5-14
夜闇の中に、1つの光が灯った。
その光に浮かび上がったのは豪奢な服を着た人物と質素なトゥニカを着た人物だった。
「ご連絡有難うございます。良い品が入ったそうですね?」
「中々に良い物ですよ。足もつきません。」
「それは良いですね。・・・それはそうとちょっと宜しいですか?」
「何でしょうか?」
「お宅に在籍していらっしゃる、ある方をお出ししてほしいのですよ。」
「誰でしょう?」
「この方です。」
「ああ、これですか。構わないですよ。どの様にします?」
「死体になればいいので、受け渡しの時に上手くやりましょう。」
「お願いしますね。」
「では、また。」
「ええ、良いお取引でした。」
ナトライア孤児院にシオンが入って1月が経った。
「ねぇ、マグノリア。」
「何ですか?」
入った頃は男口調が当たり前だったシオンは、ちょっとずつではあるが女言葉を意識し始めてきた印象を得た。
「1月此処で暮らしたけど、ここって変わってるね。」
「何でですか?」
「いや、普通は知らないけど、ここって魔法に関してはあんたが親切に教えるし、計算もアンナが分かりやすく教えるから、今ここから出ても多少は生きていけそうな感じがする。」
「それは気のせいですよ。この程度で市政で暮らせるなど、世間は柔くはありませんから。」
「それは判ってる。だから『いけそう』って言った。」
「すみません。」
「謝る必要性あったかな?」
そんな話をしながら今日も2人は作業をしてた。
「雑草抜きってこんな物ですか?」
「そうですね。それ位で良いと思います。」
今日は中庭にある畑で雑草抜きをしていた。
「この畑の物も夜に出るのか?」
「収穫できればですけどね。大体はその前に他の子が悪戯で取っちゃうんですよ。」
「やめて欲しいな、おかずが減る。」
「まあ、食材購入時にコレを当てにしない様にしてますけどね。」
「じゃあ、なんで育ててんだよ?意味無いだろ?」
「生き物の重要性を知るためですよ。何かを育てるって言う事は、そこに責任を持つと言う事ですから。」
その言葉を聞いたシオンは、怪訝な顔をしながら質問した。
「・・・魔物相手でも性善説だっけ?それをやれってのかよ。」
「必要であればですね。貴方も必要の無い喧嘩は嫌いでしょ?」
「まあな。不必要な事をするとろくでも無い事が起きやすいからね。」
「それと同じですよ。魔物相手に殺すなと言いませんが、良心の呵責が在れば一度立ち止まる事の重要性を解らせる為に、作物を育てていますね。」
「成る程な。」
そう言う話をしながら畑の世話をしていた二人だったが、そんな場所にマーガレットが現れた。
「シオン?シオンは居ますか?」
「司祭、ここです。」
「其方に居ましたか。今、行きますね。」
そしてマーガレットは出会いざまに話し始めた。
「シオン、入って1月が経ちましたが此処での生活はどうですか?」
「路上生活よりは良いと思います。」
その回答にマーガレットは怪訝な顔をした。
「その言い方は何処か不満でも?」
「不満と言うか何というか・・・刹那過ぎた反動で、此処での生活が嘘みたいに思えてくるんですよ。」
「そんな物ですよ。・・・さて、本日は別の用事を伝えに来ました。」
「何ですか?」
「貴方に養子縁組の話が来ました。」
「はぁ・・・はぁ!?」
その話を聞いたシオンは驚いたが、それよりも横で聞いていたマグノリアの方が驚いていた。
「お待ちください司祭!入って1月の子が何故すぐに養子縁組なんて事が起きるのですか!?」
マグノリアの言っている事は正しかった。
シオンより前に入っている子は沢山居て、その子達が縁組相談で見初められる機会の方が多いのに、入って1月のシオンが見初められる事がおかしかった。
「それなのですが、込み入った事情がありましてね、ここでは言えないのです。」
「・・・納得のいく説明をお願いします。」
「マグノリア、貴方には出来ません。この話はシオンだけです。」
「そんな!?」
「行きますよ、シオン。そこで話しますが、話した内容は他言してもかまいません。」
有無を言わさずにマーガレットは孤児院へと消えていった。
「解りました。・・・なんか御免。」
「良いですよ。ただ、気をつけてくださいね。何か裏があるかもしれませんから。」
「解ってる。こんな変な話、あってたまるかよ。」
入ってから久しぶりに警戒心を強めたシオンは、マーガレットの後を追った。
切りが良いのでここで切ります。
またちょっと更新が切れるかもです。
ちょっと戦国時代で忍者してきます。
畑より動物の方が良くない?問題
この世界、魔物がいるんですよ?
今まで育ててきた可愛い生き物が実は超危険生物でしたなんてザラですからね。