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第1章 希望の朝

4章で完結する思春期の少女の成長の物語です。

本作は「集英社オレンジ文庫・第236回 短編小説新人賞」に投稿した作品です。

爽やかな春風がそよぐ朝だった。私は新しい制服に袖を通し、姿見の前で何度も自分の制服姿を確認した。

「どうかな?お母さん。」

私は台所でお弁当を作っている母に声をかけた。母は対面キッチンから菜箸を持ったまま顔を出すと笑顔で私を見て

「うんうん」

と満足そうにうなずいた。

「変じゃない?」

母は菜箸を台所に置くとエプロンで手を拭きながらリビングまできて

「大丈夫、少しも変じゃないわ。すごい美人。やっぱり、お母さん似ね。」

そう言って笑顔で私の髪飾りのリボンを少し直した。

「やっぱり、このリボン少し子供っぽいかな?外したほうがいいかも。」

私は、少しかがんで鏡にリボンがついた髪飾りを映す。

「少しもそんなこと。よく似合ってる。」

「そうかな?」

「そうよ、自分に自信を持って。こんな可愛い子、他にいないわ。」

私は母の言葉に親バカだなぁと感じながら、そわそわと、また姿見の前に行き、リボンのついた髪飾りを外すかどうか考えだした。

「まだ時間があるから、ごゆっくり。」

母は呆れたように笑うと、台所に戻って行った。台所から甘い卵焼きが焼けるいい匂いが漂う。

「お母さんは、後でお父さんと入学式の会場に行くから、また体育館でね。」

母が台所から、少し大きな声で言う。

「ええ!?お父さんも来るの?お母さんだけでいいんだけど。」

私は思わず、姿見から振り返り、大きな声を上げる。

「そんなこと言わないの。お父さん、葵に嫌がられてるの、気にしてるんだから。」

「別に、嫌ってわけじゃないけど。」

「じゃあ、なおさらいいじゃない。お父さんも、葵の晴れ姿を見たいのよ。」

「はいはい、じゃあ、ご夫婦で、どうぞ。」

私はまた姿見で、制服姿と髪飾りのリボンを見比べる。実際の年齢より幼く見えるような気もするし、それが可愛いようにも見える。

新しい学校、新しいクラスで、かっこいい人に出会ったらどうしよう。そう思うと、私はさっきから、髪飾りを着けたり外したりしていた。

「ねぇ、どうしよう?お母さん。」

「どっちでも変わりゃしねぇよ。」

弟の康太がパジャマの裾からお腹をかきながらリビングにやってきた。ほんの少し前までは、私の後を追いかけ回してたくせに、最近は、ますます生意気になってきた。

「大事な入学式なんだからいいでしょ。あんたに関係ないし。」

言い返そうとする弟に、母が割って入り

「2人だけの姉弟なんだから、仲良くね。」

弟は、はいはいと言いながらテレビでYouTubeをつける。

「お姉ちゃんも、はじめての登校だから、少し早く出たほうがいいわ。忘れ物ないようにね。」

「はぁい、行って来ます。」

私は、返事をすると、鞄を持って、記念すべき高校生活第1日目のスタートを切った。どんなクラスかな?隣はどんな子かな?期待で胸が高鳴る。

少し子供っぽいかもしれないけど、リボンがついた髪飾りは、そのままにした。

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