4-9
ジタン達は屋根の上を跳ねて貴族街まで向かっていた。
「ロック、魔力は大丈夫か?」
「暫くは大丈夫ですけど、何処かで休憩が取りたいです。」
「解った。・・・もうすぐ花街に入る、そこで一旦歩きながら休憩しよう。」
「花街でですか?大丈夫なんですか?」
「心配するな。あそこで阿保やった奴は娼館に入店を丸ごと拒否されるから、あんな場所では襲ってこん。」
「まあ、俺達も入店拒否の危機だが、事情さえ判れば拒否は解けるからな。」
「そういう事だ。・・・着いたな。屋根から降りて、徒歩に切り替えよう。魔力の回復に務めろ。」
そうして花街の入り口の一つに着いたジタン達は大通りを歩き始めた。
「ここは・・・何処ですか?」
「ハビン君にはまだ早い場所ですが一応説明しましょう。花街と言いまして、まあ、大人の女性と遊ぶ場所ですね。」
「各店舗に自分好みの女性がいまして、そこのお店でお金を払って気に入った女性と決められた時間まで遊びます。」
「それ以上は聞かないでくださいね。もう少し年を取ったら男爵様に聞いてください。」
「ええっと・・・解りました?」
((ナイスだ、ロック!!!))
子供にはまだ早い話をしたくない大人の心を上手く言葉にしたロックに、2人は心の中で称賛した。
大通りには多種多様な服装の人達がいるが、誰もジタン達にすり寄ろうとはしなかった。
「おかしくないですか?花街で誰もすり寄って来ないなんて?」
「おかしくは無いな、ハビン君の御かげだ。」
「え、僕ですか?」
「そうだな、外套を着ていても明らかに子供って判る人物を引き連れた集団何て、怪しすぎて声をかけ辛いからな。」
「ああ、成る程。」
「それって良い事なんですか?怪しまれるんじゃ・・・」
「怪しんでも花街なら知らぬ存ぜぬだよ。現に、俺等以外にも外套を被ってる奴はいるしな。」
花街の性質上の問題でお忍びで遊びに来る者もいる為、花街の住人は多少の怪しさは気にしていないのであった。
「ハビン君、少しゆっくり出来そうだから、今の内に軽く話してほしい。そうだな・・・まずは誰が死んだのかだな。自分が話せる所だけで良い。」
「・・・死んだ人は判りません、初めて見ました。」
「顔は覚えてるかな?」
「はい、似顔絵さえ見れれば、思い出せれると思います。」
「そうか。・・・犯人も覚えてるか?」
「覚えてます。」
「良かったぁ、そこが一番重要だったから、覚えて無かったら危なかったよ。」
「危ないって・・・判らなかったら守って貰えなかったんですか?」
「ロック、減点。・・・そんな事は無いよ。犯人に繋がる手がかりを、被害者だけから割り出すのに時間がかかってね。だから、目撃者が覚えているなら、それに越した事は無いんだ。」
「困ってる人を助けるのが警邏隊の仕事だからな。どんな時でも存分に頼ってくれ。」
そう言って、屈託のない笑顔で笑うラッセンは頼もしそうだった。
「すみません、失礼な事を言って。」
「こっちの言い方が悪かったんだ。気にしない気にしない。」
「こっちこそごめんね。・・・犯行現場、ええっと・・・その、知らない人が死んだ場所とか、何で死んだのかは解るかな?」
「死んだ場所は判らないですけど、何かの刃物で殺されてました。何か特殊な剣だった筈です。」
「特殊な剣?」
「はい、波型の細い棒状の物だったのは覚えています。血も出てましたから、刃物だったと思ったので剣だと思いました。」
「フランベルジュですかね?あれって実戦に耐えれますか?」
「試し切り位なら耐えれるだろ。それに硬化の魔法を組み合わせれば、実戦でもある程度はイケる。」
波型の棒状の刃物と聞いて出たフランベルジュと言う剣は、扱いは難しいが切られれば凶悪な傷となる剣だった。
その波型の形状は破傷風が出やすく、切られれば治療師でも修復が難しい物であった。
「ただ、厄介だな。あの特殊形状のせいで鞘に意味が無い様な物だから、剥き身の裸で持ってる訳が無い。厚手の布にグルグル巻きにされてたら、形状での判断がつかん。」
「そうですね。大型の鞄なんかに入れられてたら、余計に分からないですね。」
「それを売ってる店も大量に在るからな・・・そろそろ抜けるぞ。各員準備、フォーメーションはそのまま、この後は一気に駆けるぞ。」
「「「了解。(解りました。)」」」
そうして花街を抜ける寸前にジタン達は再度、身体強化をかけて屋根に向かって飛び跳ねた。
切りが良いのでここで切ります。
フランベルジュって奇抜ですが結構危ない武器なんですよね。
花街って西区の大体何処だよ?
ど真ん中の方にあります。
実際の真ん中は公営カジノですがその隣位にあります。(カジノ側の入り口もあります。)