5-10
孤児院に着いた3人は建物に入ると、分かれようとした
「アンナ。申し訳無いのですが「良いよ~。」世話・・・お願いします。」
「私の方が良いでしょ~。未だに怖がられてるし~。」
実際に、連れて来た子供は2人の中間の位置に居たが、若干アンナの方に体が寄っていた。
「何でなんでしょう?」
「普通にさっきのだからな。呆けたのか?姉ちゃん?」
「事実を言わないで~。」
壁に寄りかかり泣き崩れる真似をするマグノリアだが、アンナはお構い無しに子供を引き連れて脱衣所に向かって行った。
1人残されたマグノリアは直ぐに演技を止め、院長室に向かって歩き始めた。
(まずは院長に報告ですね。その後はあの子の部屋の選定、料理の数の追加に明日からのスケジュールの調整をして・・・ああ、忙しさで目が回りそう。)
色々と考え事をしながら院長室に着いたマグノリアは、部屋のドアをノックした。
「マーガレット司祭、マグノリアです。入ってよろしいですか?」
「ちょっとお待ちなさい。・・・どうぞ。」
入室許可をもらったマグノリアは、中に入った。
室内は必要最小限と言った風な間取りだったが、机の上の書類だけがかなりの高さまで積まれていて、其処だけが異彩を放っていた。
「お仕事中失礼します。本日、帰院途中にストリートチルドレンを1人、この院に入院させました。」
「身綺麗の善行お疲れ様です。・・・それで、その子の名は?」
「当人に確認したところ、無いとの事です。」
「解りました。名前を考えないといけませんね。・・・現在その子は?」
「かなりの汚さだったので、アンナが湯船に連れて行きました。」
「・・・大丈夫でしょうか?アンナで。」
「申し訳ございません。入院させる為の一悶着でその子に怯えられてしまったので、私では無理でした。」
「何をやったかは想像できます。流石、教国魔法師団に入団打診を受けた方ですね。」
そう言われた瞬間、マグノリアは冷える様な視線をマーガレットに向けた。
「私はそのようなモノを受けた覚えはありません。」
「・・・そう言う事にしておきましょう。・・・まあ大丈夫でしょう。アンナもあれでいてしっかり者ですから。」
「そうですね。今日でもかなり助けられました。」
「そちらの報告もこのままお願いします。」
「はい。肥料調達の為に西区の園芸店に行きましたが在庫が無く、北区まで足を運びました。」
その報告を聞いたマーガレットは怪訝な顔をした。
「北区?何故、在庫が無かったのですか?」
「北区で情報を収集した所、数日前に北区の農場で爆発事故が起き、その原因が肥料だったそうです。」
「肥料でですか?・・・まさか、黒色火薬でも作っていたのですか?」
「そのまさかです。その為、完成品の肥料が他の農園に買い取られる羽目になったのでしょう。」
その報告を聞いたマーガレットは、深いため息をついた。
「・・・頭の痛い事態ですね。肥料確保は諦めるべきですか。」
「それにつきましては知り合いの魔法薬店の店主の伝手で肥料を入手できる事になりました。」
「値段や教義違反の物を混ぜられる可能性は?」
「無いと思います。」
「では、いいでしょう。これで貴方への罰は終わりです。」
「有難う御座います。」
礼をしたマグノリアは、要件が終わったので退室しようとしていた所に声を掛けられた。
「マグノリア、今からでも魔法騎士団に転入「する訳がありません。」か?駄目ですか。」
「私はどうも血生臭いのがあまり好きでは無いようですので、魔法師団に入る気はありません。・・・この話は何度目でしょう?」
「それでもですよ。私としては才能の無駄遣いだと思ってね。」
「適性と才能は切り離すべきですよ。・・・失礼いたしました。」
振り返る事無く出て言ったマグノリアに、マーガレットはため息を吐いた。
「あの強情ささえなければもっと良い所を紹介できたのに・・・。それよりも・・・」
マーガレットは山になっている書類では無く、山の傍に隠していた書類を取った。
「こっちの方を進めないとね。丁度良いのも来ましたし。」
書類を見ていたその顔は邪悪に満ちていた。
切りが良いのでここで切ります。
不穏な空気を出していきたい。(切実)
教国魔法騎士団って?
教国に存在する騎士団の1つ。
高度な魔法を使える者だけを集めた集団。
他国の人でも基準を満たせば勧誘してくる。
作中では現状マグノリアとルインが入団打診された。(2人共拒否をした)(ルインは治療の道に行きたかった為)