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 ヒーローになるつもりなんて欠片もなかった。ただ、ダチのミイヤが「卒業したらヒーロー候補生になる」って言い出して、それなのにやけにブルっていやがったから、面白半分で募集事務所について行っただけなんだ。


 そりゃあ、俺だって小さい頃はダイスマンのフィギュアを集めていたしクリスタルナイトのトレーディングカードの完璧なコレクションは今でも宝物だ。でも、ヒーローは画面越しにニュースで見るもんであって自分自身がなるもんじゃないだろう?  だから、ビビりっぱなしのミイヤのケツを蹴飛ばしながら募集事務所の扉を開いて、そこにMr.ウーンズがいても驚いただけで、心揺れるようなことはなかったさ。


「やあ、ヒーロー志望者かな?」

 Mr.ウーンズはそう言って笑った。活劇の中のあの笑顔だった。でも活劇と一緒だったのはそれだけじゃなかった。肩から半分もぎ取られた右腕も活劇の通りだった。

 Mr.ウーンズは俺たちの視線に気がついて、「ああ」と首を振った。「知ってるかもしれないが、ギルマニア星人に食われてしまってね」

 残った肩を竦めて続けた。

「ヒーローは引退してこういった仕事をしてるってわけさ」

 俺たちは何も言えなかった。その方の傷口は活劇のやつよりずっと痛々ししく見えた。ヒーローたちの医療技術なら傷を治したり、そうでなくてもサイバネを植え付けて元通りにすることはできるはずだ。もちろんそれじゃあヒーロー・センスは通わないだろうけど、少なくとも見た目はマシになるはずだった。

 それで、とMr.ウーンズは俺たちを見た。

「君たちはヒーローになりたいのかな?」

 Mr.ウーンズはもう一度尋ねた。俺は何かを言おうとした、でも俺が口を開くより早くミイヤが叫んだ。

「Mr.ウーンズ!」


 ミイヤがそんなデカい声を出せるなんて知らなかった。驚いてミイヤを見ると、目を見開き、口をパクパクさせていた。

「なんだい?」

 Mr.ウーンズは穏やかな笑顔でミイヤを見た。ミイヤの顔を赤くなったり青くなったりする。

「俺……俺は」

 言葉にならない呟きがかすかに聞こえた。


【つづく】

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