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北の森の中に入ったメリッサだが、実際はそんなに真面目に採取する気が無かった。
(森の中の薬草はもう地下で栽培可能だから、旨味が無いのよね~。)
自身の錬金術師としての粋を集めて自宅兼店舗の地下を異空間化し、そこで自主栽培している薬草は多彩に及んでいた。
(まあ、新種の薬草が有れば良いんだけど、そんなのが有れば栽培場の方から連絡が有るから、無いんでしょうね。)
それでも新種の可能性に賭けて、森を探索するようにしていたのは癖のようなものだ。
そうして探索していると、ダンを見つけた。
「おや、ダン君。此処で会うとは思わなかったよ。」
「あ、メリッサさん!この前はありがとうございます。」
「一応、感謝は受け取っておくよ。・・・そちらの子達がパーティーメンバーかな?」
「どうしてその事を?」
「北のギルドに用事があってね、その時に聞いたのさ。」
「成程です。」
そうして観たメンバーはダンを含めて4人のメンバーだった。
ダンを前衛とした場合、後衛2人に前衛2人の理想的なパーティーだった。
「あの、貴方は・・・?」
「ああ、申し訳ない。あたいはメリッサ=フィグマ。フィグマ魔法薬店の店主で探索者、ダン君とは数日前に店主として会ったんだよ。それで君達は?」
「申し訳ありません。マイと申します。」
「・・・ナダン。」
「レオナです。」
「よろしくルーキー達。何か魔法薬の入用が有れば、フィグマ魔法薬店をよろしくね。」
「他の店より安いから利用した方が良いぜ。」
そう話していると、近くで魔物の気配があった。
「【探知】・・・【乱風刃】。」
「メリッサさん?」
「先輩としてアドバイスだけど、休憩中だろうが気を抜かない事。最低でも一人は『もしも』ですぐ行動できるようにする事ね。」
そうして探知の魔法に反応した魔物を処理して、死亡確認の為に向かった。そこには水色をした鹿の大型生物が切り刻まれていた。
「ケルピーだったか。下手に切り刻まない方が良かったね。」
「どうしてですか?」
「薬の材料として優秀だからだよ。角は上手く砕けば強壮剤に、内臓の一部は一時的に水中での活動を助けてくれる薬になる物だから。・・・これだと角位しか使えないかな。」
「勉強になります。」
「まあ、まだ新人ならここまでのを相手をしなくても良い段階だからね。もう少ししたら、一度図書館で色々と魔物の生態を調べるのも良いよ。」
「図書館ですか・・・文字読むの苦手だから、誰かに教えてもらおうかな。」
「それも良いけど、何かを読む癖をつけた方が良いよ。他人の伝承は、その人の経験からしか見えないから、知識が偏る可能性があるね。」
「本だとそれが少ないんですか?」
「本にも色々な記載が有るけど、同じような内容は情報として確度が高いから、知識の偏りは少ないかな。だから本を読むと言う事は、情報を色々な方向から見ると言う事なんだよ。」
「こういう事を教えてくれるなんて、メリッサさんは優しいですね。」
「一応の先輩としてのアドバイス程度だよ。ダン君には言ったけど、あたいの本分は錬金術師だからね。こうして現場に来ること自体が稀なのよ。だから偶にはと思って先輩としての行動をしただけよ。・・・他にも知りたい事ある?」
「「「「ぜひ教えてください。!」」」」
「良い心がけだね。じゃあ少ない時間で教えよう。」
そうしてダン達のパーティーを少し鍛え始めるメリッサは、教え終わった後に慌てて採取依頼品を取ってギルドに納品した。
切りが良いのでここで切ります
ダンは魔法剣士、マイは治療、ナダンが弓、レオナが盾
魔物と使用魔法
ケルピー・・・鹿型の魔物、主に水辺に生息、角は強壮剤に内臓(肝臓)は一時的な水中での呼吸補助
探知・・・補助魔法で周囲の探索
乱風刃・・・何枚かの風の刃で切り刻む