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園芸店に来たマグノリア達は、肥料の注文をしようとしたが
「無いの~?」
「すいません。在庫が切れちゃってて。」
「それじゃあ、仕方ありませんね。」
その店も在庫が無かったのだった。
「西区で孤児院の予算を知ってる園芸店はここだけですからね。」
幾ら孤児院が国の財政から運営されていても予算は決まっているので、その中から出せる金額を知っている場所でないと、買い物が出来辛いのが現状であった。
「どうしよ~?」
「・・・錬金術師に頼みますか。」
「大丈夫~?教義違反にならない~?」
教会の教義は『汝、無垢にして身綺麗な姿で生きよ』であり、肥料の材料によっては、教義違反になりかねない物を売りつけてくる可能性がある為、アンナは警戒しているのであった。
「知り合いの魔法薬店の人がいて、その人の本業が錬金術なの。」
「何処で知り合ったの~、そんな人~?」
「まあ。色々とありまして・・・。」
「・・・夜遊びと関係ある~?」
「なんですかそれ!?そんな事はしていません!」
「でも偶に~、夜中に何処か出かけてるよね~?」
そう言われたマグノリアは、何故そう思われているのかに思い至った。
「ああ、それですか。偶に寝付けない時が在るんですよ。その時に散歩してるんですけど、それかな?」
「何処まで行ってるの~?かなり長い時間だったりするよね~?」
「適度に疲れるまでですね。それがどの位か判りませんから、長くなる時もあるんですよ。」
「ふ~ん。」
そう言われても疑いの目を止めないアンナに、どう説明しようと無駄だと悟ったマグノリアは諦めて、別の説明に入った。
「その散歩中に出会ったのが、件の魔法薬店の人ですね。良い人ですから、事情を説明すれば請け合ってくれますよ。」
「そうなんだ~。」
「アンナにはちょっと刺激が強い方ですけどね。」
「何それ~?」
「簡単に言いますと男装の麗人ですね。本当にカッコいいので、見慣れていても呆けてしまいそうな人なんです。」
「マグノリア~。」
「何です?」
「私~、一応元貴族~。そんなの社交界で見すぎたよ~。」
こんな喋り方のアンナだが、実際はマグノリアより年下なだけで成人はしているのである。
他国の為、デビュタントの時期は判らないが、それなりの回数は出ている口ぶりだった。
「・・・そうでしたね、先程知りましたが。」
「さっき言った事忘れるな~!」
「あはは・・・。と、とにかく!西と北の境界線付近ですから、遠いので行きましょう。」
「そうだね~。」
そう言って移動を始めた2人だったが、マグノリアの心中の動揺を悟られない様に別の事を考えていた。
(危なかった。もし夜の事を知っていたら、アンナを如何にかしなければなりませんでした。)
孤児院を夜に抜け出す理由が散歩だけなら、こんなに動揺はしなかった。
(アンナの様な純粋な人は、あんなのを知ったら絶対に止めるでしょう。その止め方も、かなりの強引な手段なハズですからね。)
事情を知れば止めるであろう同僚は、その手段も過激になる事が予測された。
(そうなれば孤児院を去るか、アンナを如何にかするかの2択です。そして私は孤児院に残りたいので、アンナを如何にかするでしょうね。)
「マグノリア~?」
「如何しました?」
「そんな顔できたんだね~。」
「顔?」
「うん~。冷酷で冷たそうな顔~。」
突然のアンナの告白に、マグノリアが慌てて顔を作った。
「・・・輩相手に鍛えましたから。」
「ああ言うのが一番困るよね~。」
「アンナも困ってませんか?」
「私は~この身長のせいで~子供扱いされるのが嫌~。」
そう言ったアンナの身長は、見方を変えれば子供でも通じそうなほど低く、顔も童顔な為子供の様に見える容姿であった。
「そうですか。」
「トゥニカ着てないと子供扱いが多くて困るよ~。」
正教会の正装の1つであるトゥニカは、成人したら着られるので、それが年齢証明になっているのだった。
「でも~、偶に子供の振りして買い物するのも楽しいよ~。」
「やめてくださいね!?お店の人に迷惑ですから!?」
「あはは~。」
言い合いながら目的の魔法薬店に向かう2人は、楽しそうだった。
切りが良いのでここで切ります。
ハワイから帰還しました。
ハンター業はちょっとずつやっていきます。
アンナの設定について
身長は大体145センチ位で、年齢は22歳です。(マグノリアは23歳)