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異界暗殺業  作者: 紅鈴
咎落ち
80/185

4-20

現場から少し離れた広い場所に案内されたジタンは、周囲を探った。


(目視では2人以外の人物は無し、気配は判らん。・・・まあ仮にもプロだしな、恐らくこの場所にも、目は光らせてるんだろうな。)


「それで勧誘ってのは、そっちに着けって事か」

「そうですね。貴方はこっち側と思いましたから、誘いました。」

「何でそう思う?俺は警邏隊だ。市民を守るのが仕事だ。市民を殺すのは違うだろ!」


『その怒り方はごもっともな意見だ』と言わんばかりの顔をしたノインは、そのまま言い放った。


「全力出せて気持ち良かったんだろ、あんた?」


その一言は、ジタンの心を深く抉った。

確かにその思いは在ったが、それを平然と突き付けられたのは初めてだった。


「あんたが医院に来た後に、パインに頼んで監視してもらってたんだ。そしたらあんたは訓練や戦闘の度に笑ってたんだよ。それだけじゃない。戦闘をすぐ終わらせたら、凄い不満そうな顔をするそうじゃないか。」

「申し訳ないと思いましたが、過去も調べました。そうしたら、院長先生の教えで、魔物以外には全力を出さない様に言いつけられたそうですね。」


監視されていた事も、過去を探られた事も、事も無げに話す2人に怒りが湧いたが、それだけが勧誘の理由にはならないと思った。


「で、さっき直接監視して観たのがあの戦闘だった訳だが、あんたはずうっっっっと本気が出したくてうずうずしてたんだな。ナインに放った言葉が物語ってたぞ。」

「・・・そうだよ。ああ、そうさ!俺はずっと本気が出したかった!だが、俺は警邏隊だ!市民を守り、犯人を生かして捕らえるのが仕事さ!それがどうした!!!」


その言葉は魂からの咆哮だった。

格闘の技術を収め、それをみだりにひけらかさないと誓わされた時から燻っていた事だ。

その燻りのはけを犯人求めても、生かして捕らえるのが仕事の為に、全力を出せなかったのは何処か不完全燃焼だった。

それをナインが打ち破ったために、久しぶりに心の燻りが完全燃焼した瞬間は気持ちが良かった。

それでも今の仕事を辞める気にはならなかった。


「こっちに来たら、お前の言う人型の魔物ばかりだぞ?そいつ等だったら全力出しても問題は無いだろ?」


だからこそ、その言葉が心に染みた。


「・・・ルインさん、あんたは悪魔か?」

「悪魔で結構。正義の側に立つなんて物は、この仕事に出会った瞬間に捨てた。」

「ちなみに言いますと、勧誘を断った場合は記憶の改竄になります。」

「さっきは『殺す』って言ったのにか?」

「あの状況なら相打ちで終わってて、事後処理が楽だからな。」

「・・・少しだけ考えさせてくれるか?」

「どうぞ、存分にお考え下さい。」


そう言ってほほ笑んだパインは、入る事を確信していた。


(恐らくは感情の部分じゃなくて、入る利点と不利益を考えてるだけでしょうね。そこだけなら、もう入ったも同然です。)


何度か自分の賛美眼で勧誘を行ってきた身としては、雰囲気と言葉で大体判る様になってきていた。


(先代から引き継いで数年、やっとこの辺りの的中率が上がってきましたね。・・・まあ、偶には鉄火場に出たい思いはありますが。)


少し前まで暗殺の方に重点が置かれていた身としては、偶に血が疼いてしまい、力を制御するのが大変であった。


「少し質問がある。」

「何でしょう?」

「今の仕事は・・・。」

「辞めなくても結構です。と、言いますかそのまま続けてください。警邏隊の情報もあれば、依頼達成の確率が上がりますから。」

「依頼が有れば絶対にやらなきゃならないか?」

「表優先でお願いします。怪しまれないのが一番なので。」

「解った、そっち側に踏み入れよう。」

「有難う御座います。一応言っておきますが、他人には言い触らさない様にお願いいたします。そうなると、組織のメンバーの中の誰かが殺しに来ますので。」

「そいつらは強いのか?」


そう言ったジタンの目は獰猛な獣の様だった。


「強いですよ。ただ、闇討ちに特化している方もいますので、知らない間に死んでいるかもですよ。」


そう言われるとジタンは顔を戻し、両手を挙げた。


「先日の探索者不審死の犯人が出てきたら嫌だから、やめておくわ。・・・ナインの死体を持っていくから失礼する。」

「御用の際は何らかの方法でご連絡いたしますので、お待ちください。」


片手を挙げて去って行くジタンを見送ったパインは隣に居たルインと向き合った。


「護衛、有難うございます。色々と助かりました。」

「・・・お前にいるかは甚だ可笑しいがな。」

「それでもですよ。判断を間違えていたら、死んでいたでしょうね。」

「気絶させるだけだよ。後はメリッサに任せてたな。」

「ホントにこの同期は・・・。」

「まあ、即戦力が出来て良かったんじゃないか?あれならすぐに染まる。」

「そうですね。・・・あ。」

「どうした?」

「依頼料・・・渡し忘れてました。」


項垂れたパインを見たルインは呆れながらも言った。


「締まらないな~。どうするんだ?」

「あの性格だと業務中には娼館に来ないでしょうから・・・ええっと・・・。」


相談に乗る必要があると判断したルインは互いに解決策を探し始めた。

切りが良いのでここで切ります。


ルインとパインって同期なの?

正確に言えばパインが先に入って、2、3ヵ月後に入ってます。

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