全世界の、全知性存在を幸せにする素敵発明
免責事項
※企画・原案:山羊野混乱さま(リクエスト企画)
※R15推奨作品
※女性読者は、うわぁ…って感じる方も多い話かも
※昔ノクターンノベルで読んで感動した、とあるR18作品に影響を受けています。丸パクリにはならない様に気をつけたつもりだけど、もし『完全に◯◯のパクリじゃーん」と不快させてしまったら、その時はごめんあそばせ
AD 20XX 世界のどこか
「見たまえ助手くん、この発明を!今回のもとっても素敵だよー!!」
よー…! よー…
広大な敷地にものが散らかりまくっている研究室にエコーが響く。
どや顔で薄い胸を張っているのは山田オリンポスさんごじゅうごさい。
ハーフロリババアの天才博士だ。
そう、この人こんなんだけど残念ながら大天才なんだよな。
外見年齢が若いのもご都合主義ではなくて、若いときに自分のテロメアをあれこれして老化を止めちゃったというガチ天才。
ただ、彼女にはひとつだけ大きな欠点がある。
「へー、ところで博士。今回こそはきちんと倫理審査申請しました?」
「やだなあ、そんなことするわけがないじゃあないか。時間は有限なんだよ」
そう、倫理観が皆無なのだ!
ブレーキの壊れた天才、ワロエナイ。
いや、一応彼女を弁護すると、今までの発明品はいいものばかりなんだけどね。
一例をあげると
戦争をしてる司令官が、ふとその手を止める様な発明。
凶器を握る青年が、ふと足下の花に目をやって立ち止まる様な発明。
目の隈がひどいOLが、美味しいご飯を食べてふと涙する様な発明。
不眠症の学生が、ふわりと眠りに落ちられる様な発明。
なんかを作り出している。
全部、オーバテクノロジー級の技術が使われており、本当ならノーベル賞をダース単位でとっているレベル。だから、現在彼女はスポンサーから最高の環境を与えられている。ただ、研究開発の際に倫理審査を申請しないから公式には全く認められていないだけだ。
「で、今回は何を作ったんですか?」
「タイムマシンだよ!」
「へぇ?……えええぇぇぇぇ?!」
長くなってきた彼女との付き合いの中、多少の事では動じなくなってきた僕だが、今回ばかりは大声をあげてしまった。
技術的に凄まじいことをしているのもあるけれど、それ以上になんかこう、色々不味いことになる危険を察知したからだ。ほら、タイムパラドックスとか……
「博士、今回ばかりは流石に不味いです!歴史が変わってしまいます!」
「まあまあ、落ち着きたまえ。何も人間を過去に送ろうというわけではないんだ。そもそも、このマシンではモルモットだって重量オーバーだしね。あとこれは、本命の発明を作る前段階の、理論を証明するための試作品なんだ。」
どういうことかよくわからないけど、まあ人を送らないなら影響は少ない……のか?
あと、タイムマシンを超える本命の発明っていったい何なんだろう。
「おお、それは本命の発明が何か気になっている顔だね。うんうん、君の浅ましい考えは手に取るように分かるよ。なにせ私は天才だからね。でも、今教えるのももったいない気がするなー、どうしよっかなー」
どや顔でいう山田。ちょっとイラっとする。
僕が一日不在にすると干上がるくらい生活力皆無のくせに偉そうに……
3日くらい旅行にでも行こうかな。
「わー、ごめんごめん!教えるから機嫌を直しておくれよぉ。最終的に発明したいと思っている本命と言うのはね『全人類を! 異世界に同時転移させて! 世界丸ごと大☆転☆生!』させる素敵なマシーンさ」
ドンッ!!と背後に効果音がみえる。
え?正気?
「実現可能性は置いといて、一体全体、なんでそんなもの作ろうと思ったんですか?」
「いやー、世界中、どこもかしこも暗いニュースばかりだろう。何か打開策が欲しいなぁとおもったんだよね。まあ、世界中の一人一人が自覚を待って行動すれば世の中は変わると思うんだけど、大体みんな他力本願だるだるモードだろう。君みたいに」
いわれてみればその通りかもしれない。
最後の一言は余計だが。
「そこで、『全人類を! 異世界に同時転移させて! 世界丸ごと大☆転☆生!』さ。異世界帰りの人達が書いた自伝を読むと、だいたいがこの世界で燻っていたのに、異世界転移したとたん行動的になって幸せを掴んでいるんだ。だから、皆を転生させれば皆幸せになれるはず。これはきっと、全世界の、全知性存在を幸せにする素敵発明になるよ!」
満面の笑みでいう博士。
でも、正直それって生存者バイアスじゃない?
ほら、成功した人ばかりが本を出すけど、失敗した屍はその何十倍もあるみたいな……
「で、異世界転移の為には時空の壁を超えないとなんだけど、その前に時間の壁を越えられる確認をしておく必要があるんだよね。と、いうわけで早速試してみよう。ポチっとな。」
そういって、目の前の機械のスイッチを入れる博士。
ブウウウウンという重低音が響き始めた。バリバリと雷のようなものが上がり、そしてーー
「実験は成功だ。生物をおよそ2000年くらい過去に送ることに成功したよ!」
「凄いですね、どこに送ったんですか?」
「全然分からないねぇ!地球のどこか……可能性が高いのは海か砂漠かな」
そんなアバウトでいいのかと思ったけど、とりあえず今回は理論が証明できればいいんだったな。
「ところで何を送ったんですか、ミジンコとか?」
「君の精子さ!」
え、空耳かな?
なんか不穏な単語が聞こえたんだけど
「君の精子さ!いやー出来るだけ人間に近いDNAをもって軽いものを送りたくてね、近くにちょうどいいサンプルがあってよかあいたたたたぁ!」
「何してくれてんだこのロリバアァ!」
アイアンクローしながら思う。
いつだ、いつ採取した。
「いだだ、だってあの時、君だってノリノリで提供してくれあァ!まってまって、頭蓋骨砕けちゃう!」
あの時か?それともあの時か?
やっぱりこの博士には倫理観が欠如している。
歴史が動くような間違いが起きないように、これからも僕がしっかり見張っていないとだめだと改めて心に誓うのだった。
◇
AD 0000 ベッツヘルム
「君か、処女なのに受胎したマリアと言う女性は!」
「あ、はい……」
「神の祝福だ!きっとここから歴史が動くぞ。」
「みんな幸せになれる時代が来るに違いない!」
さあ、親愛なる読者くん
ポイントや感想を送ると作者がどれくらい喜ぶか、実験といこうじゃあないか!