2-11
その墓地にシグムンド家の現当主ラジアルと王都の手伝い、ダインス家当主が集っていた。
「ラジアル殿、娘さんの事は残念だった。」
「ダインス卿。本当に・・・申し訳ありません。」
「何を誤る事がある。此処に来たのは、私と同じ苦しみを味わった子に、せめてもの手向けと思って来たのだ。」
そうしゃべる二人の前に棺があり、その中にはミリスが眠っていた。ミリスが寝ている周りに手伝いが次々と花を入れていく。
そうこうしていると2人の番になり、棺の中に眠るミリスにダインス卿は近付いた。
「もう少ししたら、君はベットの上から飛び出して、君が楽しむ姿を見るのが、私にとっても楽しみだったのだがな・・・」
そうしてダインス卿は棺に花を入れ、ラジアルと入れ替わった。
「ミリス、駄目な父親で御免な。仕事にかまけて君を助けられなかった、愚かな父を許してくれ!」
ラジアルも花を入れ、遂に棺が閉じられようとした時、
「お待ちください!!!」
待ったを掛ける声が掛かった。
その声の方にその場の全員が向くと、その人物は荷物を持って棺の方に向かって来た。
「オーバン殿・・・どうして?」
「依頼の品をお届けに参りました。」
「それは、キャンセルしましたが・・・」
「9割完成してた物です。魔法付与はしていませんが、ここまで完成した物を破棄するのは服飾士として沽券にかかわりますので。」
そう言って棺のそばで荷物を広げると、その衣装をミリスに掛けた。
「ああ、やはり似合いますね。この衣装を着た貴方を見て観たかったです。」
掛かった衣装は、最終デザインを忠実に再現した黄色のパンジーを思わせる衣装だった。
「ラジアル様、お辛いでしょうが最後にもう一度ミリス様に寄り添ってください。彼女の最後の衣装を観ていただきたい。」
そう言われラジアルはミリスの棺に近づき、
「あ・・・ああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
その姿を見て大いに泣いた。
ミリスの棺が土の中に眠るとオーバンはその場を離れた。
そして離れた所にある巨木の袂に知り合いが居た。
「やあ、オーバンさん。」
「ルインさん?どうしたんですかこんな所で?」
「今、眠った子に会いに来たって言ったら驚く?」
「冗談はやめてください。何ですか?」
「半分は本物なんだけど・・・まあ、彼女の死因を調べたからね。医者として最後の時に立ち会いに来たんだよ。」
「・・・治療院が調べたと聞きましたが?」
「ダリウスの阿保が死因に不信感があってな。頭を下げられたんで調べた。」
「貴方にかかれば上級治療者が、阿保呼びですか。」
そうして何とはなしに互いに巨木に背を預けて、話をし始めた。
「さて、死因だが魔力暴走に伴う突発性心不全だ。彼女は魔力過剰蓄積症だったんだろ?」
「そう聞いていますね。何なら、その為の衣装の製作を頼まれました。」
「なら話が早いな。彼女はそのせいで死んだ、それで終わればダリウスが俺を呼ばなかった。」
「何があったんですか?」
「かなり細かく砕いたものだが、体内から魔石が発見された。」
それを聞いた瞬間、オーバンの血が凍るような感覚を覚えた。人の中には魔石など作れる機関は無いのだから。
「発見された場所は胃の中だ。恐らく食べ物か飲み物、下手したら両方に仕込まれていた可能性がある。」
「可能性じゃなくて確定では?」
「どれか分からないなら可能性だよ。死亡要因の講義は要るか?」
「お願いします。」
「魔力過剰蓄積症の対症療法は3つ、魔道具に頼る、成長で容量の改善、魔力の制御に成功、この3つだ。だが逆に壊すなら簡単だ。魔力を過剰に与え体を壊す、それだけだ。」
「簡単ですね。」
「実際はそう簡単に壊れる者じゃない。ましてや心不全になる程の急激な魔力供給はやろうとすれば、その前に与えられる側の肉体がストップをかけて供給されなくなる。」
「ですが、今回は抜け道を使って行われた。」
「そうだな、他人じゃなくて魔力が籠った物を使う。確実に殺せるな。ダリウスにこの話をしたらキレて壁を殴りつけたよ。」
『何を考えればこんな可憐な少女にこんな事が出来るんだ!』とキレたダリウスは、憲兵隊に通報したが貴族の事件なので及び腰になって現状捜査が進まないでいた。
「・・・犯人は?」
「父親以外のあの屋敷の住人の誰か。だからお前に会ったんだよ。」
「そこまで節操無しに殺すとでも?」
「やらないだろうが待てよ。今、パインが裏取りしてる、違反者にはなりたくないだろ。」
「分かりました・・・そう言えばそろそろ『定例』でしたね。」
「そう言う事だ。連絡が来るまで待ちな。」
そう言ってルインは別れた。数日後、オーバンの元に豪華なのに差出人不明の手紙が届いた。その中身を見たオーバンは手紙をすぐに燃やして証拠隠滅に務めた。
切りが良いのでここまで
魔石と土葬の理由
人の身ではありえないです。基本は魔物の中にあります。(人には魔石を生成する為の機関が無い為)(人為的には作れます)
土葬なのは伯爵以上の貴族位です、それ以外は火葬が主