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「で、君名前は?」
ジタン達は西スラムの簡易詰め所に暴漢全員を牢屋に叩きこんだ後、事情を知っていそうな少年に話しかけた。
「ハビン=フォン・ゲイル・・・です。」
「ハビン=フォン・ゲイル?ゲイル男爵家の子が何であんな場所に?」
「そもそも本当にゲイル家なのか?」
「恐らく本当だろう。よく見たらシャツは魔蚕製だ。」
「良いとこの商人なら持ってそうだがなぁ。」
「それでも子供に着せる物か?」
「意外と高いですからね、魔蚕。」
「ロック、お前値段を見た事あるのか?」
「ありますね。彼女に魔蚕制の服をプレゼントしようとして、結構高かった覚えがあります。」
「頑張ってんな、お前。」
「話を戻そうか?・・・すまなかった、少しは緊張が解れたかな?」
「はい、その・・・あそこに居たのは追われてたからです。」
「まあ、追われてるのは解ってるが・・・」
「3日前からです。」
「3日!?よく大丈夫だったな!?」
追跡されていた日数にジタン達は驚いた。
「大人が入れない場所に潜り込んだりして逃げました。」
「それにしたって3日って・・・男爵家は頼れなかったのか?」
「頼れません。父は遠征中ですし、母は治療院に入院中なので。」
「家令や他の人は?」
「家にはいません。」
「おいおい、親戚連中はこんな小さな子をほっぽり出して何やってんだ!」
「その・・・頼れそうな叔父さん達も遠征中です。叔母さん達は今回は頼れないと思いました。」
「何に巻き込まれたんだよ。・・・そういう時は叔父さんみたいな警邏隊に頼りなさい。一つ勉強になったね。」
「解りました。」
勉強になる説教をしてジタンは続きを諭した。
「それで、何で追いかけられてたの?」
「その・・・3日前に殺人現場を見ました。」
「それだけだと追われないな?そこで何を見た?」
「殺害される瞬間と犯人です。」
ジタン達はそう聞いた瞬間に天を仰いだ。
「十分に追いかけられる要因ですね。」
「よく無事だった、君の努力に敬意を表する。ラッセン、3日前の殺人事件の報告は何処で見れる?」
「貴族街近くの詰め所ですね。西スラム近くの此処から4人で行くとなると、結構危ないですよ。」
「他から応援要請はできないですか?」
「無理だろうな。やれるならやりたいが、恐らく此処も危ない。すぐに移動の準備だ。」
「暴漢は捨て置きですね。」
「恐らく処理されるだろうな。・・・ご愁傷様。」
「ハビン君、申し訳無いがここから更に移動だ。危険は叔父さん達が可能な限り払うが、最悪1人で貴族街の方まで行かないといけない。もしも1人で貴族街に着いたらこの胸にあるマークの建物に逃げるんだ。貴族街の入り口付近にある。」
「解りました。」
「すまない。・・・ラッセン、外套はあるか?」
「ありました。丁度4人分。・・・ハビン君には大きいですが。」
「多少は大きくても仕方無い。ハビン君、お腹はすいてないか?」
「大丈夫です。追いかけられている時に、隠れて食べ物を買いましたので。」
「もし有るなら今の内にお腹を満たしなさい。此処からは体力勝負の場面が多いからな。」
「解りました。」
そうして懐からサンドウィッチを取り出したハビンは、黙々と食べ始めた。
その間にジタン達は行動確認に入った。
「まず俺が殿だ。ラッセン、前方を頼む。ロックはハビン君を抱えろ。隊列は一直線になる様に。」
「了解。」
「全員身体強化をかけて屋根の上を跳ねて最短で行く。ロックはハビン君を抱えて跳ねるから大変だが逃走を第一に、迎撃は俺がやる。」
「了解です。」
「敵強襲時は俺以外は逃走しろ。ラッセン、後は任せた。いいな!?」
「「了解!」」
「・・・こっちも準備できました。」
「良し!全員外套をかぶって移動開始!」
そうしてジタン達は状況最悪な逃走を開始した。
切りが良いのでここで切ります。
私事ですが土曜日からちょっと更新できないかもです。
暫く三国志の世界に旅立ちますので。(出来るだけ早く戻ってきます)
魔蚕って何?
蚕の魔物です。
布系魔物素材としてはメジャーですが、結構お値段掛かります。(体長2メートルの芋虫ですよ。怖いですね。)(養殖できます)(高い理由は食費)