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16話  変身!

 もう怖いものは何もない! ラグナロク《終わらせる剣》があれば——どんなものや事象だって終わらせられるんだから!


 ガルフが仕掛けてくるのを待っていると、向こうが口を開いた。


「この形態ではボールは扱えんからなあ——ボールを扱える形態に変身させてもらう!」

「変身!? お前変身できるのか!?」

「できる! しかもいつでも変身できて、なおかつ変身に必要なものは何もない! 見ろッ! 僕の変身をッ!」


 ガルフがそう叫んだ直後、奴の全身がまばゆい金色の光を発した!


 発光しているガルフの全身のシルエットがその形を変えていく!


 やがてガルフの全身から発せられている金色の光が消え、現れたのは——


「女の子ッ!?」

「そう——これが僕の人間の姿だッ!」


 ガルフはミラと同い年ぐらいの——15歳前後の少女に変身していた! 身長は俺より10センチほど低く、日本人女性の平均身長と同じぐらいだ。髪と目の色は金色のままで、髪型は肩にかからない程度の長さだ。アルジーと全く同じ金色の毛皮のコートを羽織っていて、人間の状態でもその全身に鎖が巻きついている。胸はミラと同じぐらいでかい! 毛皮のコートの胸元から胸の谷間が見えているッ!

 とにかくかわいいミラの顔に対して、ガルフの顔はかっこよさとかわいさを兼ね備えている! 俺が美少女に見える美少年なら——ガルフは美少年に見える美少女だ! とにかくビジュアルが良いッ!


「ガ、ガルフッ! 人間に変身できるのですかッ!? なぜ今まで黙っていたんですッ!?」


 ガルフの後方にいるアルジーが驚いた顔で聞いた。

 ————妙だな? なんであいつ、ガルフが人間に変身できることを知らないんだ? ガルフを操っているくせに。なんでガルフもあいつに教えていなかったんだ?


「聞かれなかったから言わなかっただけだ」

 アルジーの方に振り向いたガルフはそれだけしか言わなかった。


「…………ふふふふ、はははは、あはははは」

 アルジーが笑った。だが口の形と声が笑っているだけで、その目は笑っていない。いやらしい目つきだし、見ていて嫌悪感がする笑い方だ!


 するとアルジーが口元にだけ笑みを浮かべたまま、ガルフに向かってねっとりとした口調で言った。


「ガルフ、この戦いが終わったら——交尾しよう」

「はあッ!? 何言ってんだお前ええええええええッ!!」


 俺は叫ばずにはいられなかった! 何を考えているんだこいつはああああ!


「言ったはずですよ! 『魔王ガルフは僕が操っている』とね! この子は僕には逆らえない! つまり僕専用の道具なんですよ! 人間に変身できると知ったなら——もちろん交尾させてもらう! ガルフに拒否権はないッ!」


 …………お、俺は人生でここまで不快感を募らせたことはないッ! あまりにも不愉快で吐き気がするッ! 人間がやったこととは思えない胸糞が悪くなるおぞましい事件はいくつか知っているが、この男はその事件の加害者——人間の皮をかぶったケダモノどもと同類だああああッ! こいつとはもう何も話したくないッ! いいやそれどころか俺の視界に入ってくることさえ拒絶したいッ!


「ガルフ! お前魔王なんだろうッ!? 本当にあいつに逆らえないのかッ!?」

 俺は憤りを声に乗せて激しく問いただした!


「ああ。奴の言う通り、僕はあいつには逆らえない」

 そう言うガルフの声に悲壮感は漂っていなかった。それどころかなんの感情も含まれていなかった。


「魔王が1人の人間に逆らえないなんて……その鎖か!? その鎖がレグリア《神器》だなッ!? 逆らえないのはそのレグリアの能力のせいだなッ!?」

「話はもう結構ッ! ガルフッ! 今すぐそのレグナス《神臣》とかいう少年を殺しなさいッ! 早く家に帰って交尾したいのでねッ!」


 アルジーが鋭く叫んだ直後、ガルフがホワイトボール《純白放出球体》を右手でわしづかみした!


「食らええええええええッ!」


 ガルフが俺に向かってホワイトボールをドッジボールのように投げた! 射程である1メートルを超えて迫ってくるッ!


 ——そうか! あの2つのレグリアは、衛星のように自力で好転しているときの射程はガルフの半径1メートルまでだが、ガルフに投球してもらえれば射程は伸びるのかッ!


 だがッ! しょせん俺の敵ではないわあ! レグリアの能力はラグナロクで終わらせられるッ!


 ホワイトボールが俺のすぐ手前まで来たッ! まだ吹き飛ばす能力は使ってこない!


 そのとき——俺に迫っていたホワイトボールの軌道が突然変わり、俺の足元へ急降下した!


 ——何ィィィィッ!? これは野球でいうところのフォークボール! まっすぐ来ると思わせながら、途中で落ちるとは!


 意表を突かれた俺は、ラグナロクを振るう始動が遅れた! ラグナロクの切っ先がホワイトボールに——届かなああああいッ!


 バゴオオオオオオオオン!


 俺の足元の地面が爆発したかのように吹き飛んだ! 俺はラグナロクの切っ先を足元に向けてすぐに爆風を打ち消した!


 視線を足元から上げると、俺の視界は一面茶色だった! 地面がホワイトボールによって吹き飛ばされたせいで、大量の土が空中に舞い上がっているからだ! 視界不良! 何も見えない!


 次の瞬間! 俺の顔の前にブラックボール《暗黒吸収球体》が突然現れた! 迫ってくる! 今からラグナロクを振り上げても防御に間に合わないッ! 距離が近すぎてブラックボールが俺の体に衝突する方が速い!


 ——やられたッ! ガルフは最初からホワイトボールで攻撃する気はなかったのだッ! ホワイトボールの役目は地面を吹き飛ばし、土を舞い上がらせることによる目くらましッ! 考えたなちくしょおおおおッ!


 だが! 俺にはまだ奥の手が残っている! 今から口に出して言っては間に合わない!


 ——ゼットワン《領域加速》!


 俺は心の中で唱えた! だが——

 ッ!? 発動しない! 加速しない! まさか、口に出して言わないと発動しないのかああああ!


 飛んできたブラックボールが、俺の鼻先に触れた! その瞬間——


 ジュウウウウウウウウッ!!


「うわああああああああ!?」


 ——俺は一瞬でブラックボールの中に吸い込まれた!

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