第4癒 最強の力
アサっていいですねよね
「なあ、アサ」
俺は唐突にそう言う。
「なに、ヒーロ。今忙しいんだけど」
確かに、左手のお菓子を持ちながら右手で魔導書を持っている。忙しそうだな。
「って、お前お菓子食べながら本読んでるだけじゃねーか」
「まあそうかも知れない」
おっと、アサのペースに乗せられている。このままだとヤバいな。
「で、話を戻して、俺らの懐は今とっても寒いわけだが、そろそろダンジョン攻略しないとヤバい。金が無い」
元最強がいながら餓死とかシャレにならん。
「そんなにお金がないのか〜じゃあ、私が一肌脱いであげましょうか」
なんか言い方は腹立つが、アサの力がないとダンジョン攻略できないのも事実。
俺の能力は確かにモンスターを完全に消滅させられた。
だが、あの神はどうやら一万年ほど生きていたらしく、時を戻しすぎた反動で今は最大で5分が戻せる限界になってしまっている。
5分じゃ消すどころかむしろダメージを戻してしまう。だからアサの火力が必要なんだよな。
「元最強もいることだし、ダンジョン討伐クエストでも受けるか。まあちょっと簡単めのな。」
俺がクエストカウンターまで行くと、アサがほっぺを膨らましながら喋りかけてくる。
「元最強ってやめてくれる?いま世界で一番強いの私なんですけど」
なんか細かいところを気にするな。
けど機嫌を損ねたら面倒だし、適当に謝っておく。
「はいはい、最強様。ダンジョンまでエスコートして差し上げますよ。」
「うわめっちゃバカにした声」
とまあなんやかんやありながら俺たちは受けたクエストのダンジョンまで向かっていった。
暗いな。神のいるダンジョンはどちらかというと明るかったが、そことは違うようだ。
ダンジョンの仕組みも解明できていないらしいし、その解明のためにダンジョン攻略クエストがあるらしい。
「アサ。暗いからライトを頼む」
「りょーかい」
『光よ!我が杖先に集まれ!ライト!』
一気に部屋の隅まで明るくなる。
俺たちはトラップに気をつけながら進む。
こういうときはだいたい雑談をしている。
「ヒーロって兄弟いる?」
「妹が二人いたよ。今は生きているかも分からないけど。昔、俺の住んでた村がモンスターに襲われて壊滅したんだ。」
パーティーメンバーには俺の野望を話しておく必要があるな。そう思い、俺は話し続ける。
「その時に親の亡骸は見つかったけど、妹たちのものは見つからなかった。だから、俺は探すために冒険者になった」
「そっか。私も探すの手伝うよ。トップパーティーになれば情報も入ってくるし、最強のいるパーティーには軽すぎるミッションかな?」
「ありがとう」そうつぶやくと 、アサは少し笑って、また前を向いてしまった。
「なんかモンスター少なくないか?」
「そだね。これはこれで楽だけどちょっと不穏」
不気味なほどに無音。俺とアサ以外の声は聞こえず、足音も聞こえない。
「ここがボス部屋かな?」
「そうだな。こんな豪華なドアだし。そいういや、今回のボスは牛型のモンスターって話だけど」
ギィイイィィイ
俺は喋りながらドアを開ける。
その時、俺は嫌な予感がしていたにも関わらずに。
「あれ〜?もう来ちゃったか〜まあモンスター全然いなかっただろうし仕方ないか〜」
動けない。一目で分かってしまう。今の俺達じゃあいつには勝てない。そして、あいつの隣に横たわっているのは、牛型のモンスター。
俺は震える体を抑えながら喋る。
「お前は誰だ。その牛型のモンスターはお前がやったのか?」
「そして、……お前の後ろにいる奴はなんだ?」
俺は小声でアサに話しかける
「アサ、あいつが喋り始めた瞬間がチャンスだ。逃げるぞ」
「無理。あいつは逃げさせてくれないタイプ」
あいつが軽薄な声で話し始める。
「おいおい、質問が多くないか〜?まあいいですよ〜。答えてあげましょう。このモンスターモドキは俺がやった。君たちが来るまでに暇つぶしにもならなかったですけどね〜」
狂ったようにクネクネしながら喋る。そして
あいつが喋っている間に、後ろにいた奴が…牛のモンスターを食べ始めた。
グチャグチャモチャグチャ
嫌な音が部屋全体に充満する。
「コラ〜だめじゃないですか。まだいいと言っていないでしょう」
そう言い終わるや否や 、音もなくそれは床に沈んだ。 まるで見えない手で握り潰されたみたいに。
「またやってしまいました。今回はこいつを戦わせようと思ったんだけどな〜」
それでも牛型のモンスター以上には強かったはずだ。それを一瞬で消した?
ここからこいつと戦うとしても、勝てるビジョンが浮かばない。やはり逃げるしか。
「じゃあ今回はこれにしましょう。こいつよりは弱いですが、そこそこはやるでしょう。」
『召喚:アスモデウス』
その時、空が歪んだ。
俺たちの目の前に、何もなかった場所に、
巨大な龍が現れた。
「ヒーロ、こいつヤバいよ。昔一つ国を潰した龍と見た目がそっくり」
「博識ですね〜その通り。この龍はちょっと昔に一国を潰した龍を真似て"造り"ました。
では、またの機会に伺いましょう。」
そう言い終わると、謎の人物は消えていった。
「アサ、あれ俺達だけで行けるかな?」
最強がいようとも流石に不安になってきた。
「言ったよね!私が道を切り開くって!」
アサは大声で叫ぶと、龍に向かって走っていった。
アサは一体どうなるのか?
全ては私の手のひらの上




