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マグノリアが授業を続けていると孤児院備え付けの鐘が鳴った。
窓の外を見ると、丁度昼頃だった。
「はい、ここ迄ね。他にも教わりたいでしょうけど、お昼の時間だから食堂に行こうね~。」
「「「は~い。」」」
子供達が颯爽と教室を出ていくと、マグノリアはチョーク型魔道具の魔力供給を切った。
途端に黒板に書かれていた文字が全部消えて、黒板が奇麗になるのを確認したマグノリアは一息ついた。
(こうやって子供達の世話をするのは、私にとっては天職なんですよね。)
自分が子供好きだと自覚したのは、学園から正教会の所属になり、研修の為各地の孤児院に行っていた頃であった。
新しい物が来ると興味を示す子供は、マグノリアの様な研修生が来ると興味を示し、群がって来るのだが、それが存外嫌では無かった。
むしろ、興奮を覚えたのだった。
それを自覚したマグノリアはそれ以降の研修では各地方協会では無く孤児院の方に行ける様に調整し、将来的にも孤児院勤務が適任になる様に働いた。
その執念が実り、ロイエンタールの孤児院勤務となった。
(孤児院なら何処でも良かったんですが、まさか2番目に大きい此処になるなんて、本当に運が良いです。)
勤務先の選定は正教会の上役がやるので、何処に行かされるかはランダムだった。
しかも、大体は希望が通らないので、孤児院に勤務できたのは本当に行幸だったのだ。
(そうして勤務して早5年。引き取られた子も、旅立った子も見ましたね。)
5年も勤務していれば、色んな子がいた。
入って間もない時に仲良くなった子は、その年に遠方の貴族に引き取られ、その地で暮らすようになった。
まだ右も左も分からなかった頃に仲良くなったので、少し寂しかった。
その次に仲良くなった子は、孤児院の在籍定年に達してしまった為院を出て、探索者として活動している。
最初の頃は危険な目にあって無いかとハラハラしていたが、最近は手紙が届くようになり安心した。
それ以外にも様々な子がこの孤児院を巣立っていった。
どれも掛け替えの無い思い出である。
(まあ、子供達が無事に暮らせてるなら良いんですけどね、中にはいますからね、とんでもない人が。)
そう思った時のマグノリアの顔を子供が見たら『誰?』と言っていただろう。
その位雰囲気が変わったマグノリアは自分の変化に気付き、慌てて顔を振って思考を穏やかにした。
「さて、簡単な清掃をしましょう。子供達の会話に、大人が加わるのは、ちょっと勇気が要りますからね。」
年が違うと会話の内容も違う。
子供達の内容に大人が付いていけない時もあるから、出来るだけ後の方に食堂に向かおうと思ったマグノリアは、魔法の発動行使の為に片手を挙げた。
「【浄化】」
そうして発動した浄化の魔法は教室内の埃や汚れを取り、使用前より奇麗にした。
(こんな所ですね。・・・あ。)
ただ、壁のシミやいつの間にか書かれていた落書きなんかも消してしまったのは、やり過ぎ感は否めなかった。
(よく確認せずにやっちゃったからな。・・・まあ、あんな事やってたら魔法の腕も上がっちゃうよね。)
やってしまった事は仕方が無いと思ったマグノリアは教室を後にして食堂に向かった。
その後、教室の落書きが無くなっていた事に気付いた子供が泣き、泣き止むまで必死に謝ったのはまた別の話である。
切りが良いのでここで切ります。
勝手に消したらそうなるよね。って事で如何か一つ。
孤児院の広さってどの位?問題
作者的には大体小学校全体の敷地位の広さを想定してます。(デカすぎるかなと思いますがね。)