1-7
メイリン=スリザスと呼ばれる少女は情報収集の為に東区の通りを歩いていた。
人が多い為か、外套にかかっている【気配減衰】のおかげか、漁師小屋が立ち並ぶ通りに子供がいても変に話しかけられたり、奇妙な目線で見られる事は余り無かった。
(こっちは何の情報もないかな?そろそろ西区に戻ろうかな?)
そう思い、屋根に飛び上がる為に路地に入ろうとした時に、子供の群れを見つけた。
その姿は、薄汚れていて着ている物も色々とボロボロで、足は裸足だった。俗に言うストリートチルドレンと言う者だった。
(・・・私もあっち側だったなぁ。)
そう思いながら、子供に目線を合わせずに路地に入り、【身体強化】の魔法を使い、屋根に飛び上がった後に王城を探した。
(王城は・・・あっちだから・・・早く帰りたいし、このまま真っすぐに行こう。)
【身体強化】を維持しながら、屋根の上を次々に飛び跳ねながら西区に向かう。屋根の上にいても【身体強化】の影響で話し声が聞こえているので、情報収集にはなっていた。だが、魔力は常時消費するので魔力切れには気を付けていた。
(これも修行・・・できれば貴族街の入り口まで強化の維持をしたい。)
ただ飛び跳ね続けるのもどうかと思ったメイリンは先程の子供たちを思い浮かべながら過去に浸っていた。
(あの時の決断が私をここまで変えた。)
メイリンと言う名は『娼館長』につけられた名前だ。それまでは名前なんて物はなかった。
物心ついた時には周りに誰も居なく、路上が家だった。
ぼろぼろの服に裸足。ぼさぼさの髪に据えた匂い。どこからどう見てもストリートチルドレンの一人だった。
幸いにも同じような境遇の子供が他にもいたので、最低限の話し方と食べ物は覚えれたがそれ以外は何も無し。
そんな一人の子供が生きていくにはどうすればいいかは明確だった。犯罪以外無い。
幸いにもメイリンは盗みの才能があった。目線の外れたタイミングでの商品奪取はお手の物、スリの腕も手先の器用さで余り気づかれずに盗めた。
もちろん失敗した事は数えきれないほどあったが、逃げ足の速さと小柄な体躯で大体は逃げ延びた。
捕まって殴られるような事もあった、その時の傷で仲間が死んだのも数知れずに見てきた。
その生活のおかげで危機察知能力が大幅に上がった。そして、盗みの成功率が上がっていった。
そんな生活が続いたある時、仲間の1人が鍵穴付きの箱を拾ってきた。
どうやって開けようか仲間が悩んでいる時に、鍵穴を弄っていたメイリンは偶然から鍵を開けた。
その光景を偶然見ていた大人の浮浪者により拉致され、その浮浪者仲間での住居強盗に連れていかれた。
強盗計画は深夜に裏口からメイリンが開錠して仲間全員で侵入。金目の物を物色して脱出と言う単純な物だった。
その住居には住人が住んでいるのだが、特定の日の夜に出て行って、明け方頃帰ってくると言う情報が出回っていた。その隙の犯罪だった。
その時のメイリンの心情と言えば、(成功でも失敗でも殺される。)だった。
所詮、部外者な子供に報酬を与える必要無しで口封じを受けるか、失敗の捨て駒で置き去りにされ、罪を被されて捕まっての暴行での死亡。そんな状況だったのだ。
そして特定日の深夜、住居強盗の場所・・・『ギルファ医院』の裏口をなんとか解錠し、中に侵入したメイリンは手分けして探すフリをしながら、(そんな場所が無い。)と思いながら誰にも見つからない場所を探していた。浮浪者から隠れれば逃げれる。そんな考えでとにかく自分は入れるが大人は入れない場所を探していた。
予想外が起きたのはそんな風に探していた時だった。明け方に帰ってくるはずの住人が帰ってきたのだ。
浮浪者達は上手く逃げ出したようだが、自分は隠れる場所を見つけて隠れていた。
住人が1部屋ずつ、確認の為に扉を開けている間は怖かったし、自分が隠れている部屋に入ってきた時はとにかく見つからないように息を殺した。
だが、見つかった。そして捕まった。そしてストリートチルドレンの生活が変わった。
切りがいいのでここら辺で。
使用した魔法や道具の情報
気配減衰の外套・・・遮断ではなく減衰なのは遮断してしまうとその空間に不自然さが出るので減衰で無意識に相手が避ける様にしている。
身体強化・・・補助系統に当たる魔法で体の出力強化。強化率は人それぞれ