第1癒 神に挑むツワモノどもよ
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『マジックヒール!』
はぁはぁ。何でこんなことになっちまったんだ。
そうだ。あの時からすべての歯車が軋み始めていたのかもしれない。神に挑むなんて無謀なことはしなければよかった。
俺は、ヒーロ。とある小さな村に住んでいた。父は農家、母は村の診療所で働いていて、村のじいちゃんばあちゃんを治していた。そんな人に憧れて俺も治癒士になったわけだが、
何をやっても出来損ない。ヒールは中途半端に回復し、アンチポイズンは痺れだけを取り除く。そんな俺でも、過去最強と呼ばれるパーティ
「アンデッドヴォルフ」に入れたと言うのに。
「お前、次何もできなかったらパーティ追放な」と言われてしまった。まじで何様のつもりだよあのクソ最強。
そうしてなんやかんやあって、今俺は神のいるダンジョンと呼ばれている「エターナルクエスト」にいる。今回のダンジョンで何か実績を出さなければ俺はクビだ。そんな緊張の中、俺たちアンデッドヴォルフはダンジョンへともぐっていった。
キィン
やはり最強、リョウは強い。俺とは比べ物にならないくらい魔法の練度も剣の練度も桁違いだ。
「おい!ぼさっとしてんなボケ!」
リョウがそう叫ぶと、モンスターに向かって走っていく。そのまま切る、と思えば、ジャンプをして回転切り。そしてモンスターを乱切り。なんて惨いんだ。そう思ったら、そのままモンスターは倒れた。
「おい!アサ!早く燃やせや!」
そういうと、リョウはポケットから水を出し、飲み始めた。
ぼぉおおおおお
モンスターを燃やしている彼女はアサ。このパーティのウィザードだ。彼女もめっちゃ強いウィザードだが、最強には逆らえないのか、言われるがままにされている。
この世界のモンスターは、死体は燃やさなければならない。死んでも蘇ってしまうからだ。
「さっさといくぞカスども。お前は前に出とけ!」
こうやって俺はいつも肉壁にされる。ただ俺がヒーラーなのでそこまでの防御力はない。そのせいでいつもビクビクしながら、前に進んでいるのだが。
ギィイイイ
俺がドアを開けると、音が反射する。かなり広い部屋のようで、壁につけられている蝋燭でも、部屋の中心が照らせないらしい。なんか、雰囲気があるな。まさにボス部屋という雰囲気だが、ボスはいないようだ。
「おい、アサ、ライト使え」
『光よ!我が杖先に集まれ!ライト!』
ぱあっと光が部屋を包む。
「ちっ、何もねえな」
いや、違う。この床は、魔法陣?
床に無数の魔法陣が刻まれている。
「みんな!伏せて!」
アサと俺は伏せたが、リョウは、ズバァアアアン
頭の上に強烈な風を感じる。
「よくぞここまで来た。冒険者どもよ。ここからは、私。神がお前たちの命の灯火を消そうじゃないか」
神?やはりここは神のダンジョンだったのか。やばい。アサの片腕が、吹き飛ばされた。
リョウは?どこにいったんだ。
俺がリョウのことを呼ぼうとした時、何かが目に映った。あれは足?
上半身が、ない。足だけがその場に残っている。俺がさらに辺りを見回すと、壁際にリョウの上半身が、自分が死んだことに気づいてないようにあった。
やばい。最強が死に、ここのいる唯一のアタッカーの片腕が吹き飛んだ。これをどうしろっていうんだ。
「……ははは…はは」
喉から乾いた笑いが漏れてくる。
もう大人しく諦めよう。もうダメだ。
「まだ!やれる!」
叫びにも似た声が聞こえた。
「早く!ヒールを!!」
俺もヘボヒールでどうしろっていうんだ。
それでも、死ぬよりかはましか。それなら
最後に俺のヒールに賭けてみるのもいいかもな。
「全ての精霊よ、我が腕に宿り怪我を癒せ!ヒー」
『裁きの息』
グハァッ
今、何が起きた?俺がヒールをしようとしたら、それよりも早く、詠唱を破棄して魔法を撃った?そんなことがあり得るのか?
もう、体が動かない。最後の賭けにも負けた。死のう。潔く。ただ、心残りがあるとすれば、両親の仇を打てなかったことかな。
「さらば、冒険者よ。我が記憶の片隅には置いてやろう」
そう呟くと俺の視界が暗く暗く、闇へと沈んでいった。
(お前はその程度でいいのか?)
何かの声が頭に響く。
「うるせぇよ。俺はもう十分頑張ったじゃんかよ」
(お前はヒールの使い方を間違えている。一度、自分に向かってマジックヒールと唱えろ)
「は?詠唱もなしにか?大体、マジックヒールってなんだよ。ヒールはヒールだろ」
なぜか体の痛みを感じない。
まあいいか。さっきが最後の賭けといったが、あれは撤回だ。
これが最後の賭けだ
『マジック…ッヒール』
おかしいな。さっきまで普通に言えていたのに。やっぱりダメか。最後に希望を持たせておいて、あの声の主は一体?とりあえず絶対に呪ってやる。
その瞬間
ドックン
心臓が跳ねた。
?!?!
視界が白に染まる。
いや、違う。光っているんだ。外側ではなく、内側が。
自分の体の中が見える。折れた肋骨、裂けた肺、そして、潰れている心臓。
なんで、心臓が潰れているのに生きている?
なんで、体の中が、修復されている?
(お前のヒールは、他人にはまだ効果が薄い。その代わり、自分にはとてつもない効果を発揮する!)
(お前は、自分のヒールを元の型に当てはめているから、自分にも効果が薄かったのだ!) (そもそも、お前の魔法は、“回復”ではない)
心臓が、もう一度大きく脈打つ。
ドクン
(“本来の状態への復元”だ)
その瞬間、理解した。
「……なんだよ…… 」
笑いがこみ上げる。
「めちゃくちゃシンプルじゃねえか……」
今までの俺は、“治す”ことばかり考えていた。
だから中途半端だった。
でも違う。
「戻す、だけだ」
折れた骨を“治す”んじゃない。
“折れていない状態に戻す”。
潰れた心臓を“修復する”んじゃない。
“潰れていない状態に戻す“
「もう詠唱はいらない。イメージだけでいい」
“完全な自分”を思い描く。
次の瞬間。バキッ!!
体の中で、何かが一斉に鳴った。
骨が戻る。肺が膨らむ。
心臓が——
ドクンッ!!
力強く、動き出す。
「がっ……はぁっ!!」
空気が、肺に流れ込む。
指が動く。足が動く。
「……はは……」
ゆっくりと、立ち上がる。
さっきまで死んでいたはずの体が、完全に元通りだ。
いや、それ以上に、”軽い”
まるで体力も戻っている。
「おい、神。そこにいるんだろ?」
空間にある僅かな揺らぎを、俺は見逃さなかった。
「ほう、見えるのか」
「ああ、おかげさまでな」
一歩、一歩、と俺が近づいて行く。
もう、怖くはない。何度でもやり直せるならな。
「面白い。もう一度叩き潰してやろうじゃないか」
神が、初めて敵と認識した瞬間、神が放っていた。
『裁きの拳』
直撃。また骨が砕け、内臓が潰れる。
だが、先ほどまでとは違う。
『マジックヒール』
一瞬で元通り。
「は?」
その時、初めて神の困惑が見えた。
俺は笑った。
「効かないだろ」
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