未来はどうなる
ラストです。読んでいただきありがとうございます
そして、エリクシアの誕生日まであと5日、急に屋敷内が騒がしくなる。
「何だって、サーシャが見つかっただと」
「サーシャが……あっ、あっ……」
「父さん、母さん……サーシャがまた僕達の所に?早く行こう」
王都で住む長兄からサーシャが見つかったと手紙が来たのだった。慌てて3人は王都で見つかったサーシャの元へと急ぐのであった。
1週間前
「ねえ、あなた。明日は記念日よ。プレゼントはないの?」
「お家に準備しているよ。帰りに花屋に寄って帰ろうか」
「嬉しい」
「いらっしゃいませ」
「………………」
「ん?どうかしましたか?」
「君……名前は?」
「私は……サーシャですけど」
「サーシャ?君はこの家の子かい?」
「私は孤児でして、一歳頃に教会に捨てられたと聞いてます」
ハキハキと答える花屋の娘。
「……みんなに知らせないと」
「え?まさか、行方不明の妹さん?」
「その可能性は大いにある」
長兄は直ぐに手紙を出したのだった。
エリクシアの住む街から王都までは馬車で一日はかかる、早朝に出た3人を乗せた馬車は日帰りをしたとしても夜中となる。夜間の馬車での移動は危険なために本日は王都に泊まる事になるとエリクシアは考えた。
すぐに屋敷から出て行こうとするエリクシアに家令は言う、養子が解消となる可能性は低い、このまま娘として過ごす事になるはず、ご主人が戻るまで待ってほしい。とエリクシアに伝えた。エリクシアは考え、今まで世話になったためお礼とお別れをきちんとしたいと考えたのだった。
「わかりました。帰って来るのを待ちます」
そして、誕生日当日、エリクシアの元に来たのは両親と兄ではなく、しばらく王都で暮らすと言う手紙であった。王都であったサーシャと家族水入らずで過ごす予定で1ヶ月後には戻ると書いてあると家令は言う。
「待たなくて良さそうね。お手紙を預かってください。養子縁組の解消もお任せします」
バーキン家のドアを大きくノックする人がいる。
「お客様?エリクシア様は、お部屋……応接室で、お待ちください」
「一体誰ですか……ひっ……貴方はフランドル様」
家令が玄関ドアを開けると、そこにはフランドルが立っていたのだった。
「あぁ、エリクシアの誕生日だからな。プレゼントを直接渡しにきた」
「それがその」
「ん?今日はエリクシアの誕生日のはずなのに……随分と殺風景だな」
「あの……フランドル様、実は」
家令はフランドルに、行方不明のサーシャが見つかりエリクシア以外は王都にいる事を伝えたのだ。家令はエリクシアが不憫に思えたのだ。毎年、豪華に開催していたエリクシアの誕生日は今年は1人の予定となったから。毎年、沢山のご馳走や素敵なプレゼントは今年はない。
「そうか、それでエリクシアは?」
「応接室にいます。お嬢様を悲しませた主人を初めて……私は……殴ってやりたいと思いました。この家で過ごした13年は何だったのでしょうか、フランドル様、エリクシアお嬢様を幸せにして欲しいです」
「わかった、先ずはエリクシアと話す」
コンコンコン
「はい……どうぞ」
扉から顔を出すフランドルを見て、エリクシアは涙が溢れた。
「フラン……私は……捨てられたのでしょうか」
「違う……」
「でも、私を置いて王都に……本当の家族を迎えに……私の誕生日なのに……やはり最悪のシナリオの方みたい」
ゆっくりとエリクシアに近づき抱きしめるフランドル。
「違う……君はどうしたい?家族を待つ?」
「わからないわ。とてもお世話になったのよ。でも本当の家族には……なれなかったみたい。これからは、この家で本当の家族が暮らすのよ。私はいない方がいいのよ」
「シア……どうしたい?」
「フラン……私……この家を出たい。どんな顔すればいいのかわからない。サーシャ様に嫉妬すると思う。嫌な自分になりたくないの……だから今のうちにいなくなりたい。私を連れて行って、お願い」
「わかった、すぐに行こうか。私と共に」
エリクシアは家令と使用人達に挨拶をする。
「エリクシアお嬢様、きっと何かの間違いで」
