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異界暗殺業  作者: 紅鈴
聖女
91/186

5-8

そんな事を話していると、後ろのドアが開いた。


「メリッサ、煙草・・・お邪魔しました。」


店に入ろうとしたルインは、中の状況から見て、お説教を聞きたくなくて逃げ出そうとしていた。


「いや、帰るな!煙草だろ!すぐ出すから待ってろ。」

「ルインさん、逃げないでください。」


そして事情を察したメリッサと『煙草』と言うワードに反応したマグノリアが、ルインを呼び止めた。


「ルインさん、前までは治療院に居た貴方が、何故そう簡単に体を壊そうとするのですか?」

「・・・実は治療院に居た時も隠れて吸ってました。」

「治療院の方は何をしていたのですか!?」

「俺の癖が原因だ。ストレスが溜まると、口の中に何か入れないと余計にイライラしてな。だから何かないかと探してたら、煙草に行きついただけだ。」

「煙草以外の方法は無かったのですか!?」

「無い。色々試した結果だ。」


ルインとしては飴が一番良いのだが、この世界では砂糖中心の甘味が高い為、気軽に買えないから代用品を探した結果であった。


(マジで高いんだよな~。誰が1個銀貨1枚も出すんだよ。費用対効果が合わんわ!)


コンビニに入ればチュッパチャップスが在った前世が恋しくなるルインであるが、理解してもお説教が止まりそうにないマグノリアを止める為に口を開いた。


「頼むから落ち着いてくれ。俺の癖を知ってる奴らは黙認してたんだよ。それに、治療院の中はそっちが考えてるより業務が辛いぞ。」

「こちらも子供達の世話は貴方の想像よりも大変ですが。」

「死にかけの人間の治療が辛くないとでも?」

「・・・申し訳ありませんでした。」


ルインの反論を聞き、流石に言い過ぎたと思ったマグノリアは素直に謝った。


「いや、こっちも悪かった。嫌味に聞こえたらすまない。」

「無神経だったのはこちらです。確かに精神的負荷はそちらの方が上でしょう。」

「判ってくれ「ですが。」・・・駄目だった。」

「それを免罪符にやって良いと言う訳では御座いません!どうにかして自制をきかせて、別の方法を模索する術を身に付ければ済む話ではないですか!何故それをしなかったのです!?」

「出来たら苦労しね~よ。」


マグノリアの正論の説教に反論をしたルインだったが、その反論に反応したのはアンナだった。


「駄目だったの~?」

「駄目だったな。他の方法を考えたんだが、ペンは咥えていても落ち着かない、飴が一番良いんだが費用対効果が合わない。あれもこれも試して辿りついたのが煙草だっただけだ。」

「だったら~、仕方ないんじゃない~。」

「・・・トゥニカ着てるって事は教会員だよね?戒律をどう思ってるの?」

「必要なら~破る物~。じゃないと~成長できない~。」

「アンナ!!!?」


元貴族とは言え、現状協会に所属しているアンナからの一言を聞いたマグノリアは驚愕した。


「だってそうでしょ~。身綺麗なんて絵空事だよ~。無垢なんてもっと無理~。だから~、必要なら破らなきゃ~、奇麗になれないと思う~。」

「元治療院所属の俺もそう思うよ。治療してると、戒律が邪魔になる時が多くてな。隠れてこっそり戒律違反なんて、数え切れないほどやった。そのおかげで救えた命がたくさんあった。」

「だよね~。私もそう思う~。」

「貴方とは話が合いそうだな。」

「どうだろ~?私は元貴族だったから~、そう思うだけ~。」

「アンナ、其処までにして・・・。」


これまで以上に教会の批判に繋がりかねない事を言いそうなアンナを止める為に言葉を紡いだマグノリアだが、()()()()()()()()()()()


「兎に角、理由は判りましたから、体の健康に気を使つかってください。」

「それなんだけどマグノリアさん、この煙草、健康に良い方よ。」


件の煙草を持って来たメリッサは、マグノリアにそう告げた。


「複数の薬効の御かげで、煙が肺に溜まっても病気の危険性は少ないのよ。必要な薬草も北区の薬草販売所に行けば揃えられるから、値段も良心的で、匂いも良いしね。まあ、煙を吸う事が余り良くないから、其処だけは多少、危ないかな?」

「元治療院の治療者と錬金術師兼魔法薬屋の合作だからな、そこら辺の配慮はしている。」

「ふ~ん。何で売らないの~?」

「一般販売すると、今ある煙草を駆逐しかねないからかしら。」

「そうなったらここの魔法薬店が裏組織に襲撃される恐れがあるな。」


教会の教義違反に繋がる物は一部を除いて販売は自粛されており、それを駆逐するような物が出ると、各組織が主犯を血祭りに挙げる事が多々あるのだった。


「危ないね~。」

「アタイももう少し大手を振って売りたいけど、そんな事態は御免被りたいのよ。・・・銀1ね。」

「ほいよ。」


メリッサに銀貨を渡したルインは商品を受け取った。


「・・・頭が痛くなってきました。」

「仕方ないよね~。」

「その原因にあなたもいるのですが・・・。」


呆れから何とか立ち直ったマグノリアは、メリッサに向き合いながら言った。


「メリッサさん、注文の事はお願いします。ルインさんもお体にはお気をつけて。アンナ、用事は終わりましたし、行きましょう。」

「解った~。またね~、2人共~。」


2人が出ていくとメリッサはため息をついた。


「あんなんで何で『自分は教義違反してません』何てこと言ってるのかしら?」

「同僚は知らないんだろ?隠すのは当たり前だ。」

「何時まで隠せれるのかしら?」

「擬態が上手いからな~。何処までも隠せるだろ。」

「そうね。」

切りが良いのでここで切ります。

必要ならルールは破らないとね。(ただし、無法者になってはいけない範囲で)


甘味物そんなに高いの?問題

飴玉『1個』が銀1枚

薬草煙草『12本入り1箱1ダース』が銀1枚

どっちが費用対効果有りますか?

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