5-12
食堂横の厨房に着いた2人は、先に来ていた人達に挨拶した。
「今日から新しい子が入りました!」
「いや、何でそんなテンション高いんだよ?」
「新しい事を始めるのはワクワクしますよね!それと一緒です!」
「普通は恐怖一辺倒だよ・・・。」
中にはシオンと同じ位の子供数人と、引率の大人1人だった。
「マグノリア、その子の事を言ってるの?」
「そうですよ。今日入院したシオンちゃんです。皆、よろしくね~。」
中に居た子供達がわらわらとシオンを取り囲み、あれやこれやと聞いてきていた。
その横で、マグノリアと引率の大人が夕飯のメニューの事で話し込み始めた。
「それでフリージア。今日って何作るの?」
「野菜スープと支給されたパンは決まってるから、後なにか1品欲しいんだけど何が良いかな?」
「鶏肉は?一昨日、結構な数仕入れたよね。」
「それね。味付けは・・・何だっけ?てりゅや・・・」
「照り焼き?」
「そう、それ。簡単らしいし、調味料もそろってるしね。」
ロイズ王国内に醬油や味醂の製造所は無く、本来これらは渡来品なのだが、
「調味料、全部渡来品なのに、売れそうに無いからって全部、ほぼタダで貰っちゃったんですよね。」
他の調味料を購入する際に在庫処分感覚で纏めて貰ってしまった為、余ってしまったのだった。
「何で使い方の判らない調味料なんて仕入れちゃったんだろう?」
「他所の商店で売れてたから『自分も!』ってやっちゃったらしいですよ。」
「絶っ対に失敗する売り方じゃないですか。最初のお客さんは信用の観点からそこで買ったんだろうしね。」
「あはは・・・。で、でも良いじゃないですか。その代わりで私達が少し得をしましたし。」
「その私達でもどう使うかは知らなかったんだけどね。伝手が広いのね、マグノリア。」
「ええ、まあ。(ありがとう、ルインさん。)」
尚、最初の商店で買ったのはルインで、彼はそこで買い続けている為、売れていたのであった。
「さてと・・・みんな~、そろそろ始めますよ~。手伝ってくださいね~。」
「「「は~い。」」」
号令一発で、揉みくちゃにしていたシオンから離れると、子供達は配置に着いて準備をし始めた。
一方、揉みくちゃにされたシオンはその場に座り込んでいた。
「何なんだよ彼奴等は!」
「洗礼ですよ。大体の子はこうやって揉みくちゃにされますよ。」
「やられた事の仕返しかよ・・・。」
「不貞腐れないの。じゃあ、一緒に食材を切ろうか!」
「・・・ついさっき迄浮浪児やってた奴に食材渡すのか?」
「食べても良いですけど、そうしたら周りから総スカン食らいますよ?」
その言葉の後にちらりと周りを見たシオンだが、さっきまで和気藹々と話していた子供達が飢えた獣のような眼をしていた。
(こえーよ。)
『確かにこんな目をした奴らから上手く出し抜いて食材を持ち去るのは困難だろう』とシオンは思った。
「何すりゃいいんだよ?」
「そうですね。・・・見本を見せますので、その大きさに切ってください。」
そう言って人参を掴んだマグノリアは厨房台の近くに行き、人参を軽く洗うとそのまま空中に放り投げた。
「はぁ?なにやって・・・」
「【乱風刃】」
そして魔法を発動させると、ニンジンが一口大の乱切りになって落ちて来た。
「じゃあ、やってみましょう!」
「できるか~~!!!」
トンデモ曲芸を目の前で見せられたシオンはその場から逃げ出そうとしたが、何人かの子供が行く手を阻んだ。
「もどれ~。」「出てくな~。」「やれ~。」
「いや、出来ね~よ!どうやってんだよ、アレ!」
「うきゃん!」
反論していたら背後からマグノリアの悲鳴が聞こえて振り返った。
「あ~・・・シオン。この魔法馬鹿がカッコつけようとやった事はやらなくていいから、この包丁とまな板でこの人参をこの位に切ってくれ。」
フリージアが片手にまな板と包丁を持ち、もう片方の手で人参と見本を渡してきた。
「こん位のをナイフで切りゃあ良いのか?」
「包丁な。まあ、器具は追々覚えていきなさい。これからここで生活していくなら、覚える事は沢山あるからね。・・・ほら、他の子も手を休めない。良い見本が出来たから、その位に切ってね。」
未だに蹲るマグノリアを無視し、薄情にも作業に戻って行く子供達だった。
切りが良いのでここで切ります。
まだ体調不良が止まらん!!!(熱無し、鼻水止まった、後は咳だけ!)
フリージアの設定
普段は気の良いお姉さん、切れるとヤンキー。(この設定を書いた時にアイマスの向井か?と思ったぐらいです。)