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異界暗殺業  作者: 紅鈴
咎落ち
78/185

4-18

何とか立ち上がったナインは、その宣言を聞き、自分の耳を疑った。


「何言ってんだ?犯人逮捕はどうでも良いのか!?」


その言葉を聞いていたジタンは頭を掻きながら、呟いた。


「良くは無いが、何だろうな?お前を人として見れなくてな。だからかも知れんが、人型の魔物を相手するなら加減は要らないって思って、だから宣言したんだよ。」


ホントウニナニヲイッテイルンダコイツハ?


「い・・・イカれてる・・・。」

「騎士だった奴に言われてもな・・・。それより良いのか?のほほんとしてると一瞬で死ぬぞ?」


その話の終わりと共に零距離まで踏み込んで来たジタンは、挨拶代わりに左のジャブを放った。

只のジャブなら多少仰け反る程度だろうが、そのジャブは体重移動が完璧な、所謂『ノックアウトできそうなジャブ』であった。

そんな物が身体強化した状態で迫って来ていたのだった。

そしてそれはナインに取って言えば致命的だった。


「ぬぅを~!!!」


慌てて何とか左に回避したナインだったが、その姿勢はもはや『どうぞ好きに攻撃してください』とでも言う様な姿勢だった。

そしてジタンは当たり前の様に、右ボディーフックでナインの動きを止めた。

その威力も身体強化の魔法と、完全な重心移動での相乗効果を生んだもので『くの字』どころか『への字』にする程だった。

そしてジタンはそのまま後ろに飛びつつ胴回し回転蹴りを放ち、その足をナインの鼻っ面に正確に叩き込み、その体を地面に叩きこんだ。

ナインは衝撃を逃がせる訳も無く、数回地面をバウンドしながら数メートル吹き飛ばし、地面を削りながら止まった。


「かぁ・・・こぺぷぁ・・・」


地面を削り止まって何とか立ち上がろうとするナインだったが、その鼻と口から並々と血を出し、体も地面を削った所は出血していた。


「誰が立って良いなんて言った?」


そして立つ暇も与えずジタンが踏み込み、そのままサッカーボールキックで頭を捉え、体を吹き飛ばした。

また数メートル吹き飛ばされるかと思ったナインだったが、直ぐ近くにあった廃墟の壁に背中から突き刺さり、その動きを止めた。


「かぱべぇば!」


ただし、突き刺さった威力がそのまま全身に伝わり、受けていたダメージがさらに悪化する結果になった。

そして壁に突き刺さったままのナインに、何故か()()()()()接近してくるジタンが酷く恐ろしくなった。


(こ・・・殺される・・・こんなので死にたくない・・・!)


そしてナインは自分の自尊心をかなぐり捨てた。


「降参だ!参った!もう許してくれ!!!」

「何でだ?どこに許す必要がある?」

「犯人逮捕もお前の仕事だろ!?ここで犯人を失っても良いのかよ!?」

「馬鹿かお前?他の第8隊の隊員も関わってるんだろ?そいつ等の内、一番業務成績が悪い奴を主犯に仕立てればいいだろうが!」

「・・・あっ。」

「考えなかったのかよ。まあ、そんなんだから伯爵家の後継にはなれなかったんだろうな。」

「・・・ふざけるな!!!何で手前なんかに言われる必要があるんだよ!!!」

「だってそうだろ。普通に武力は弱いし、考える頭も無い、人の心にも寄り添えない。どこに人の上に立つ才覚があるんだよ?俺も言えた義理じゃ無いがな、人の上に立つ立場ってんのは、責任を無理やり負わされるんだぞ。それなのに武力も、知恵も、人心掌握もできないってんじゃ、向かう先は破滅だろ?そうならない為に教育受けて来たのに、出来上がったのは屑で、替えが聞くなら見限るのは当たり前だろ。」

「何が弱いだ!?俺は強いんだ!伯爵家に生まれて!努力もしたんだよ!それなのに弱いだと!?ふざけんじゃねえ!!!」

「努力は皆してるだろうが!立場は先代からの継承で、お前自身の功績じゃない!それなのに真面目に生きる努力もしてない奴が、偉そうなことほざくな!」

「なら、騎士隊への入隊はどうだ!?お前も騎士に成った方が身の為だろ?俺が口利きしてやるよ!」

「残念ながら断るわ。お前の口利きだと、変な隊しか受け入れてくれそうに無いしな。」

「平民が上から目線で言ってんじゃねえ!!!やっぱりあの時、お前を騎士隊から拒否するように働きかけたのは正解だった!!!」

「・・・あん?」

「可笑しいと思わなかったのか!?学院の成績上位者は生まれ問わずで騎士隊や下級官僚なのに、お前だけ警邏隊なのは、俺が手を廻したんだよ!お前みたいな何処の生まれかもわからない奴が王宮を「知ってたよ。」してい・・・え。」


ジタンは再度頭を掻きながら説明し始めた。


「学院卒業して何年たってると思ってんだ?そんな物、数年でバレるわ。どうせ俺より成績が下の奴であの時権力持ってる奴がやったんだろうなと思って調べたら、案の状だったよ。」


そう言われたナインは唖然としながらも壁から這い出し、何とか地面に降り立つ。


「まあ、どうでも良いんだよ。あの時は恩師が死んで、心がぐちゃぐちゃだったからな。警邏隊に入ったのも良い方向に向いたな。気兼ね無く話せる内容が多くて、逆に助かった。」


そしてジタンはナインの眼前に迫ると、左右の手を指を曲げた掌底にし、右腕を腰の位置に持ってきて、左腕を前に突き出した独特の構えを取った。


「全力でぶっ放すから、生きてたら恨み文句を言ってくれ。」


その技は一瞬だった。

踏み込み震脚と共に放たれた右掌はそのまま真っすぐに胸の中心に当たると、瞬時に捩じり回し、皮膚の表面に捩じれた痕が現れた。

掌底打ちの衝撃で離れたナインに、そのままの姿勢で再度震脚を行い、震脚の勢いを乗せた第2撃を瞬時に撃ち放った。

体の内側から何かが切れる音を聞いたナインは、自分の意思と関係無しに地面に倒れ伏した。

そして急激に意識がなくなり始めた。


(何だ今のは?何が起きたんだ?)


最後に見上げたジタンの顔が笑顔だったのを、ナインは途切れ逝く意識の中で罵った。


(この・・・ろくで・・・なし野郎が・・・)


そして静かに事切れた。

切りが良いのでここで切ります。

何やったかの解説は次にお医者さんが話します。


学院の卒業って何年?

何歳でも入れますが、入ってから留年無しで大体4年です。(実力による飛び級あり)

ジタンは卒業から3年後に事態を調査しました。

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