿ではない。
目の前にある自分の姿は画面越し(・・・・)ではよく見慣れた「エルラド」での俺のアバター『ハク』の姿だった。
「どうなってるんだ・・・」
「ここはどこなの・・」
鏡の中の美少年を眺めていたら、周りのざわめき・困惑の声が多くなってきた。いつの間にか部屋にいたメンバー全員が目を醒ましたようだ。
俺は鏡から目を離し、自分が座っていた席に戻る。
部屋にある長いダイニングテーブルにはギルド「ブルーウイング」のメンバー二十二人の見慣れた顔が揃っていた。
「ええと・・俺は『タツヒコ』です。・・みんななのか・・?」
お父さんがダイニングテーブルにいる二十二人を見て言った。
お父さんの言葉にギルドメンバーのことだと気付いた人は、次々に肯定の意志を表した。
「・・『三男』くん、初参加のバトルで戦ったモンスターは?」
「『四獣・エルクル』だと思う・・」
「・・『四女』ちゃん昨日、君にお願いした物、覚えてる?」
「『回復薬』ですよね・・材料も受け取りましたから、作製途中でした・・」
『お父さん』は兄弟全員に質問して本物か確かめているようだ。
そして全員の確認が終わったらしく『お父さん』の質問の声が終わる。そして全員が本物だと告げた。
「なにが、どうなっているんですか・・?」
そう口にしたのは、俺より一つ上の(・・・・)『十四男』くんだった。
「だって、おかしいじゃないですかっ、なんでギルドメンバーがこんな姿で、こんな場所にいるんですか!?」
『十四男』くんの言ったことはもっともで、みんなが疑問に思っていることだ。
そんな『十四男』くんの言葉を『お父さん』が手で制した。
「みんな(・・・)落ち着いてくれ・・・と言っても俺も落ち着いていないから人のこと言えないが・・・」
みんなと言ったのは、ここにいる全員が混乱しているのを分かっているからだろう。『お父さん』の言葉にみんなの緊張が徐々に解けていく。
「今ここにある状況だけで全てを判断することはできない。だからまずはここがどこなのか調べてみないか?」
全てを判断するのはその後でいい、と。
『お父さん』はまず、状況判断のために情報を集めることを提案した。
「この部屋に出入り口があるのは知っているよね。そこから先に行くことが出来るようなんだ。まずは四・五人のグループになってそこから先になにがあるか情報を集めないか?」
『お父さん』は部屋の隅にある出入り口を指さして言った。
情報収集に「グループで行う」ということを入れたのは、おそらく『お父さん』はこの状況にある可能性を感じているのだろう。そのための対策だろう。みんなもある程度は察しているのだろう誰もそのことには反対も無かった。
俺たちはグループに分かれた。こんなとき学校の教師の「好きな人と組んでね」と言う体育の授業のおきまりのセリフがちらつき頭を抱えるのだが、この状況ではそんなことを思い出す事も出来なくあっさりとグループは決まった。
俺のグループは全員合わせて四人で、『長男』さん、『十一男』さん、『次女』さん、『十五男』となった。