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第1話 お願いだから、泣かないで。

 この広い世界にひとりぼっち。


 お願いだから、泣かないで。


 自分の欲しいものは自分で頑張って探さなくちゃわからないものなんだよ。

 宝物を探すみたいにね。

 それがとっても楽しいんだ。


 薄暗くて厚い灰色の雲が空を覆ってしまっている天気の不思議な森の中で、わたしは目を覚ましました。

 そこはとても不気味な森でした。

 おばけや怪獣がいたとしても不思議ではないような、不気味で怖い(それに少し肌寒い)森の中でした。

 そんな見たこともないところにわたしは倒れて眠ってしまっていたようでした。(寒かったのか、くしゅん! と起きたときにくしゃみをしてしまいました)

 わたしは怖くて怖くて震えていました。(寒かったこともあると思います)

「あの、誰かいませんか」

 と小さな声でわたしは言いました。(大きな声を不気味な森の中で出すことは怖くてできなかったのです)

 返事はどこからも帰ってきませんでした。

 わたしは少しの間、近くにあった大きな木の幹のところに背中をつけて座りながらじっとしていました。

 そこから不気味な森をぼんやりと見ていました。

 しばらくして、わたしは森の中を歩こうと思いました。(ただぼんやりとしていたのではなくて、ちゃんと動き出せるようになるまで、心と体の中に力を溜めていたのです)

 歩いてどこかに誰かいないか探そうと思いました。

「いた!」

 でもそのときになってわたしは自分の右足に強い痛みを感じて、右足のくるぶしのところをいつの間にか挫いていることに気がつきました。(よく見るとあざになっていました)

 わたしは動くことができなくなって、また大きな木の幹のところに座りました。

 そして、そこで一人でうずぐまって泣きました。

 でもそのときにわたしは自分が『涙を流させない』ことを知りました。

 泣こうとしたわたしの目からは涙は一粒も流れ落ちませんでした。

 泣くともできないわたしはただそこで小さく丸くなって、じっとしていました。(それはとても悲しくて、孤独な、とても長い、ひとりぼっちの時間でした)

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