4-4
「しかしロック、頑張ってるな。」
「その・・・警邏隊入って直ぐに結婚しまして。」
「羨ましいな、このヤロ~!」
訓練が終わり、訓練場を軽く清掃していた時に、ここ最近伸びているロックの頑張りの要因は何なのかを知りたかったジタンは、その要因を知った。
「そうかそうか!守ろうとする意志は人を強くするからな!頑張れよ。」
「はい!頑張ります!」
清掃が終わり、隊舎に帰ろうとした時に聞きたくない声が聞こえた。
「よお、上位成績者ぁ。」
「・・・ナイン殿、何の用ですか?」
「いやぁ何?、怪死事件なんて無駄な事の捜査をしている部隊が要るって聞いてな。様子を見に来たんだよ。」
「無駄かどうかは、調べ切るまでわかりませんよ?まあ、そちらの出番はないでしょうね。」
「当たり前だろ、そんな事にかまけてる暇は無いんだよ。」
「いえいえ、そうではありませんよ。貴方のような無能が出てくる出番が無いってだけですよ。」
「ああぁ!?」
『無能』と言う言葉に反応したナインは、問答無用で踏み込んで来た。
大振りな右拳を突き出してきたので、軽く後ろに引いて伸びきった腕を左手で取り、そのまま回転しながら右手を添えてナインの体の内側に入りつつ足を払い、勢いをそのままに投げ飛ばした。
それを知る者がいれば『背負い投げ』と呼ばれる技術に似ていた。
ナインを地面に叩きつけながら、追撃に膝をナインの頭の横に落としながら、座った。
「なあ、俺より何もかも下だった騎士様?頼むから上から目線で話しかけないでくれ。俺達は日々、訓練だったり、業務だったりで命張ってんだ。暇人しかいない第8隊みたいにこんな所でプラプラしてる暇は無いんだよ。」
「手前、貴族様に向かって・・・」
「その貴族位て騎士伯ですよね?一応俺も持ってますよ。昇進祝いに。」
「なぁ!?」
「知らなかったんですか?一応警邏隊の隊長にまでなった人が無爵位は駄目だからって事で、爵位自体は貰えるんですよ。王城への事件報告も必要ですしね。」
「・・・放せよ。」
「そうですね。」
そうして言われた通りに放したジタンは、素早く立ち上がり安全圏にどいた。
ゆっくりと立ち上がるナインは背中をさすりながらも、イラついた顔をジタンに向けた。
「手前が優秀だってのは判ったが、それでも素性不明なのは変わりねえ。ちゃんとした素性じゃなけりゃあ王にお会いできないぞ?」
「別に俺は王に謁見したいとは思えませんね。仕事を着実にこなすのが丁度良いので。」
「・・・けぇ!?」
そう言いながら地面を蹴ったナインはその場を引いた。
「・・・はぁ~。」
「あの・・・隊長、大丈夫ですか?一応騎士様に向かってあの態度は・・・」
「大丈夫だ。彼奴は俺が学院卒業時の同期で、一応ファインド伯爵家の出身なんだが素行が悪くてな。そのせいでか知らないが卒業後に爵位を弟に取られちまった奴なんだよ。だから、学院卒業して騎士隊に入っても素行のせいで問題だらけで、左遷部署の第8隊に入れられたのさ。」
「あの横暴さはそれでですか?」
「元からの部分があるが、まあ、それ以外にも要因はあるな。」
「なんですそれ?」
「俺の卒業時の成績上位者に、あいつは丁度あぶれてな。それを未だに根に持ってるのさ。」
「あれでも頭は良いんですね。」
「半分は伯爵との裏の関係だったがな。それに鼻を掛けてたから嫌われ者だったよ。」
「・・・学院ってそれを嫌うんじゃないですか?」
「嫌うね。だから、彼奴の卒業と同時に何人かの教員が辞めさせられた。」
「あはは・・・」
「さて、あんな奴はほおって置いて仕事に戻るぞ。」
「了解しました。」
そうして戻ろうとした時にロックが不思議な事を聞いてきた。
「そう言えば隊長?何で膝を落とした時笑ってたんですか?」
「あぁん?俺、その時笑ってたのか?」
「はい、見る人が見たら怖そうな笑い方でした。」
「そうか。猟奇殺人者じゃないんだ、気を付けないとな。」
「でもカッコ良かったですよ。」
「馬~鹿、警邏隊がそんな顔するのは駄目だろ。」
「ですね。」
小気味良い事を言いつつ、隊舎に戻った。
切りが良いのでここで切ります。
騎士隊第8隊について
作中でも言った通りに左遷部署の1つ。
主な業務は警邏隊への伝達です。
誰でもできる事をやらせる事で罰としています。(一応異動機会はあります。)