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第四十六話 パーティーのお誘い

 驚きで目と口が全開のオト再び……withラーコン。

 オトと並べると何でもかわいく見えるから不思議だ。


「な、なんとアガートラムに外形呪詛の非嫡出子、ですと?

これはガンエデンの本家の方に知られたら大変なことになりますぞ。

エウラリア様、私は聞かなかったことに……」


「ほらぁ~、動揺しちゃってる。ちょっとは自分の立場を考えなよ。

ゴメンねオト、大人は嘘をつく生き物なの。

しかも今のはたちの悪い冗談っていうのよ?」


「そう、ただの冗談さ。場を和まそうと思っただけだ。

改めて紹介するよ、こちらは織工組合の組合長ラーコン。

そして彼女は今回の件で助言をもらっている魔術師のクルス。

オトは本当に彼女の子供だ。オト、挨拶できるかな?」


 オトはまだちょっと混乱してるけど、それでもラーコンに

 ちまっと頭を下げる。なんてけなげ。


「こんにちは、オトです。おヒゲ、すごいですね」


「ほほう、わかるかね。知恵の象徴とも言うからね。

私に相応しいと──」


「めがスケベじゃない。それでいいものつくれるの?」


「な、何を言ってるのかな~、この子は。ごめんなさいね、

素敵だって言いたかったみたい。あの、ラーコンさん、よかったら

少しお話をさせてもらっても?」


「ヒュッケ君のことですかな? それならエウラリア様と──」


「いえ、この工場のことです。何人くらいお雇いに?」


「んん? 確か三十人ほどかと。ガンエデンから最新の織機を

取り寄せているところでしてな、もっと増やせますよ」


「外形呪詛の工員はいます?」


「は? 詳しくは知りませんが……

エウラリア様、これはいったい何の話です?」


「さあ、僕もよく知らない。でも彼女には彼女の考えが

あるようですから、できるだけ答えていただけると嬉しい」


「たいしたことじゃないんですよ、ラーコンさん。

あと一つ、この近辺で起こっている行方不明事件ですが、

組合に被害者の家族はいますか?」


 さすがに攻めすぎだったかしら。

 オーロラも苦笑して軽くため息ついてる。


 ラーコンもオーロラの手前、怒りをあらわにすることはないけど、

 明らかに態度が硬化した。


 ヒゲ自慢してたおじさんとは別人。

 冷徹な経営者の顔。容赦のない支配者としての側面。


「なんのつもりかは知らんが、むやみに疑いを振りまくのは

物事の本質が見えていないからでは? 無用な混乱をうむ前に、

自分たちの同胞を疑えと協会の連中に報告しておけ。

エウラリア様、今日はこれで失礼いたします」


 オーロラに一礼するとラーコンは工場に戻っていく。

 私のことはもう存在すら忘れてるね。


 ああ怖い。オーロラが一緒じゃなかったらどうなっていたことやら。


「クルス、おこられた? オトのせい?」


「まっさかー、私がラーコンさんを悪者あつかいしちゃったのよ。

何もしてないのにお前が悪いって言われたらイヤでしょ?」


「うん、イヤ。クルス、ちゃんとあやまってね?」


「まったくだ。大事な支援者になんてことをしてくれるんだい?

ヒュッケが議席を得るには彼の協力が不可欠だ。

錆びついてた愛想笑いまで引っ張り出したのに」


「しってる! おあいそ。おかねもらいにいく。

オーロラ、おかねもらった?」


「よく知ってるね、オトはえらいなあ。よいしょっと」


 オーロラがオトを抱き上げて歩き始める。

 後方を警戒しろと目線で伝えながら。


 追跡者がいる?


 抱っこされたオトを支えるついでに片目の視覚を拝借。

 『感覚共有』でオトの左目で見るものが私の左目でも見えます。


 3D酔いみたいになるから苦手です。


 オーロラに抱っこされてるオトの視界は自然と後方に向く。

 子供を利用するなんてオーロラも大概だ。


「かなり距離を置いて一人……かな。あれが背広着て山手線乗ったら

もう二度と見つけられない自信ある」


「なんの呪文だい?」


「ねえこれってあなたがつけられてるんじゃない?」


「こっちもいろいろあるんだよ。でも利害が一致している間は

問題じゃない。それより君だ。行方不明事件だって?」


「まあね、ノエルから何か聞いてない?」


「彼女は秘密主義だからね。むしろ君とそんなに情報を

共有してるのが驚きさ。僕は事件のことより、

どうしてノエルが君をそこまで気にかけているのかが気になる」


「女同士で術式論に興味がある。これ言わないとわかんない?」


「口ぶりまで似てるときた。

それで、大事な支援者は事件の容疑者なのかい?」


「……尾行が二人に増えた」


「おめでとう、君もマークされた」


「誰のせいよ……私のせいか。あ、オト、寝ないで、起きてて」


「うん、オーロラ、いいにおい……」


「オトの身体が温かくなってきてる」


「寝るなー。がんばれー。織物工場は被害が集中してる貧民街に

近くて、部外者が立ち入りできない広い敷地を所有してる。

ラーコンが、というより工場関係者に疑いを持ってるの」


「それだけでラーコンを怒らせるとは、ずいぶん乱暴な調査だねえ。

迷惑だとは言わないよ?

