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異界暗殺業  作者: 紅鈴
薬屋
55/185

3-13

「本日もお集まり頂き有難う御座います。」


どこかの劇場で何時もの挨拶を言ったパインは『オークション』の開催を宣言した。


「本日の出品物はジェット=サグマと申します。彼は探索者の一派で新規有望株のダン=グスタフを謀殺いたしました。」


その時の会場にいた人物達の何人かが白けた。探索者の復讐なんてやっていたらきりが無いので、やる気が削がれたのだった。


「解ります。私もこのような事に皆様を集めるのは気が引けましたが、今回に至っては皆様に参加できるのでは?と思い開催いたしました。」


そうして大振りな手ぶりでパインは説明を始めた。


「まずは事の経緯から説明いたしましょう。このジェットと言う人物は探索者としては落ち目の人物で、同じような落ちこぼれの者達と徒党を組んで依頼に邁進していました。そこに新規登録したダンがありえない程の功績を携えて現れました。」


白けていた物の内、何人かが聞き耳を立て始めたのを、パインは感じ取り始めた。


「落ち目だったジェットは当然の様にダンにつっかりました。ですが正論でいなされ、ダンの一派を監視していた所、自分との差に愕然としたようです。その差に悩み続けた彼に、ダンを殺すと言う黒い炎が宿りました。彼は裏の魔道具屋に頼み、使い捨ての魔物寄せの魔道具を購入したのです。」


その話をした所、さらに聞き耳が増えてきていた。それに気を良くしたパインはさらに大振りな手振りで会場を湧かした。


「彼はその魔道具をダン達に効果的に使うために、ダンが北の森での依頼を受けた後、街中の少女を誘拐。その後、北の森の中に魔道具を起動後に少女を置き去りにしました。」


その言葉で会場にいた競売者が殺気立つのを感じ『このままならいける』と思わせる程の熱狂になって来た。


「そこにダン達の一党がたどり着き、少女の救出の為にダンは単身足止めをしました。ダンの奮戦はすさまじく、魔物を8割方殲滅し、残りの2割も大怪我を負っていたようです。このまま行けば英雄として名声は確保されていたでしょう。ですがジェット一派はダンの疲労に漬け込み矢傷を負わせ、駄目押しに足を傷つけダンを魔物に襲わせ謀殺いたしました。」


会場の熱気が良い感じに温まって来たのを感じたパインは更に駄目押しの品を胸から取り出した。


「こちらは一度聞いた会話をもう一度聞き出す魔道具です。こちらをお聞きください。」

『あのガキの最後は笑ったなぁ!突然後ろから自分に矢が当たったと思ったら足が動かなくなるなんてよお!しかも、魔物に食われる寸前のあの絶望した顔で俺は股間が熱くなったぜ!』

「お聞きになりましたか?このような人でなしは、皆様にとっては大好物かと思われます。どうでしょう?この出品物に対して、皆様興味を持たれましたか?」


その言葉に会場全体が殺気で包まれているのをパインは感じた。


「今回の出品物の提示額は金貨1枚からとなっております。落札方法は提示額から競売者呼びかけでの値下げ式で行ないます。では、入札者の皆様、存分に競り合ってください。」


そう話した瞬間に、会場の熱気が一瞬で下がったのだった。そしてその結果なのか一切入札の希望が出なかったのだ。


(あらぁ?流石に金額が少なすぎたかしら?でもオークションの性質上、依頼額自体がそのまま初期報酬なんだから仕方が無いじゃない!)


そうして数分、何も入札も無く『流れ』になりそうなタイミングで


「金1」


入札が起きた。


「金1!金1以下無いか!・・・無いようですね。では、この出品は金貨1枚で落札されました。」


何とか出品物が落札されて内心ホッとしたパインは閉会の言葉を話し始めた。


「本日のオークションは以上です。落札者はこの場に残ってください。」


そうしていつも通りの作業をしてると落札者が現れた。

「何とか取れた~。良かった~、ナダン君が慎重派で。」

「メリッサ?貴方が取ったの?」

「意外だった?ダン君とは知り合いでね、取れるなら取ろうかと思ってたんだよね。」

「貴方が義憤でやるとは思えないわぁ。」

「いつも通り『実験』だよ。今日の監視の密偵は誰?」

「あの子よ。」


そうしてパインが指差すと外套を纏った一人の密偵が出てきた。その密偵にメリッサは手に持った魔道具を渡した。


「じゃあこれ、よろしくね。使い方は判る?」

「心得ています。」

「じゃあよろしくね。あたいは準備があるから後で合流しよう。」

「何処で合流を?」

「彼奴の現在位置は?」

「西区の繁華街で飲んでいます。」

「お金無いのに派手な事。じゃあ、繁華街入り口に集合で。」

「畏まりました。」


そうして密偵が去った後、メリッサがパインに向き直った。


「危険が無い様にはやるけど、あの子が危なくなったら御免ね。」

「良いわよ、あの子も覚悟してる。」

「じゃあ、『実験』を開始するね。吉報を待ってなさい。」

「行ってらっしゃい。」


片手を挙げて去っていくメリッサの顔は、残忍な笑顔であった。

切りが良いのでここで切ります。


オークションの『流れ』について

ダッチ式の場合は数分間初期提示金額から動かなければ流れます。(いわゆる落札中止)

他の方式でも落札中止の条件は有ります。(記入式だと参加者全員白紙提出です)

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