桃太郎裁判
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「被告、桃太郎には参考人の犬・猿・雉に対し、不当に少ない対価で危険な労働をさせた嫌疑がかけられています。被告、反論はありますか?」
「あります!ちゃんと対価は支払っています!」
「参考人の皆さん、間違いはありませんか?」
「はい、確かにきびだんごをもらいました」
「異議あり!きびだんご1つでは充分な対価とは認められません」
「違います!1つじゃありません」
「では、幾つ?」
「ええと、4つ?」
「皆さん、間違いはありませんか?」
『はい』
「いいえ」
『え?』
「雉さん、あなたは違うと?」
「はい、3つでした」
「被告、先程の発言と食い違う証言が上がりましたが」
「え、あ、いや、雉が偵察に出てくれていた時にあげたので、後で渡そうとして忘れてしまったんだと思います」
「意図的ではなかったと?」
「もちろん!」
「雉さんだけ体が小さいから少なくてもいいと思ったことは?」
「いやだから」
「桃太郎さん、質問にだけお答えください」
「思ってません」
「本当に?少しも?頭をよぎったことはない?」
「そりゃ、全くないとは……」
「皆さんお聞きになりましたか?被告は、自分を慕って同行してくれた3匹の家来の中でも差別をし、巧妙に報酬を減らしていたのです!これは悪質であると言わざるを得ない」
「裁判長、原告弁護人の発言は本裁判の本旨から外れております」
「被告弁護人の申し立てを認めます。原告弁護人は本旨に沿った質問を行うように」
「分かりました。では改めて桃太郎さんにお伺いします」
「……はい」
「長い旅路、鬼ヶ島へ渡る困難な船旅、そして鬼退治という命懸けの極めて危険な労働に対し、きびだんごは充分な対価だと思いますか?」
「いや、ちゃんと鬼が蓄えていた財宝を山分けしました」
「まず質問にお答えください」
「……きびだんごだけで充分とは思ってません」
「ありがとうございます。では次に、鬼の財宝を山分けということでしたが、配分はどのように?」
「いえ、それぞれに好きなものを取ってもらったので、配分は特に決めていませんでした」
「そうですか。参考人の皆さん、なにを貰ったのでしょうか」
『食べ物』
「ありがとうございます。では、換金性の高い財宝の類は桃太郎さんが独占したということで間違いないですか?」
「いや別にそういうつもりは」
「桃太郎さん、家来の3匹に財宝を渡しましたか?」
「……渡していません」
「重ねてお聞きします。なぜあなたは鬼退治という危険極まりない業務に、人間ではなく参考人の皆さんを同行させたのでしょう?」
「いや、それは元々1人で行くつもりだったし、みんながきびだんごをくれるなら、と言ってくれたから」
「ほう、元々1人で行くつもりだったと仰る」
「は、はい」
「つまり、財宝は元より独り占めするつもりであった、と。そういうことですね?」
「いや、独り占めって。故郷に持ち帰って皆に還元したんですが」
「自分の懐には全く入れなかったと?」
「全くとは言いませんけど……」
「異議あり!本件は別途、財宝の元の持ち主たちと係争中であり、本裁判で議論すべき問題ではありません」
「被告弁護人の申し立てを認めます」
「ち。質問を変えます。鬼ヶ島の財宝や食糧は鬼退治の成功によって得ることが出来ました。では、失敗した場合、報酬はきびだんごだけだった、ということで間違いありませんか?」
「いや、そんなつもりは」
「では、どのようにお考えでしたか?」
「あ、いや、具体的に考えてはいませんでしたけど」
「考えていなかった!なんと、リクスヘッジ皆無だったと!?」
「リスク……え、なに?」
「異議あり!桃太郎さんはまだ未成年であり、鬼による被害を見かねて立ち上がったものであります。そもそもリスクヘッジを期待できるものではありません」
「では、衝動的な行動に参考人を巻き込んだと」
「異議あり!原告弁護人の発言は過剰に悪意的な印象操作で裁判員の心象を誘導する意図があると言わざるを得ません!」
「被告弁護人の申し立てを認めます」
「では、今度は参考人の皆さんにお聞きします。お好きな食べ物は?」
「肉」
「果物」
「虫」
「むし…?」
「なにか?」
「…………あ、いえ。では、皆さん元々きびだんごが好物だったという訳ではないようですね。では、なぜそれと引き換えに鬼退治という危険な旅に同行しようと?」
『なんとなく?』
「分かりました、ありがとうございます。では、改めて桃太郎さんにお聞きします。件のきびだんごですが」
「はい」
「合法ですか?」
「はい?」
「非合法な成分が混入していた可能性は?」
「そんな訳ないじゃないか!だってあれはおばあさんが僕のために心を込めて作ってくれたものなんだから」
「ほう、心を込めて。込めていたのは本当に心だけですか?」
「は?」
「中毒性のある薬物が混入していた、ということは?」
「ある訳ないじゃないか!ぼくはずっとおばあさんのきびだんごを食べて育ったんだぞ!」
「大好きなんですね、きびだんご」
「もちろんだ!」
「世界で1番?」
「当たり前じゃないか!」
「分かりました。これは私個人の感想なのですが」
「ん?」
「きびだんご、そこまで美味しいですか?」
「美味しいよ!なぁ皆」
『はい!』
「と、このように桃太郎さんと参考人の皆さんには、きびだんごに対する強い執着が見られます。これは異常と言わざるを得ません」
「弁護人さん!異議、異議あり、でしょ?」
「いや、これはさすがに……」
「裁判長、ここで重要参考人としておばあさんの召喚を求めます」
「認めます。では、今後の審議は重要参考人の召喚後に行うこととします。では、閉廷」
明日はすごくやばい話の予定です。