こっちに影響のない範囲でやりたまえ、ともね」


「言ってるよ。それに、ちゃんと収穫はあった」


「へえ、いま考えたんじゃなく?」


「バカにしないで。ラーコンは私の同胞……

つまり魔術師を疑えと言った。彼は知ってるのかも。

人をさらっているのがなんなのか」


「なんなのかな?」


「異界の生物が使役されてる。そんなことできるのは──」


「魔術師くらいだ。錬金術師の道具でそういうのもあるが、

出回れば必ず噂になる。とはいえ、ラーコンが知っているという

確証にはならない」


「まあね。でもノエルに話せば、彼を見張るくらいはするでしょ」


「ふうん、話は通ってるってわけか。僕抜きで大事な話を

進めるのは感心しないね」


「そっちこそ、ヒュッケのことでは私を外してる」


「僕のは優しさだよ? わざわざキツネの巣に手を突っ込む

なんてまね、君にはさせられない」


「私のは配慮よ。ねえ、私たちどこに向かってるの?」


「僕たちの家さ、マイハニー」


「ほざくな、家無し。どうするの? ワイルズまで案内する?

どうせすぐに知られるだろうけど」


「僕たちの甘い思い出を無粋な連中に汚させる気はない。

はい、オトが寝たよ」


 涎垂らしたオトを私に抱っこさせ、

 オーロラは曲がり角の先に姿を消した。


 油断したなあ。


 いくらオーロラでもこんな人目のある場所で動いたりしないって

 勝手に決めつけてた。


 オトの天使の寝顔で癒されちゃってたし。


 呑気に角を曲がったらオーロラの背中はどこにもナシ。


 すぐ横の窓のところに蹴った跡みたいなのがついてて、

 思わず屋根のほうを見上げた。


 屋根伝いに何か飛んでった。


 慌てて引き返し、尾行のほうを見ると一人はもう倒れてる。

 周りの人も何が起こったか気づかないくらい静かに。


 止めようとはしたんだよ?

 だってもう一人の尾行がオーロラに手を出してたから。


 腕を交差させるようにオーロラの一撃が喉に。

 声が出せなくなる。つまり悲鳴もあげられない。


 オーロラが軽く顔面をはたいただけに見えたのに、

 尾行はいつの間にか腹を打たれてて身体を曲げる。


 第三者視点でも速すぎて見えないって……

 それはもう魔法では?


 尾行は立つこともできずにうずくまってしまった。


 さすがに二人も倒れると気づく人もいて、オーロラは

 その人たちに妖精騎士団のエンブレムを見せる。


 あ、もうそれだけで誰も何も言わないんだ……


「ちょっと何やってるの? 大事な支援者じゃなかったの?

これじゃ敵対行為と思われても仕方ない」


「アガートラムは友に何も求めない。服従以外は」


「素敵なメッセージね。家訓にしたら?」


「家訓だ」


「家のことどうこう言うわりには、あなたもしっかり

アガートラムってわけね」


「この家訓をあいつら自身に言ってやるのが僕の夢だ」


 メッセージ以上に素敵な笑顔。

 闇が深いわ、アガートラム。


 私は一応、尾行さんたちの状態を確認。

 外傷なし、呼吸に問題なし。綺麗に意識だけもぎ取られてる。


「殺しはしないさ。そこまで波風立てるつもりはない。

ただ、君にまで尾行をつけるっていうのは、少しやり方が

気に食わないね」


「大目に見てあげたら? 疑り深い人間のほうが盲目的な

人間よりは頼りになるものよ」


「君が言うと説得力がある。そいつらは放っておいていい。

それより一緒にパーティーに行かない?」


 そんないきなり女の子同士で誘うみたいに言われても。

 しかもパーティーを楽しもうって顔じゃないし。


 やられたらやり返さずにはいられないんだね。


 それがアガートラムの現当主ときたもんだ。


 業が深いわ、アガートラム。

読んでいただき、ありがとうございます。

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