「大丈夫よ。いつか……こんな日が来るだろうとビクビクしていたのよ。だから……いつでも旅立てるように、旅先で困らないように、皆さんから仕事を教えてもらっていたのよ。私は……最初からいなかったと思って、本当の娘のサーシャ様に尽くしてください。それでは……さよなら。今まで……ありがとうございました。とても幸せな13年でしたわ」
「今まで、エリクシアを大切に育てていただき、ありがとうございます。今後については、私の両親からも手紙がくるかと思いますが、私はエリクシアと離れることはないと誓います。それでは」
屋敷を出ようした時、一台の公爵家の馬車が停まる。
「エリクシア、すまない」
「エリクシア、ごめんね。間に合ったのかな?」
「エリクシア、誕生日おめでとう」
「私の可愛い娘のエリクシア、ごめんなさいね。お誕生日おめでとう」
「…………みんな。どうして?」
「エリクシアの誕生日だろ」
「だってサーシャ様が見つかったのでしょう」
「あぁ、そうだ。しかし、それよりもエリクシアの誕生日だ。今から準備をプレゼントも沢山買ってきた」
そしてエリクシアの誕生会は家族とフランドルと使用人達で開催される事となった。
ご馳走様を食べケーキと紅茶を楽しみ誕生会はお開きの時間となる。
「お父様、私はまだ……この家にいてもいいの?」
不安そうな顔で尋ねるエリクシア。
「当たり前だよ。ずっと私達は家族だよ」
「ありがとう。大好きお父様、お母様」
「エリクシア……僕達は?」
「勿論、お兄様達も大好きよ」
「私達もエリクシアが大好きだ」
両親に抱きしめられながらエリクシアは問う。
「あのサーシャ様は?」
「突然来られても困ると怒られてな。自分の両親は今まで育ててくれた2人が両親なのだとね。不安にさせて、すまなかったね」
「あなた……ほら」
「そのだな、フランドル殿とは卒業後に結婚する事に変わりはないのだろうか」
フランドルは姿勢を正し答える。
「はい、そのつもりです」
「卒業まで1ヶ月だろう。学園でも授業もないだろうし、少し辺境伯の元で過ごしてもいいのだぞ。もし、フランドル君と合わなければ戻ってくればいい事だしな。向こうとも話はつけてあるから。エリクシアどうしたい?」
「え……私はあの」
迷うエリクシアにフランドルは伝える。
「シア、卒業まで家族と過ごしたら?卒業後は辺境にくるのだし、僕の所に来てもすぐに夫婦となる訳ではないから今はこっちで家族や友人と過ごしていいんだよ」
「フラン……。それなら卒業まで家族と過ごしたいです。お父様、お母様……いい?」
「勿論だよ。フランドル殿すまないね」
「いいのです。シアにとって公爵家はとても大切な場所ですから」
「それなら、今日はフランドル君と過ごすといい。嫁入り前だと忘れなければだが」
「お言葉に甘えて、少しだけエリクシアと過ごさせてください」
「ここがエリクシアの部屋なのだね」
「フラン、今日はありがとう。大好き」
エリクシアはフランドルに抱きつく。
「私もだよ。でも公爵家の皆が戻ってくれて良かったね」
「はい、家族とフランと過ごせて良かった」
「少し一緒に横になっても?」
「えぇ、懐かしいわね。フランの卒業の日も一緒に眠りましたね」
「そうだね。もうすぐ1年か……。その前に」
エリクシアの前に跪き手を取り伝える。
「エリクシア、愛している。私と結婚してくれませんか?」
「私もフランドルを愛してるわ。私をあなたのお嫁さんにして」
「ありがとう。はい、プレゼント」
エリクシアの腕にブレスレットをはめる。
「指輪にしたかったけどサイズがわからなくて情け無い」
「とっても綺麗よ。嬉しい」
その後、2人はベッドに横になり話をした。今までの事そして、これからの事を。
エリクシアの卒業から半年後
「エリクシア、綺麗だ」
「ほんと、とっても綺麗な自慢の娘」
「お父様、お母様……今まで育ててくれて、ありがとうございます」
「結婚しても私達の娘である事は変わりない。いつでも遊びにおいで」
フランドルの故郷の教会でエリクシアとフランドルは永遠の愛を誓い、子宝にも恵まれて幸せに暮らしましたとさ。
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