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異界暗殺業  作者: 紅鈴
仕立屋
32/185

2-6

ミリスと更にデザインを詰めたオーバンは、決定したデザインを持ってメイドの案内で、ラジアルの元へ向かっていた。


「お嬢様があのように楽しそうな顔をするのは久しぶりに見ました。」


ラジアルと立ち代わりに入って来たメイド・・・リル=メンティスは言った。


「そうなのですか?」

「こう言っては主に対しての不敬になるのですが、常日頃、部屋に居るせいか刺激が無いのでしょうね。治療院に行く時は外を見れる事に興奮しておりますので。」

「成る程。でしたらデビュタントは彼女にとっての初めてのお祭り事になるのでしょうね。」

「そうですね。そうなってほしいです。」


そうして、ラジアルの執務室の前に来た。


「主様、リル=メンティスです。オーバン様をお連れしました。入ってよろしいでしょうか?」

「どうぞ。」

「畏まりました。失礼いたします。」


そうして入ったラジアルの執務室は大量の書類で埋まっていた。


「大丈夫ですか?ラジアル様。」

「これ位は大丈夫ですよ。今日は少ない位ですから。」

「これでですか・・・」

「本当は領地に赴いて色々と視察したいのですが、娘の事や仕事を考えると王都に居た方が良いので。」

「失礼ですが、ご自身の代官はどの様な状態なのですか?」

「十分に出来ているのですが多少抜けがあるので、その締め付けの為に妻が領地で差配しています。」


そうして手に持っていた報告書を決済済みの箱に置くとオーバンに顔を向けた。


「さて、要件は解りますが一応の説明を。」

「はい、ミリス様のデビュタント衣装のデザインが決まりました。つきましてはご予算の程をご相談に参りました。」

「デザインを確認しても?」

「どうぞ、多少技術的な観点で変更点はございますが、この通りになります。」

「その場合はどうなりますか?」

「その部分の変更は都度、連絡をいたします。」

「分かりました。」


そうしてラジアルはスケッチブックを受け取ってデザインを見て感嘆した。


「パンジーを意識したのですか?」

「はい。あそこまで部屋や外にあれば、それを基にデザインをした方が彼女の印象を決定づけると思いまして。」

「素晴らしい、ありがとうございます。」

「恐縮です。」


スケッチブックを返したラジアルは真剣な眼差しをオーバンに向けた。


「さて予算ですが金貨2枚までは出します。ただし、条件があります。」

「魔力過剰蓄積症の為ですね。」

「そうです。通常の布では娘の症状を抑えようとすると、相当な付与をしないといけませんので、できれば魔物素材で付与したドレスを作ってほしいのです。」


魔力過剰蓄積症は対症療法がある。その1つに魔道具を使って魔力を常時発散させる事で症状を抑える事ができるのだが、並大抵の物だと付与に耐えられないので、最初から魔力を持っている物で付与して発散できるようにした方が早いのである。


「どの様な素材が良いのでしょう?」

「最上はユニコーンの鬣ですがこの予算で出来るとは思えません。ですのでスパイダーシルクをお願いしたいのですが・・・」

「可能です。ただ、布地の調達からしないといけませんので、いつまでの期限かを聞きたいのですが。」

「余裕をもって1月程をお願いしたいのですが。」

「そちらも可能です、ご依頼をお受けいたします。」

「ありがとうございます!!!」


頭を下げたラジアルにオーバンは懸念点を伝え始めた。


「最大で1月と言うとダインス公爵のパーティーですよね?現当主で在られます方は厳格な方とお聞きしますが、初のパーティーでミリス様は大丈夫ですか?」

「ダインス公は娘を見た事があるのですが、その時に自分も魔力過剰蓄積症だったと漏らされまして、その公が『元気になったら出てほしい、多少の無礼は黙らせる』と申されまして。」

「お強い背後ですね。現法務官長官に意見できる方がいるとすれば、それは国王だけでしょうね。」

「ははは、そのおかげで、部下である私も忙しいのですが・・・」

「領地に法務官、正直に言いますと過剰な労働環境ですね。」

「貴方が言いますか。噂は聞いてますよ、部下にスパルタ教育をしているとか。」

「弟子に来た者だけですよ、それは。昨今の風潮を考えるとそうしないと大成しませんから。」


そうして、話を纏めるとオーバンはシグムンド伯爵家を後にした。ただ帰り際に思ったのは案内してくれたリルの事だった。


(リルさんの態度が気になりますねぇ・・・まるで出来ないでほしそうな態度でした。)


そう思いながら、布の調達の為に布屋へと足を向けた。

切りが良いのでここら辺で切ります。


魔物素材

ユニコーンの鬣・・・みんな大好き一角獣の白馬、それの鬣です。高耐久の魔力があるので重宝されるがお値段が高い。

スパイダーシルク・・・ジャイアントスパイダーと呼ばれる蜘蛛の糸。こちらも高いがユニコーンよりは安い

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