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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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村長無双 ~魔王討伐に旅立った老人は元剣聖だった~

作者: 結城 からく
掲載日:2025/01/28

 私は泣きそうな顔で村の人達に訴えかける。


「ねえ、どうして誰も村長を止めないの!?」


 その問いに対する皆の反応は冷めたものだった。


「村長が自分で行くと言ってるし……」


「別に構わんだろ」


「あたし達は応援してるのよ」


 誰も私の意見を真面目に聞いていない。

 白けた空気が漂っていた。

 私は悔しさに下を向いて震える。


(村の皆がこんなに薄情だったなんて……)


 そこに村長が現れた。

 村長は背中を丸め、杖をつきながら村の外へと歩き出す。

 途中で振り返った村長は、気さくな様子で呼びかけた。


「では皆の衆。行ってくるぞい」


「待って!」


 私は我慢できず村長に駆け寄った。

 村長は首を傾げて尋ねる。


「どうしたんじゃ、エルラ」


「どうしたもこうしたもないでしょ! 村長が魔王討伐に向かうなんておかしいよ! 死にに行くようなものじゃないっ!」


「ほほう、その話か」


 村長は顎髭を撫でつつ微笑んだ。

 それから目を細めて語る。


「老い先短い人生……最期くらい世の役に立ちたいんじゃ」


「村長……」


「儂が去れば、口減らしにもなるでな。村のためにもこれが最善の選択なんじゃよ」


 どこか寂しげな村長を見た私は、一つの決意を固める。

 それをそのまま村長に告げた。


「じゃあ私も魔王討伐に行く! 村長を手伝うよ!」


「何を言っておる。危険な旅なんじゃぞ」


「だからこそ村長を助けるの! 魔術だって少しは使えるし大丈夫!」


 私は手の上に火球を生み出す。

 習得したばかりの魔術だけど、もう制御は十分にできている。

 村一番の魔術師と褒められることも多いのだ。


 私の覚悟を見た村長は悩む。

 同行させるか迷っているのだろう。


 ダメ押しに別の魔術を披露しようと思ったその時、上空に漆黒の馬が出現した。

 馬は禍々しい翼で飛行し、全身から強大な魔力を放っている。

 魔族だ。

 それも上級と呼ばれる個体だろう。


 大笑いする魔族は、私達を見下ろして宣言する。


「ギャッハッハッハッハ! 俺様は魔王軍の大幹部ゼアル! 今日からこの村は俺様のものだァッ!」


「この村は皆のもんじゃ。占有されると困るのう」


 村長が平然と苦言を呈する。

 笑うのをやめた魔族ゼアルが、殺意を込めて村長を睨んだ。


「クソ爺が……俺様に歯向かった罰を与えてくれるッ!」


 次の瞬間、ゼアルが急降下してくる。

 膨大な魔力を帯びた巨体が村長に衝突する寸前、胴体がぱっくりと二つに割れた。

 内臓をばら撒いて地面を転がったゼアルは、混乱した顔で口を開く。


「…………あ?」


 ゼアルに村長が歩み寄る。

 枯れ木のような手にはいつもの杖が握られていた。

 杖の持ち手が外れて、隙間から僅かに刃が見えている。


 仕込み杖だ。

 まるで見えなかったけど、村長がゼアルを斬ったらしい。

 村長は大げさにため息を洩らす。


「つまらんのう。近頃の魔族は威勢ばかりで弱くなっとるな」


「ちょっ、おい! 待て待てクソ爺っ! お前は一体何者——」


 村長の杖が動いた。

 ゼアルの首が刎ね飛ばされた。

 やっぱり速すぎて何も見えなかった。

 村長は杖を下ろしてぼやく。


「害獣とは対話せんわい」


 気が付くと私は地面に座り込んでいた。

 驚きの連続で腰を抜かしてしまったのだ。


「そ、村長がこんなに強かったなんて……」


「ああ、エルラは若いから知らないか」


 後ろにお父さんが立っていた。

 私はお父さんに訊く。


「知らないって何を?」


「村長は先代勇者パーティの剣聖だったんだ。居合の達人で、どんな魔族も一太刀で倒したそうだ。実力は健在……どころかさらに強くなってるな」


「だから誰も村長が旅に出るのを止めなかったんだ……」


「村長よりも、敵対する魔族が心配したくなるよ、はっはっは」


 お父さんは暢気に笑う。

 それを見た私は 自分の言動を振り返る。


(魔王軍の大幹部を瞬殺って、私が手伝う必要ないじゃん)


 そう思ったのに村長がこちらに向かって手を振っていた。

 村長は歩きながら私の名を呼ぶ。


「エルラよ、出発するぞー」


「えっ、あっ、はーい」


 反射的に立ち上がった私は、村長と共に故郷の村を発つ。

 自分なんかいらないと思ったのに断らなかったのは、これからどんな展開になるか気になったからだろう。

 こうして私は最強の剣聖と旅をすることになった。

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― 新着の感想 ―
リゼンかと思ったけど、違う様でしたね。仕込み杖というのがナイスです。
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