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空いている時間に怪死事件の捜査を始めたジタンは、自分が知っている限りの最初の容疑者の1人であるルインに会いにギルファ医院に来ていた。
「すいません。王都警邏隊の者なのですが、お時間宜しいですか?」
時間は昼食時を大きく過ぎた時間帯だったので、利用客であふれていた。
その中の1人がジタンに気付き言葉をかけた。
「今、先生は治療中だよ。暫く待ってくんないかね?」
「治療ですか?ここは薬屋だと届け出が出ていますが?」
「あ~・・・陛下の命で此処では治療ができるんだよ。王家に問い合わせれば判るよ。」
「もしかして噂の?」
「そう、陛下を治した異端者様さ。」
そう聞いて、ジタンはまさかと思い始めた。
(もしかしてマグヌス院長が言っていた人物なのか?陛下の治療はマグヌス院長でも無理だったはず。だとしたら、マグヌス院長よりも治療や検視は上なのか?)
そうして考えていると、診療室と書かれた扉からウキウキで出てくる人物と、いつもと同じ白いジャケットを着たルインが出てきた。
「じゃあ、メイさん。次にどこか悪くなったら、ここでも良いし、治療院でも良いから早めに行ってくれ。そうじゃ無いと今回の治療みたいに、長時間拘束しないといけなくなるから。」
「それは判るのですが、私には薬草が・・・」
「薬草が大事なのは解る。だが、それで体を壊したら、誰がその薬草の面倒見るの?そうならない様に早めに行ってくれって言っているんだ。」
「・・・それの方が大事ですね。解りました、そうします。では、行きます。」
「お大事に~、次の方は、と・・・」
ルインが受付と思われるカウンターに向かう所を、ジタンは止めた。
「少し良いですか?自分は王都警邏隊第2隊隊長のジタンと言います。お話を伺いたいのですが?」
「すいません。今仕事の方が忙しいので、後にしてくれませんか。この人数を1人で捌くのはキツイので。」
「それは判りますが、こちらも重要な話なので。」
「・・・マーサさん、少し時間を空けて良いですか?ジタンさんと話したいので。」
「良いよ~。事件の捜査でしょ、隊長さんも大変ねぇ。」
「感謝します。何方で話しますか?」
「ついて来てください。」
そうしてルインが診察室と書かれた扉を開け、ジタンをその奥に招いた。
扉の先に入ると、招いたルインはさらに先にある治療室と書かれた扉を開けていた。
「ここで話しましょう。入ってください。」
治療室に招かれたジタンは、中にある椅子の一つに座らされ、招いた人物が向かい合う様に座った。
「さて、何が聞きたいんですか?まさか前回の時と同じですか?」
「そうですね。ライルについて話してほしい事があるんですよ。」
「成る程、あの時は事件の起きた時間帯に何処で如何していたかだけでしたからね。」
「はい、そこから詳しく踏み込もうと思い、来ました。」
「何が聞きたいんです?」
「治療にお詳しそうなので聞きますが、魔法や魔道具を無しに首を爆発したようにできる方法はありますか?」
「治療じゃないねソレは、殺害方法だよ。何?ライルって噂の怪死体だったの?」
「はい。事の経緯は省きますが、実はマグヌス院長が『自分より上の検視ができる人物がいる』と言っていまして、その時に『異端者』と言う言葉を聞きましたので、もしやと思い伺いました。」
そう言うとルインは顔を覆った。
「あの人は・・・。遺体は首が爆発していたんですよね?どんな風に?」
「追加調査で判明しましたが、首の爆発は外からでは無く内側からでした。ですので、どうすればそういう方法があるかを知りたくて。」
「聞き方が直球過ぎだね。もし、俺が犯人なら爆破の種は話さないんだけど。」
「あるんですか?」
「現状では方法は無いと思うよ。只、内側ならどこら辺が爆発するのかは、調べられそうだけど。」
「どの様に?」
「体内の構造を詳しく解析する事だね。爆発の種が体内なら、恐らくは爆発した付近に何か痕跡がある筈だから。」
「死体に構造解析の魔法ですか?それは教会の教義に反するのでは?」
「反するだろうね。だけど俺は治療院に居た時に、何回か隠れてやったよ。どいう風に死んでいるかの確認は、治療者として遺族に詳しく話さないといけないと思ったから。」
「成る程。・・・今度怪死体が出た時に自分で試してみます。」
「ジタンさん、悪い事は言わないからやめな。構造解析の魔法はどういう構造をしているかを調べるから専門知識が要る。人体の場合だと人体構造に詳しくないと、何処がおかしいかは判別できない。」
「そうですか、残念です。また、何かあれば来ます。」
「そうしてください。」
そう言ってジタンが立つとルインは思い出したように言った。
「ケイさんに聞いても無駄だよ。あの人は体内の構造なんて判らない。家具職人がそこまで知っているのは可笑しいでしょ?」
「確かにそうですね。・・・もしかしてライルは治療者に殺された?」
「その通り。事件時にアリバイのある俺以外の治療者又はモグリだね。」
「・・・裏街道の者を重点的に探ってみます。ご協力ありがとうございます。」
「お気をつけて。命は一つなんですから。」
そうしてジタンが出て行った後に溜息を吐いたルインは、小さく被りを振りながら呟いた。
「想像力が足りないって言ったメリッサは凄いな。あれは調査方法としての理詰めの権化だ、証拠に納得がいけば懐まで一直線だ。・・・パインに相談だな。」
そう言って待たせているマーサを呼びに行った。
切りが良いので切ります。
優秀なんですよ。ただ、発想能力が足りない。
調査できるの?問題
ある程度後回しに出来る仕事を後回しにして調査に出ています。