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3章開幕です
北区と西区の境界線に『フィグマ魔法薬店』と言う店がある。
西区の繁華街からは遠いが北区にある農耕場の薬草畑の近くにあるので、それなりに安い魔法薬を求める人が多く、それなりの繁盛店の1つである。
そんな魔法薬店の店内で新聞を広げていた人物は思考に耽っていた。
(この前の『オークション』の時に備考であったファドン侯爵、逮捕されたんだ。・・・うわぁ、結構後ろ暗い事やってたんだ。)
その記事にはファドン侯爵の逮捕と汚職の件、そしてそれが発覚したミリスの死亡事件が大々的に掲載されていた。
(何々?恐喝に強盗に詐欺に内部工作、もう犯罪のオンパレードじゃん。こんなのが貴族様なんて笑えるねぇ。)
すべての事件が発覚した為、爵位没収の上に量刑での死刑が確定したとの情報が掲載されていた。
(まあ、侯爵家が伯爵家に喧嘩売って、真面に済むわけないか。しかも法務官相手に勝てるなんて思っていたら相当な阿保だよ。)
そうして思考に耽っていると店の入り口が空き、見知った人物が入って来た。
「いらっしゃい、メイリン。今日はどんな要件かな?まあ、外套を着て無いって事は娼館の関連何だろうけど。」
「うん、娼館で必要な物買いに来た。」
「お使いお疲れ様。紙に書いてあるんだろ?出してくれたら見繕うから。」
「お願いします。」
そうして出された紙には、化粧品や美容に関しての物、一部には人気のある薬が書かれていた。
「こんな薬が人気とは、好き物が多いねぇ。」
「その薬何なの?」
「あ~、まあ、滑りが良くなる奴かな?もう少し年を取ったら判るから、他の人に聞かないでね。」
「滑りが良くなると、何が良いの?」
「うん、あたいにも聞かないで。」
そうして、せっせと紙に書かれた物を使い捨ての収納魔道具に詰めるとメイリンに渡した。
「ありがとう、メリッサ。」
「仕事だからね、お礼を言われる程じゃないよ。」
「でも、この魔道具もタダじゃ無いんでしょ?採算取れてる?」
「まあ、取れてるよ。オーバンの所だったり、他でも布を使う所から出る、捨てられる端材で作った物に、簡単な付与で済む物だから原価はほぼ0だね。」
「でも、メリッサの魔力を使う。」
「それでもだよ。錬金術の鍛錬が出来るなら安いもんさ。」
「そうなんだ。・・・お金はいつも通り月末?」
「そうだね、そうしてくれ。いつも言ってるけど、あたいの顔に慣れた人が来てくれ。」
「・・・かっこいいと思うけど?」
「冗談言いなさんな。あたいみたいな火傷女のどこが良いんだい?」
そう言うメリッサと呼ばれた女性の容姿は女性にしては高身長で体形はすらっとしている、所与モデル体型だった。
胸は控えめだが女性と判る程の膨らみを持っており、髪は短く顔も端整かつ中性的なので男装の麗人とも言えるだろう容姿だった。
言っている通りに顔の左側に火傷痕が在ったが、その痕が逆に容姿を引き立てるような配置になっていたので、よりカッコ良さが引き立っていた。
もしも街で見かけられたら奇異の目で見られるだろう容姿だった。
「この火傷痕のせいで、婚約者に逃げられたんだから負い目になるさ。」
「・・・絶対、その人節穴。」
「それでもだよ。気を付けて帰りな、余計な寄り道は無しだよ。」
「解ってる。」
そうして出て行ったメイリンにメリッサは嘆息な声で今日の一日の営業を再開した。
切りが良いのでここで切ります。
個人的に不快にならない火傷傷と言うのがちょっと解りずらいかな?
滑りが良くなる薬はローション
フィグマ魔法薬店
化粧品からポーションまで幅広く商売をしている店
店主がかっこいいので初入店時は客が恐れおののく
店主目当てに来る客も多数存在するが、奇異な目で見られるのを嫌がるので、そう言うのはお帰り頂くようにしている