4-13
ジタンは聞き込みの為にダニエル商店を後にした足で、フレンダ侯爵家に来ていた。
侯爵家の門前には持家の衛兵が詰めていた。
「申し訳ございません。」
「何でしょうか?」
「自分はジタン=オルフェスと言い、王都警邏第2隊の隊長です。フレンダ侯爵様にお目通り願います。」
「ご用件は?」
「前当主殺害の件です。捜査に進展がございました。」
「しょ、少々お待ちください。」
慌てた様子で衛兵が中に入っていき、数分後に慌てた様子で気立ての良い青年と共に出てきた。
その青年はジタンの前に立つといきなり胸ぐらを掴んだ。
「父の事が分かったんですか!」
「落ち着いてください、ご当主!それでは話せれません!」
「あ・・・すみません。」
「いえ、構いませんよ。・・・ええっとフレンダ侯爵様、ここでは話しにくいので、中に入れてもらっても宜しいですか?」
「解りました。ご案内いたします。」
そうして現当主に案内してもらって応接間に来たジタンは椅子に座り、事の経緯を話し始めた。
「何処から説明した方が良いですか?」
「剣による殺害は解っているので、それ以外でお願いいたします。」
「畏まりました、心を強くお持ちください。・・・前侯爵様ですが、死因には片手のフランベルジュが使用されました。」
そう聞いた瞬間、侯爵は怪訝な顔をした。
「片手の・・・フランベルジュ?」
「はい、そうです。ご当主様、貴方は前当主様の誕生日のプレゼントに、その剣をプレゼントする筈でしたよね?」
「そうですが・・・まさか!?」
「その剣が盗まれ、殺害に使用されました。」
「あ・・・ハハハハ・・・嘘・・・ですよね。」
「事実です。この証言は南区の鍛冶連合会の店の店員から話を聞き、ダニエル商店から証言も取れました。」
「ダニエル商店は家の御用達です。だから信用していたのに・・・。」
「ダニエル商店は悪くありません。問題は盗んだ者で、その者が騎士隊の一員だった事です。」
「騎士隊がですか?」
「犯人は第8隊の者です。それ以外にもいますが、前当主様の殺害に直接かかわった者は、そいつだけの筈です。」
「第8隊?」
「はい。ご当主様、申し訳ありませんが第8隊の中に恨まれている者はいますか?」
「そんなのはほぼ全員ですよ。私は第8隊の実情を知って、部署丸ごと潰そうとしているんですから。」
そう聞いた瞬間、ジタンは顔を覆った。
「・・・お待ちください。第8隊丸ごとですか?」
「そうですが?・・・何か問題が?」
「第8隊の中には高位貴族もいます。そのメンバー全員をクビにしたら、全員の恨みを買いますよ?」
「王も公認なんですが・・・それと一部の者は別の隊に移ってもらう手筈を整えていますので。」
「ホント、あの国王陛下は・・・話を戻しましょう。先程も言いましたが第8隊の一部・・・いや、ほぼ全員が、ご当主様への恨みで前当主を殺害いたしました。ここまでこれたのは目撃者の御かげですが、その目撃者も襲撃され、現在治療院で療養中です。」
「・・・話が読めました。犯人達は私に全て擦り付ける気ですね。」
「その通りだと思われます。」
その肯定の言葉を聞いた瞬間、フレンダ侯爵は項垂れた。
「は・・・ははははっ・・・何でこんな事に。」
「貴方は悪くありません。悪いのは第8隊です。」
「犯人は捕まえれそうですか?」
「残念ながら何処に居るか判りません。さらに言えば高位貴族のせいで、捜査中止の可能性も出てきました。」
「何だよ・・・それ・・・何で・・・父を殺されたのに・・・泣き寝入りしなきゃいけないんだよ!」
「侯爵様、落ち着いて・・・」
「これが落ち着いてられますか!貴方は良いですよ!ここ迄の絶望なんて無かったんでしょうから!今!私は!例の噂に縋りたいですよ!」
「侯爵様!!!」
ジタンが怒鳴るとフレンダ侯爵が怯んだ、そして冷静になったのか項垂れながら呟いた。」
「・・・帰ってください。もう、聞きたくありません。」
「畏まりました。・・・噂を鵜呑みにしないでくださいね。噂はあてになりませんから。」
「そうですよね。そんな事があれば、王辺りが接触してる筈ですから・・・ハハッ・・・」
痛ましさを出し始めた侯爵を残してジタンはフレンダ家を後にした。
切りが良いので切ります。
現侯爵何歳ぐらい?問題
大体想定は20後半としています。(前侯爵は晩婚です。)