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異界暗殺業  作者: 紅鈴
聖女
92/185

5-9

「さっきの人誰~?」


アンナの当然の質問を受けたマグノリアは、何と答えたら良いか迷った。


(正直に言えばいいのでしょうが、そうなると何処で出会ったのかを言わなければなりませんね。)


ルインとの出会い方を教えようとすれば、秘密にしている事を話さなければならないが、上手い躱し方が見つからなかった。


(前と同じように散歩中に声を掛けられたでいいですね。)

「夜に散歩しているのは話しましたよね?」

「さっき言ってたね~。」

「その時に会ったんですよ。」

「・・・大丈夫だった~?」

「何が?あの方は教義違反こそしていますが、普段の態度は結構紳士ですよ。」

「教義違反って事はさ~、何か問題があるのかな~と思って~。」

「・・・余り声を大にして言えませんが、所謂異端者です。」

「大問題だ~!」

「ただ、この国の国王陛下が彼を保護しています。何かあれば王国が教国と戦争状態になります。」

「うわ~、結構重要人物だ~。」

「そうですね。そんな重要人物なのですが、あのような人なのでちょっと説教してしまうんですよね。」

「細かすぎると思うんだけどな~。」

「細かい位が丁度良いと思いますよ。」


そんな事を言いながら孤児院に向かっていた2人だが、東区に入った瞬間に事態が変わった。

数人のストリートチルドレンが2人を立ちふさがる様に囲ったのだった。

そして全員の手には、何処で手に入れたのかが不明な、錆びたナイフが握られていた。


「食べ物か金を出せ!!!」


恐らくこの集団のリーダーである少年が、ナイフを突きつけながら迫って来た。


「どうする~?」

「【指定吸引:ナイフ】」

「うわぁ!」


魔法を唱えたマグノリアの掌の上にナイフが集結し、子供が全員前に倒れそうになっていた。


「駄目ですよ~、こんな危ないのを人に向けたら。【空間圧縮】」


次の魔法を唱えると掌の上にあったナイフがどんどん小さくなっていき、最終的には無くなっていた。

それを見た子供達は恐れおののき、


「化物だ~!」


1人が背後に向かって走り出すと、同じように他の子供が逃げ出し始めた。


「ばけ・・・誰が化物ですか!ちゃんとした原理のある魔法です!」

「その言い訳は~苦しいんじゃないかな~?」

「言い訳って・・・。」

「普通に考えたら~持ってた物が勝手に飛んでって~、集まった物がどんどん小さくなってったんだから~、目線としては化物だよね~。」

「うぐぅ。」


アンナの解説にへこんだマグノリアだが、その場にへたり込んで動かない子供を見つけた。


「・・・よし!・・・怖い物見せたよね?でも、貴方達が悪いのよ。集団で武器を突きつけられたら、抵抗はするでしょ?それと一緒よ。」

「やり方が過激~。」

「アンナ、五月蝿い。」


そう言いながら1歩、子供の方に近づくが、その1歩で2~3メートル後退りされた。


(やっぱり駄目ですか~~~!!!)


内心叫びたいのを隠しつつ、出来るだけにこやかに近寄って行くが、どう見ても肉食獣に近寄られる草食獣の図であった。


「は~い、ストップ~。・・・君も逃げようとしないで~。」


見かねたアンナが助け舟を出す為に少年に近寄った。


「あのね~、私達は~教会の人なの~。そこまでは判る~?」

「・・・何となくは・・・判る。」

「判るんだ~。じゃあ言うけど~、私達は基本~、お金なんて持たないの~。この服着てると~、色々と嫌味を言ってくる人がいるから~。」

「正確に言えば違いますがね。」


教義の関係でお金自体は持っているが、その額はかなり少なく、最大で銅貨が3枚まで持てるだけであった。

ただ、この金額だと街中での買い物がほぼ出来ないので、無いと言った方が早いのであった。


「食料の買い付けも結構大変なんだよ~。1ヶ月の予算から~、大体此処までって商店と相談だから~、頑張って値切らないと~、み~んなお腹すいちゃうんだよ~。」

「御かげで目利きと交渉術と暗算能力が上がりましたしね。」

「だから~、結構しんどいんだよ~。正教会所属って~。」

「ここら辺の事実は余り公開されてませんからね。」

「俺達だって、その日暮らしで必死さ。」


この街の路上生活者はその日死んでも誰も気にかけないどころか、死体を使って何かをやってしまう者が数おり、かと言って処理にも手間がかかるので、基本は町の外に追い出そうとするが、其処ら辺を分かっている者達で徒党を組み、何とか逃げ果せるスペースを確保するのが常識である。

だが、そのスペースも限られているので、争奪戦や侵略戦が多発しているのが現状であった。


「知ってるよ~。でも~、君だけは1つ選べるよ~。」

「・・・何だよ、それ?」

「現在、私達の居る孤児院に空きが在るんですよ。来ませんか?」

「はあ?何言ってんだ?」


2人はいきなり、襲ってきて逃げ遅れた子供を勧誘しだした。


「教義上仕方ないんだよね~。」

「貴方の様な子供の勧誘も、身綺麗の為の善行を積む修行の1つですから。」

「だから~、どうする~?」

「・・・・・・・・・ぱい・・・」

「ん~?」

「腹いっぱい食えんのかよって聞いてんだよ!」

「流石に他の子もいますから満腹とはいきませんが、少なくとも腹8分位ならいけますね。」

「寝床は!?」

「豪華ではないよ~。でも~、少なくとも路上生活よりは奇麗~。」

「行く!その方が今より良い!」

「決まりですね。じゃあ一緒に行きましょう。」


そうして歩き出した3人だが、ある程度歩くとマグノリアが思いついたように聞いた。


「貴方のお名前は?」

「無い。いつの間にか路上で寝てた。」

「珍しくも無いね~。じゃあどうしよう~?」

「何がだよ?」

「名前が無いとダメなんだよね~。誰だか確認し辛いから~。」

「適当で良いじゃん。」

「その適当が大変なんだよ~。前の院長が適当に付けた名前のせいで~同じ名前の子が3人居たんだから~。」


その3人は識別の為に別の孤児院に行ってもらったが、そこまでいくのが大変だった。

何せ同じ名前が、同じ場所で共同生活しているのだ。

お説教も何もかも別々に確認しなければならなかったが、子供のずる賢さで苦労をした2人は同じ轍は踏まないように気をつけるようになった。


「ふ~ん。じゃあカッコいい名前がいいな。」

「その為にまずは性別の確認からですね。ですので、院に着いたらお風呂に入りましょう。」

「風呂ってなんだ?」

「体を奇麗にする所~。要は水浴び~。」

「うげぇ、俺やなんだよな~水浴び。」

「我慢してください。それが終わって、色々とやってもらったら、食事が待ってますよ。」

「じゃあ仕方ない。我慢しよう。」


仰々しい態度の子供に2人は微笑み、引き連れながら孤児院に向かった。

切りが良いのでここで切ります。

現金ですよね。子供って。


前院長如何したの?問題と使用魔法

前院長が死亡してマーガレットが院長になりました。

(死因は老衰です。)


指定吸引・・・系統外系統の魔法で指定した物を引き寄せる。(吸引の力と範囲は魔力による)(吸引対象は術者の知識依存)

空間圧縮・・・攻撃魔法空間属性で指定した範囲の圧縮。(範囲と圧縮スピードは魔力次第)

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