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「ここ~?」
「そうです。」
西と北の境目にある『フィグマ魔法薬店』に来た2人は、扉に『open』の看板がかかっているのを確認すると、中に入った。
「御免ください。」
「いらっしゃ・・・マグノリアさん?如何したの?」
普段、こんな所には来ないマグノリアが来た事にメリッサは驚いた。
「メリッサさん。申し訳ないんですけど、教会の教義違反にならない様な肥料の作成をできますか?」
「出来るけど、数日かかるよ。すぐ欲しいなら、園芸店に行った方が良いよ。」
「その園芸店が全滅していました。」
「あ~、成る程。・・・最近起きた事件の影響かな?」
「事件ですか~?」
「そ、北区の農園の一部で爆発事故が起きてね、その爆発の原因が肥料だったんだよ。」
その報告を聞いたマグノリアは、片手で頭を抱えながら天を仰いだ。
「何やったんですかその農園は・・・。」
「爆発の原因は肥料だけど、外部要因があってね。何処かの馬鹿が肥料に硫黄を混ぜたのさ。」
「それだけだと爆発の原因になりませんが?」
「その農園の肥料を自作していて、材料は木材カスと家畜糞と土の3種混合で、それを錬金術で工程を加速して、発酵した肥料を使ってたんだよ。」
「古くさ~。肥料を黒色火薬にしたの~。」
錬金術の工程加速を利用した錬成を使い、お手軽に黒色火薬を作ろうとしたらしい。
「そう言う事。で、馬鹿がその近くで火系統の魔法を使って引火。ドカーンって訳。」
「呆れてモノが言えませんね。・・・ちなみに何日前ですか?」
「2日前だね。新聞にも載ってたんだけど・・・。」
「教会所属で新聞を購読できるタイミングって無いんですよ。」
協会に所属すると、身綺麗の為に情報収集がしたいのに『他の戒律に染まるからダメ』と言われて、井戸端会議以外の情報収集が出来ないのが現状だった。
「御免ね、そこ迄は知らなかったんだ。」
「それで~、犯人は~?」
「農場の従業員の1人。新聞の情報だと、給料が安い上に休み無しで働かされたんで、その報復でやったんだって。」
「その証言の確度はどの位正確ですか?」
「今警邏隊が調査中だけど、結構高いみたいだよ。他の従業員からも同じような証言が出てるらしいし、ただ経営者は『そんな実態は無い』の一点張りだね。」
「そうですか。」
「だからまあ、暫くは完成品の肥料が市場から無くなるだろうね。誰も同じ目に遭いたくないだろうし。」
「そのせいで私達は迷惑してますがね。」
「ご愁傷様。肥料はできたら孤児院に持っていこうか?」
「お願いいたします。ただ、魔法薬店の店員と言う事にしといてください。」
その注文を聞いたメリッサは怪訝な顔をした。
「何で?錬金術師じゃダメなの?」
「今の東区の孤児院の院長は、大の錬金術師嫌いです。」
「昔~、何かが在って~、裏切られたんだって~。」
「よくある話だ。納得。」
「何で~?」
「在野の錬金術師はね、よく詐欺手段を考え着くんだよ。研究にお金が必要だから。」
ギルドに所属しない錬金術師が術を極めようとすると多額の金額が掛かる為、その資金を調達する手段を考えないといけない。
その中で最も簡単なのが、詐欺行為であった。
「もちろんギルドに所属するって言う手もあるけど、それをやると権力闘争とかに巻き込まれるから、めんどくさいんだよね。」
「お姉さんみたいに~?」
「よく私が女性だって見抜けるね?気に入ったよ。名前は?」
「アンナって言います~。ただ~、気に入らなくていいよ~。マグノリアの性格から考えて~、女性だと思ったから~。」
「・・・まだ、男性が嫌いなの?」
「かなり改善はされましたが、まだ嫌な部分は在りますね。」
「体形の事でイジられすぎて嫌いになったんだっけ?」
「そうですね。」
無意識に両手を握ったマグノリアは、静かにうなずいていた。
切りが良いのでここで切ります。
研究って大変なんですよ。
マグノリアって男性恐怖症?問題
違います。
ただ単に体型弄りで嫌悪感が酷いだけです。
それをしない男性には友好的です。(逆に輩は嫌いですね。)