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オモイノ・シリーズ

オモイノタネ 0 ~始まりの前~

作者: 風紙文

「発明の種」の製作者、それを回収する少女、それを手伝うナビゲーター

すべての始まりはここから。そんな始まりのお話

「ただいま…」

私は家に着いた。でも家には誰も居ない、家の両親は共働きだから。

そのうえ今は、最高傑作とかの複製作業に取り掛かっているらしいから研究室に泊まりきりだ。

発明家の父と、心理学を学んでいた母。その二人が作り出した最高傑作が今、学校で話題の的なのだ。

その名は「発明の種」

何でもその発明の種とは、普通の花の種のように植え、毎日水を欠かさずやると、その人が思った物。欲しかった物が出来上がるとか。


それから十日が過ぎた頃だろうか、発明の種は売り出された。

学校の皆は、

今日買ったんだー

実はもう芽が出てきたの

あー! 水やり忘れた!

…などの成長経過を話し合っているのが日常だった。

ちなみに私も一つ買ってみた。水やりは欠かしてない。

でも、特に欲しい物があるわけでは無い、強いて言えば…話を合わせる為にで、寂しさを紛らわす為にでもあった。


それからというもの、発明の種の成長と共に売れ行きはぐんぐんと伸び、売り切れが続出した。

両親も更に忙しくなり、更に会える時間が少なくなったのだった…。

…そんなある日、私が鉢に水をやっていた時。急に母が帰ってきた。

何だか慌てているようだった。

「どうしたの? 母さん」

「あぁ……。丁度良かったわ、大変なのよ…」

「?」

私は母に連れられて研究所らしき所に連れてこられた。

手には一つ、種を植えた鉢を持って。

「おぉ…来たか、……」

久しぶりに見た父は、何だかやつれていた。

「本当にどうしたの? 何も聞かされず来たけど…」

「……。落ち着いて聞いてね、私達が発明の種を作ったのは知ってるわね?」

「うん。今は皆その話で持ちきりだよ。でも本当に欲しい物になる訳じゃないよね?」

そんな非現実が起こるわけ…。

「それがなるんだよ、本当にその人が欲した物にね」

「え…?」

「でもね…それはダメなんだよ」

「ダメって…何で?」

「何でも欲した物になるからだよ」

「!!」

何でも…欲した物に…。

「例えば、過去を変えたいと思ったらタイムマシンみたいな物が出来上がり。人を思い通りにしたいと思ったら、人を操作する何かが出来上がるんだよ」

「それって…凄い事じゃないの…?」

「確かに凄い事だよ。でもね、そんな物が世界に溢れてしまったら…世界は大変な事になってしまうんだ」

「あ…」

「だから父さん達は、今から発明の種を回収する為の発明を作ろうと考えてるんだよ」

よく見てみると、棚の上には鉢があり、その中はもう蕾だった。

「だから、……にも手伝って欲しいんだ」

「私に?」

「……の鉢も、もう蕾だ。後は欲する物を思い浮かべれば、それが出来上がるんだよ」

「じゃあ…私も思えばいいのね?」

「うん、ありがとう……」

「いいよ、母さん達の為だもの」

そして私達は思い始めた。

発明を回収する…。


回収…する…物を…。


すると、二つの光が現れた。

私は思わず目を瞑った。

やがて光が消えて、私が目を開けると、

「くそ! 失敗した!」

父の怒り声が聞こえた。

「ど…どうしたの? 父さん」

「……。すまない、失敗してしまったんだ」

父さんが見せた鉢の中には、一本のネジ回しがあった。

「これが…失敗?」

「いや、半分は成功だよ」

「え?」

父は一枚の紙を私に見せた。それに書かれていたのは、


無かった事にするネジ回し


という文字。

…ダジャレ?

