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僕とおばあちゃん

「はい、お弁当だよ」

「ありがとうございます、おばあちゃん」

「今日は少し曇っているね」

「そうですね」

 僕とおばあちゃんは空を仰ぎました。どぶに浸かった綿飴みたいな雲が青空を覆い隠しています。

「もう六月ですからね。梅雨入りも近いのでしょう」

「そうだねぇ。あ、ちょっと待ってね」

 おばあちゃんは、一旦家の中に入り、ガサゴソと音を立てたかと思うとまた戻ってきました。「はい、折り畳み傘だよ」

 それは紫色の布地に白い花模様がちりばめられた傘でした。男の僕が使うにはちょっときれい過ぎるような気はしますけど、おばあちゃんはニッコリして差し出してくれていますので、僕はありがたく受け取りました。

「ありがとうございます、おばあちゃん」

「あ、そうそう、昨日、優ちゃんが学校へ行っている間にお母さんから電話がかかってきたよ」

「……お母さんは何か言ってましたか」

「優ちゃんの様子を聞いていたよ。学校のこととかうちでのこととかね」

「そうですか」

 お母さんはきっと、今もおうちの中でお仕事をしているのでしょう。お父さんも同様に。村の人からの罵詈雑言にも気付かないで、目の前のお仕事にかかりきりなのです。

「優ちゃん?」

 おばあちゃんが心配そうに僕を見つめました。いけません、おばあちゃんの前でしょんぼりなどしてしまっては。

「――ああ、すいません。ちょっとぼうっとしてしまいました」

 僕がそう言っても、おばあちゃんは少し不安げでした。

「……では時間なので、行ってきます」

「行ってらっしゃい。車には気をつけるんだよ」

 こうして、僕はまたいつものように朝を迎えてしまいました。なぜなら、僕が死に損ないだからです。

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