眠れる森で会いましょう
勇者カイエンは私の膝で一晩ぐっすり眠ってくれた。
おかげで私の足が痺れまくって大変なことになったけれど、リールが支えてくれたから、なんとか大丈夫。
朝日を浴びてゆっくり目覚めたカイエンは、私と視線が重なった。
「おはよう、カイエン。よく眠れた?」
とびっきりの笑顔で優しく語りかけると、カイエンは突然体を起こし、跳ねるように後ろに下がってしまった。
あれ、どうしたんだろう? カイエンの顔が真っ赤になってる。何か怖い夢でも見たのかな。
「お、俺はヒーナの膝枕で寝てた、のか?」
「うん。一晩ぐっすり」
「くそ、一生の不覚だ……」
「何それ、どういう意味?」
「女の膝枕で一晩眠るような軟弱な男になりたくなかった」
「軟弱でも何でも、眠れたんだからいいじゃない。これからも私があなたを眠らせてあげる。たいして肉付きはよくないけど、私の膝でよかったらいつでも貸すわよ」
「柔らかくて心地よかった……じゃない! 俺のために膝枕なんてするなよ、もう二度と!」
「ええ~なんで駄目だの?」
顔を赤くしながら、カイエンは膝枕はダメだと意味不明に呟き続けている。
変なカイエン。眠ってるカイエンの寝顔は小さな子どもみたいで可愛かったのに。
「眠らせてくれたことは感謝する、ありがとう。でも俺はもういいから、ヒーナの力は他の者に使ってくれ」
どうやら私に遠慮してるみたい。別に気にしなくていいのにね。
「カイエンの寝顔を見ながら考えていたことがあるの。話を聞いてくれる? リールもリンゼもお願い」
ようやく正気に戻ったようで、カイエンは呼吸を整えてから私をじっと見つめた。
「なんだ? 話してみろ」
『我も聞くぞ、ヒーナ』
『あたしも聞いてあげる』
三人の仲間が、私の話を聞こうと待ってくれている。彼らがずっと私のそばにいてくれるといいな。
「私ね、魔の森を眠れる森へ生まれ変わらせたいの。魔王が残した呪いで眠れずに苦しんでいる者たちが救いを求めてきたら、私の力で眠らせてあげたい。でも魔の森を転生させるには私の力だけでは難しいわ。だって今の森には、安眠できる小屋や布団や枕もないんだもの。心地良く眠れる子守歌だって必要だし、安らぎの香りも欲しいわね。お願い、みんな。私に力を貸して。魔の森を眠れる森へ変えていきましょう」
瘴気であふれ、人々が恐れた魔の森を安らぎの場所へと変えていきたい。
それが私の今の夢。そしていつか、私もみんなと一緒に眠りたいって思う。夜になったら「おやすみなさい」って言って、全員で眠りにつくの。
今はまだ遠い夢だけれど、いつか叶うって信じてる。だって私には大切な仲間がいるんだもの。
「お願いされるまでもない。俺はヒーナを永遠に守ると誓った。ヒーナの願いは、俺の願い。ヒーナが望むなら叶えてやるさ」
『我も同じ思いだ、ヒーナ』
『あたしも! あたしも!』
これからもいろんな問題が発生するかもしれない。でもカイエンにリール、リンゼがいれば、きっと乗り越えられる。
「これからもよろしくね! みんな」
朝日がきらきらと輝き、私たちの未来を祝福してくれているかのようだった。




