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志願制ヒーローたち  作者: 海月里ほとり


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 そのバッヂを見て頭に浮かんだのは、ファイヤー・エンダーやMr.ウーンズの微笑み、ではなかった。グラグラと煮えて揺れる頭の中に浮かんできたのは、一冊の雑誌の表紙だった。そこにはバッヂと同じ意匠が印刷されていた。

 雑誌の題名は『ヒーロー名鑑』。今年発行された最新版だ。

 繰り返し読み返して、頭の中にインストールされている本ではあるけれど、こんな時に思い出すのは不思議な気がした。戸惑う俺の頭の中で勝手にページが捲られていく。

 突然捲られていたページが、止まる。

 見知ったページだった。名鑑のページはどれもそうだ。見出しも思い出そうとしなくてもわかる。そのページは『ヒーロー報酬番付』だ。

 ヒーローはこなした任務の成果と難易度、回数によって報酬を受け取る。一部を除きほとんどのヒーローがその報酬の額を公開している。この番付はその額をランキングにした、定番の特集だ。

 ページにはたくさんの数字が並んでいた。それを認識して納得する。あまりにも巨大な数字のことを考えすぎたせいで、それに似た数字が書かれた見知ったページのことを思い浮かべてしまったのだろう。そんなのんきな思考が流れる。

 そこで思考が引っ掛かる。

 似た数字?

 そうだ。工房に合った機材の値段の合計は、番付に載っている報酬の額と似た桁の数字だった。どちらも普段思い浮かべることのない桁だ。

 胸がざわつく。俺の頭の中で二つの数字が結びつく。

 奇妙な考えが浮かぶ。俺はその考えが形になる前に振り払おうとする。でも、一度浮かんだ考えは消えない。俺の頭が考えを消化する前に、俺の口が動いていた。

「俺がヒーローになるか」

 父さんとスナッチャーが奇妙な顔で俺を見ているのに気がつく。俺はたった今自分が発した言葉の意味を理解する。

 あわてて首を振る。

「違う、今のは、違うんだ」

 けれども、二つの数字を結び付ける奇妙な考えは、俺の頭の中でだんだんと具体的なものになっていった。

 追い払えないほど強固なものに、まるで決意と呼ばれるなにかに、どこかよく似たものに。

 

 【つづく】





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