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神田司について

 神田司さんという男子について語りましょう。

 神田司、山越高校の三年生にして生徒会長、さらにはテニス部の部長。

 女子からの支持率九十五パーセント、男子からの支持率五パーセント。計百パー、つまり全校生徒の約半分もの方々から支持されている、いわゆるイケメンさんです。

 男子からの支持は『あいつの近くにいりゃあ女子がホイホイ寄ってくるぜぇ』と手ぐすね引く野獣ども、あとはBLの世界から飛び出したようなちょっと特殊な方々とのことです。

 さらに神田さんはただのイケメンさんではなく、成績もかなり優秀らしく、学年で必ず五位圏内に入るとの事です。

 イケメンで且つ頭が良い、なるほど、男子からの不支持九十五パーも頷けますね。

 ただ神田さんのステータス自慢はこれで終わりではありません。

 彼はこの山越高校の理事長のお孫さんだそうで、案の定お金持ち、お家も某鼠の城ばりにでかいお屋敷とのことです。

 そしてそんな彼を疑っているのが、次期文芸部部長の竜宮下さんです。

「ヒモくん、現在の部長はヒモくんよ。わたしの部長時代はこの前の部長会で終わったの」

 などと竜宮下さんは仰っています。なんという短過ぎる部長時代なのでしょうか。

 それはともかく、以上が神田司さんという男子についての概要です。まあ、全て竜宮下さんの受け売りなんですがね。

 竜宮下さんは、神田さんが理事長の孫だというところに目をつけています。もし工藤さんをコネで卒業させることができるとしたら、神田さん以外にいないからだそうです。神田さんが理事長に頼めば、すぐにでも工藤さんは卒業できるわ、と。

 そんなに上手くいくのでしょうか、と僕は首を傾げずにはいられませんでしたが、竜宮下さんが一度こうだと決めたらそれに従うほかありませぬ。

「神田のことを訊きたいだって?」

 放課後、竜宮下さんは部活中に早速城門さんに訊ねていました。

 城門さんは神田さんと同じ学年なので、何がしか知っていると踏んだそうです。

 それにしても竜宮下さんは眠くないのでしょうか。昨晩は午前二時過ぎに学校を出たというのに。ちなみに僕は二日間連続で深夜登校なんぞしたせいでとってもおねむであります。

「はい、どのような変態なんですか?」

 竜宮下さんの中では変態確定みたいです。

 もし神田さんが工藤さんに手紙を送ったのなら、何がしかの動機がなければいけません。


『神田司は競泳水着フェチよ。だから工藤を使って水泳部の部宝、わたしの競泳水着を盗ませる手紙なんか送ったのよ。ふむ。スクール水着でないところが渋いわ』


 などと仰っていた竜宮下さんです。どこらへんに渋みがあるのかはわかりませんが。

 しかし城門さんの答は竜宮下さんの予想、そして期待していたようなものではありませんでした。

「あの男は完璧だな。頭も切れるし性格も悪くないね。どこかのチビや筋肉野郎とは違う」

「ふむ」

 竜宮下さんがちらりと僕に目をやりました。

 おそらく筋肉野郎とは僕のことで、チビとは尚武屋さんのことなのでしょう。ええ、きっとそうなのです。そうなのですよ!

「実はアタイ、三年連続であいつと同じクラスなんだ。別に特別親しくもないし、いいとこ部長会で言葉を交わした程度だけど、でも、そうだな。女子連中があいつに夢中になる気持ちも、わからんでもないよ」

 城門さんは柄にもなく恥ずかしげに言いました。城門さんのように男気溢れる娘さんまでもうっとりさせてしまうとは。僕は男として、神田さんには学ぶべきところがあるようですね。

 でも城門さんはこうも付け加えました。

「けどまあ、変態性なんて内に秘めるもんだからな。あんな爽やか男子でも、意外ととんでもない性癖があるのかもしれないね」

「例えば競泳水着フェチとかですね」

 竜宮下さんは限定的に断定的に仰いました。

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