でもその下にも文字は続き、そこにはこう書かれていた。

発明に必ずあるネジをこのネジ回しで回し取ると、その発明は分解され、無かった物となる。

ただし人の記憶には残る。

「え…これは成功じゃないの? 発明をどうにか回収して分解すれば…」

「いや…コレを見てくれ」

父がネジ回しを裏返す、裏側が見えた。

「あ…」

そこに見えたのは、ネジだった。

発明に必ずあるというネジ。それは発明あるネジ回しにも例外なくついていたのだ

「このネジはネジ回しではどうやっても取れない…例え全ての発明を回収して分解したとしても…コレだけは残ってしまうんだ…」

「で…でも、使い終わったそれを閉まっちゃえば…」「…それはダメなんだ」

「え…どうして…」

「父さんはこの発明の種を完璧に消滅させたいんだ。でもコレ一つ残っていては…」「……」

父は昔からそうだ。完璧に拘って、この発明の種も完成させた。やるからには完璧に

これが父の座右の銘。

でも…。

「…そういえば、……の発明はどうなった?」

「え? 私のは…」

持っていた鉢を覗き込むと、そこにはあったのは…。

「…箱?」

黒い箱だった。

「何だろう…コレ…」

箱に手を触れてみた。

その時だった。


ドクン…


え…

何だか…

体…が…


ガシャーン!

「は…」

鉢を落として我に帰った私は、何だか妙な感覚だった。

何だか…、

「……? 大丈夫かい?」

「うん…大丈夫…」

あれ?

何だか…声が…。

「……。コレを」

父さんが渡したのは、おそらくこの箱の説明書。


探し物はどこにあるのかナビゲーター


なるほど、コレはナビなのか。

「コレとか言うな!」

「!?」

喋った!?

今喋ったよね!? この箱!?

「だーかーらー」

「あ…ゴメン」

さっきから何だろう、声が…出にくい。

改めて紙を見ると、理由が分かった。


探したい物を思い浮かべると、その物の場所までナビゲートする。声を発して教えてもくれる。ただし…ナビゲーターが話す為に、使用者は寡黙になる。

…そういう理由か、どうりで話し難いと思った。

「制作者はアンタね」

「うん…初めまして」

「何か暗いわね…こんなのがアタシの制作者なの?」

「……」

あなたのせいなのに…。

「は? アタシのせい?」

「!」

まただ。喋ってないのに…。

「アタシにはね、人の心を読むっていうサブ機能がついてんのよ」

サブで人の心を読む? それで本来は探し物を探すのが役目とは…。

「何か言いたそうね?」

「…逆じゃない?」

「いいのよ、何故なら私はナビゲーターだから」

…よく分からない。

「……?」

「父さん…ゴメン。私のも失敗みたい」

「はぁ? アタシが失敗?」

「あのね、私達は発明を回収して、全て分解しようとしてるの」

「はぁ!? 何でよ!? 折角出来上がったのに何で…」

ナビゲーターは黙った。多分…私の心を読んだのだろう。

「ふぅん…まぁ良いわ、ならアタシを使えば良いじゃない」

「え?」

「アタシはナビよ、発明を探してそのネジ回しとやらで分解して回れば良いじゃない」

「そうか…確かに」

「ただし、アタシは最後の最後にしなさいよね」

「うん…分かった」

「じゃあ行きましょ、でもその前に…」

「?」

「アタシに、名前をつけなさい」

名前? 探し物はどこにあるか…

「そんな長いのじゃなくて、もっと良いカンジのよ」

いいかんじの…えっと…、

「……とかどう?」

「…イヤよ」

「じゃあ………は?」

「う…それもヤメテ」

「じゃあ何がいいの?」

「何でもいいわよ…今の二つ以外なら…」

「じゃあ…ビーケ」

「ビーケ? …ふぅん…悪くないわね」

「じゃあ決まり、アナタはコレから、ビーケ」

「えぇ、よろしく」

「よろしく」

「なぁ、……」

「何? 父さん」

「本当にそれを信じるのかい? もしかしたら嘘をつく可能性も…」

ちっ…バレたか。

何か小声で聞こえた。

「大丈夫だよ、もしも嘘をついたら、あの名前で呼ぶから」

「う…アンタ…やるわね」

「じゃあ、行こうか」

「えぇ…そういえば、まだアンタの名前聞いてなかったわね、アンタ、名前は?」

「…水野葉 恵里」


こうして、私は旅に出た。

全ての発明を、回収、分解するという。かなり…過酷な旅に。

全ては…父さん達の為に。

そしてまた…3人で暮らす為に…。


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