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「で、ルインさん。話って何です?」
「警邏隊の第2隊の隊長だが、あれヤバいな。」
「どうヤバいんです?」
「証拠の理論の筋が通れば一気に懐に来る捜査の化け物。」
「それは危ないですね。」
「そこも何だが・・・何故か素質アリなんだよ・・・。」
「あら?珍しい。ルインさんが『引き込み』たいなんて言うなんて。」
「あれは切っ掛け一つでこっちに来る存在だよ。だから出来るだけ監視の目を切るなよ。」
「了解しました。まあ、事件が起こらなければ通常監視で良いと思いますがね。」
「・・・だと良いんだが。」
ジタンは久々に市中警邏の任務に当たっていた。
ここ最近は隊長業務と怪死事件の調査ばかりで、こうして警邏隊らしい業務はしていなかったので、存外楽しんでいた。
(やっぱ実働現場は良いな。ちょっとした事でも気分転換にはちょうど良い。)
「隊長、警邏を楽しんでる所悪いですが、業務に集中してください。」
「まあ、そうだな。だが、楽しまずにいられるかよ!最近は書類業務が忙しくて、業務として歩くのも久しぶりなんだよ!」
「本当に隊長は現場第一ですね。」
一緒に任務に当たるのはロックにラッセンと言う、最近一緒に居る事が多いメンバーだった。
「警邏隊の仕事はこれだと思うからな。現場捜査は本来なら別の組織作って、そこがやれば良いと思ってるよ。」
「そう思いますが予算の都合でそうもいかんのでしょ?」
「そうだな。いっその事、左遷部署何個か潰して、そこに予算をつぎ込んで欲しい物なんだが・・・」
「左遷部署に居るのが上位貴族ばかりですからね。まあ、仕方ないかと思いますよ。」
「言うな。本来は最後の時まで、王に奉公したい人達の為の部署なんだからな。」
本来ロイズ国の各隊で長年奉公した者が付く部署が『左遷部署』と呼ばれるのだが、『左遷』の部分が独り歩きして厄介者が集まってしまったのだ。
その為、左遷部署を栄転用に作り替えようとしたが、その頃には上位貴族が居座り続けており、部署を潰せれなくなってしまったのだ。
「まあ、幸いにも王が厄介者の方の左遷部署の予算を最小限にしてるし、何か起こせば即退団にしてるから、あいつ等も問題起こせないからな。」
「部署に入れられても、異動方法もありますからね。」
「その方法が地味な努力だからな。まあ、温室育ちには出来ない事だろうよ。」
本当の左遷部署で腐らずに着実に仕事をすれば元の部署に戻れるのだが、まずそんな事はほぼ起きないのだ。
飛ばされた時点でその者自体が原因が在るのに、それを認められず適当な仕事しかしない者に成り下がる事が多いのだった。
そんな事を言い合いながら警邏の仕事に従事していると、目の前で喧嘩が起きていた。
「警邏隊の目の前でもやってるとは、相当頭に血が上ってますね。」
「止めるぞ~。」
「「了解!」」
そうして喧嘩の場に割って入っるジタン達、まずは周囲の群衆を引かせた。
「警邏隊だ!その喧嘩は此処まで!それ以上の私闘は逮捕及び拘留の対象とする!」
その声で群衆自体は退いたが、喧嘩の中心になっている2人は止まりそうもなかった。
「止まりませんね?どうしますか?」
「実力行使!」
「「了解。」」
まずはロックが片方の相手に向かって引きはがすように組み付く。
その隙にラッセンがもう一方の相手をタックルで押し倒した。
「ロック!減点だぞ!静止命令自体はしたんだ。この場合は押し倒してでも止めるのが正解だ!」
「すいません!」
「次につなげろ。」
「判り・・・あっ!!」
ロックの拘束を抜けた喧嘩人がジタンに突っ込んで来た。
それを確認したジタンはその場で左手を前にした半身になると、軽く相手の顔面に左の拳を叩きこんだ。
所謂ストッピングジャブと呼ばれる物をした後に、右手を掌底の構えにして踏み込み、相手の顎を打ち上げた。
その一撃で突っ込んできた相手は意識を失い、地面に倒れた。
「ロック!減点2。原因は判るな?」
「犯人の拘束が緩かった事と市民を危険にさらした事です!」
「判れば良し。拘束具は持ってるな?両方とも拘束して簡易詰め所に運ぶぞ。」
「「了解。」」
そうして犯人達を拘束したジタン達は詰め所まで護送を始めた。
切りが良いのでここで切ります。
簡易詰め所って何?
要は交番
拘留施設や簡易の取調室があります。