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異界暗殺業  作者: 紅鈴
薬屋
52/185

3-10

胸糞注意

メリッサは北区の薬草栽培場に来ていた。

既存の薬草の中で足りない物が出たので購入の為に来ていたのだ。


「カリンさん、この紙に書いてある薬草を買いたいんですけど。」

「解ったわ、暫く待っててね。」


そう言って奥に引っ込んだカリンは少しすると、大量の薬草を持って戻って来た。


「はい、紙に書かれてたやつね。これだけで大丈夫?」

「カリンさん、知ってますよね?うちの店の地下に何があるか?」

「まあ、ちょっと怪しんで地下室暴いたこっちからすると負い目と言うか、商売敵と言うか・・・」

「ここで買っても良いけど、自家栽培ならもう少し店頭価格を安くできるかもと思ってやったんですけどね、あれ。それに錬金術の失敗は場合によっては凄い災害になりますので、それの防止の為にも効果的かなと思って。」


そう言ってメリッサは自分の左顔を指して言った。


「それは判ってるんだけど、どうしてもね。他の魔法薬屋が此処で買ってるのに、あんたはそれより少ないから、少しは嫌味を言っちゃうのよ。」

「まあ、薬草自体は誰にも売って無いですよ。そもそも採算取れるように作ってませんから。」

「自分の研究用に作ってるんでしょ、判ってるわ。」


そう話しているとここでは見ない客が来た。


「すいません、問診に来たルイン=ギルファですけど・・・」

「あれ、ルインじゃないか?どうしたの?」

「問診って言ったよな?ガンスさんに言われて、治療院に行きたくない病人が居るからって事で、訪問診療に来たんだよ。」

「ああ、ガンスさんの紹介の人だね。普段ならこの奥にいる管理人の一人なんだけど、今ちょっと所用で出かけててね。いつ帰って来るかは分からないんだ。」

「そうですか、明日は居ますか?」

「その方が良いね。明日はそいつをフン縛っておくから。」

「よろしくお願いします。治療師として病人は少ない方が良いので。」

「治療師の鏡だね~。他の治療師が聞いたら憧れの目線を向けるね。」

「教会のせいで基本的に治療師は治療院から出れないからな。こういう事が出来るのも俺の特権だ。」

「一応ここの訪問予定表に名前を記入してくれるかい?明日もあたしが此処にいるけど、他の人が居るかもしれないから。」

「解りました。」


そうして予定表に文字を書き始めたルインを節目に、メリッサは外を見ると見知った顔が必至な形相で走って行くのを見た。


「マイちゃん達じゃん。どうしたの?そんな必死に?」

「メリッサさん!この子に魔物寄せが引っ付いてて、ダンが残って・・・」

「落ち着きなさい。何が起きたの?」

「この子が森の奥に置き去りにされてて、そこに魔物が寄ってたんです!それで原因を探ったら魔物寄せの魔道具が引っ付いてて、逃げ出すためにダンが残ったんです!」


緊急事態に慄いたメリッサだったがすぐに冷静に指示を出した。


「マイちゃんはこの子と一緒に憲兵隊詰め所に行って彼女の保護、レオナちゃんは探索者ギルドで説明して増援を呼んでくる事、ナダン君は現場まであたいを案内して・・・ルイン!あんた戦えるよね!?一緒に来な!」

「仕方ない。おい少年、案内しろ!」

「「「わかった(わかりました)」」」


そうして身体強化を掛けたメリッサとルインは各人別れて目的地に進んだ。

ナダンの案内で現場に来るとそこにはジェット達が居た。


「『男女』!遅かったな!此処にいる魔物は全部やったぜ!」

「何であんたが居るのよ?」

「偶然ここを通りがかったんだよ。そうしたら魔物がわんさか居てな。狩り時だから狩りまくったんだよ。」

「ならここに居たダン君はどうしたんだい?」

「そこで死んでるよ。」


そうしてジェットの指差した先に、魔物に一部を食い荒らされたダンが転がっていた。その死体にナダンとルインが近づいた。


「まあ、残念だったな。狩り時とは言ったが、殆どそいつが狩った後の食い残しだったんだわ。」

「どれ位狩ったの?」

「8割位じゃないか?残りの2割も殆ど傷だらけで、あと少しで抜け出れたんじゃないか?」

「そう・・・。」


そうして感傷に浸っていたがルインの言葉で現実に戻って来た。


「おい、そこの男。こいつは魔物にやられたんだよな?」

「そうだぜ。と言うかあんた誰だ?」

「南のギルド所属のルインだ。メリッサとは・・・まあ、同業者かな?」

「何で疑問形なんだよ。俺様はジェットって言うんだ。そいつに何かあったか?」

()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「誰かが偶然射かけたかも知れないだろ?」

「他にも足首に切り傷・・・しかも、()()()()()()。」

「偶然当たったかもしれないだろ?」

()()()()?」

「偶然偶然。」

「・・・判った、もう喋るな。」


そう言ったルインは殺気立っていた。恐らく誰がやったのかは明白なのだろう。


「証拠が無いしな。これ以上は詮索しない、この件は忘れる、これで良いか?」


その言葉ににへらと笑って片手を挙げたジェットだったが、ナダンがジェットに突っ込もうとしたのをメリッサが止めた。


「何で止めるんですか!」

「ルインの言った通りだよ、証拠が無い。仮にこいつ等がやったとしても、それは戦闘時の不注意だ。多少の処罰は有るが、ほぼ注意を言われるだけで終わりだよ。」

「そんなぁ・・・。」


項垂れたナダンをほおって置いてメリッサは周りに指示を出し始めた。


「とにかく使える素材の回収をしよう。報酬は8割ダン君の方で良いかい?」

「構わね~よ。そもそも貰えるとは思ってねえ。」

「じゃあ、全部ダン君の物で良いね。・・・ナダン君、彼の為に素材の回収をしよう、それで立派な葬儀をしよう。それが彼の為だ。」

「ドライですね、メリッサさんは。」

「こんなのは探索者をしてれば何度でも見るからね。あたいだって初めてじゃ無いから、ここまで冷静になれるんだよ。」

「そう言うこった、クソガキ。切り替えな。」


そうして魔物の使えそうな素材を集めたメリッサ達は、ダンの死体を持って北のギルドに向かった。

切りが良いのでここで切ります。


死者の報酬

状況的に全部渡しただけです。

本心は貰えたら貰いたいが指摘された事が引っ掛かりになりそうなのでやめただけです。

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